星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

あわれ彼女は娼婦  □観劇メモ(2)

2006-08-13 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
 公演名 あわれ彼女は娼婦
 劇場 シアターBRAVA!
 観劇日 2006年8月12日(土) 14:00開演
 座席 I 列


12日マチネ、素晴しかった!!
キャストの皆さんのテンションが同じように感じられ、いい緊張感が伝わってきた。
カーテンコール3度目全員登場の時にスタンディングオベイション。
谷原さんは両手ガッツポーズ。三上さんと深津さんは笑顔というよりも・・・きっと
二人はまだジョヴァンニとアナベラのままだったのでは・・・。
1時間半後にはまた幕が上がるんですからね。
私自身、1回目は拒絶されたみたいで寂しかったけれど、やっと舞台で起きている事
と自分の感情がシンクロできた。やはり2回目の余裕なんだろうか。
それと・・・空調がちょうどよくて舞台に集中できたせいかも(笑)。
(前回は観客の熱気に空調が追いつかなかったんでしょうね・・・。)
また好きな作品が増えちゃったかも・・・。

初日観劇から1週間後の2回目までにいろいろ準備をした。
まず原作を読み、前回ひっかかった箇所を書き出し、登場人物の関係ごとにどういう
感情が働いているのかをざっと見直してみた。それでもわからない台詞、行為、状況
が残ったけれど、それを舞台で確認するのがとても楽しみだった。
出たばかりの雑誌「acteur(アクチュール)」 No.2で三上さんのインタビューを読
んだのも理解の助けになったと思う。

以下、全文ネタバレ全開です。

<ジョヴァンニとアナベラ>
12日マチネ、凄まじさが増したような気がする。
前回観た時は、ジョヴァンニとアナベラの告白から愛の成就までが短くて、けっこう
簡単だったように感じたのに、今回は違って見えた。
二人がお互いに同じ想いであることを確信するまで、ジョヴァンニとアナベラの仕草
や表情がすごく細やかなのだ。とまどい、怖れおののき、揺れ動き、寄り添っては離
れそうになる心模様が鮮やかで、こちらまでハラハラした。
自分の容姿の美しさを兄に形容されている時のアナベラの、いたたまれないという仕
草が本当に可愛かった。
ジョヴァンニのほうは、結ばれた後、アナベラの求婚者からの宝石を見た時に見せる
ふくれっ面とか、ソランゾがアナベラに求婚する時に背を向けている仕草とか、最後
の面会の時に妹が心変わりしたのかと嫉妬する表情とかが、繊細で素敵だった。

アナベラはいつ死を覚悟したのだろうか? というのが疑問だった。
近親相姦の罪を背負った以上、破滅に向かう覚悟は最初からあったと思うし、ソラン
ゾに妊娠がバレてしまった時も死を意識するような言動はあるが。
12日に観た印象では、アナベラはもちろん死ぬつもりではいたけれど、あの時、兄
にあのタイミングで殺されるとは思わなかったのでは。
ジョヴァンニの「さらばだ」の言葉にも、死の意味とは気づいていない。
ただ兄を巻き込みたくない一心で、最後までそのことに心を砕いていたと思う。
完全な準備は整っていなかったのでは。
うーん、やっぱりかわいそう!!
「もう一度だけキスを」「なんのために?」「お前の名誉を救い、キスしながら殺す
ために」。ここでジョヴァンニがナイフを出し、突く。
「死んでくれ、ぼくのそばで、ぼくの手で死ぬのだ。」「ああ、お兄様、あなたの
手で?」このあと死へと向かいながら兄と自分の罪を天に祈るアナベラ。
そして最期。「むごい、むごい、お兄様。天よ、お慈悲を」。
殺したあと、「最後にして最大の役」を遂行する決意をするジョヴァンニ。この後、
急にこみあげるように泣き出し、暗転してもしばらくその声が響いていた。

ソランゾの誕生パーティーの席。その場にいないのを知ってソランゾが聞く。
「兄のジョヴァンニは?」「ここにいるぞ!」
その声の場所から近い上手の席でジョヴァンニを目撃。なぜかシャツについた赤い血
の量が前回観劇時よりも増えている気がした。極度の興奮状態でパーティーの客と、
実際の観客に向かって話しかけるジョヴァンニ。その顔からは破滅に向かう負のオー
ラみたいなものが感じられ、圧倒された。
舞台を駆け昇り、テーブルの上から剣を突き出すところで、前回は勝ち誇ったような
自信ありげな顔だったと思うのに、今回はちょっと悲しげに見えた。
アナベラの心臓を喰いちぎった瞬間、目をつむるジョヴァンニにドキッ。口の中でア
ナベラの存在を味わうかのような表情。二人の血が完全に一つになった歓喜の瞬間だっ
たのだろうか。
最期は枢機卿に「慈悲を求めよ」「天に祈りの声をあげよ」と言われてももうそんな
価値観も概念もなくなったように、祈ることはせず、妹に会える喜びだけを抱いて息
絶えるジョヴァンニ。
最期の瞬間に兄と自分の罪を天に祈り、慈悲を乞うたアナベラとは実に対照的。

アナベラとソランゾの対決もやっぱりすごかった。
(ソランゾの谷原さんの台詞は下手よりも上手からのほうがよく聞き取れた。怒れば
怒るほど美しくセクシーなソランゾ。今回彼に落ちた女性が多そうだ~笑。)
引きずられながら歌うアナベラの歌はますます妖気か狂気をはらんで怖かった。

<復讐劇>
ジョヴァンニの復讐劇に隠れてしまいがちだけれど、他の登場人物たちだって、お互
いに復讐による殺人、または殺人未遂まみれ。罪という点ではジョヴァンニと変わら
ない。いや、むしろもっとドロドロしたものが感じられる。
大量殺人は絶対に許しがたい出来事だけれど、自分たちの愛を貫いたジョヴァンニと
アナベラの心にはドロドロしたものはなく、汚れてはいない。
そんな中、復讐劇に巻き込まれ人違いで殺されたバーゲットの悲劇が印象的。
前回観た時は道化役のほうをクローズアップして見てしまったけれど、(今回もそれ
は楽しい時間だったが、)刺されて死ぬ間際に笑みを浮かべ、残されたフローティス
への心遣いを見せるバーゲットの最期に涙してしまった。(高橋洋さん、うまいよ~。)
死に方でいえば、ヒポリタ。事切れたかと思ったら、まるでターミネイターのように
蘇って獣のように吠え、呪いの言葉をかける最期、迫力あったなあ!! 
立石凉子さんの俳優魂を感じてしまった演技だった。
また、復讐劇の裏で暗躍するヴァスケス(石田太郎さん)の動きが、かなり面白い。
最終的には主人ソランゾへの忠誠心が彼の行動の論理だったとわかるのだけれど、
主人への災いを取り除くためにヴァスケスが関わった事柄にはなんてむごたらしい出
来事が多いことか。ある意味、ジョヴァンニとアナベラの罪を増幅させ、大量殺人を
促す誘因になったのでは。でも、本音で物事が一番見えていたのもヴァスケスだった
ような気がする。
甥のバーゲットを殺したグリマルディへの裁きを見て、枢機卿の正義がいかに身勝手
で不安定なものかがわかったはずなのに、ラストで枢機卿が下すプターナの処刑には
「正当なお裁きだ」とか言いながら、すっかり枢機卿に取り入っているドナード叔父
さんもなんだかなあ。

<最後にちょっと>
個人的に応援していたキャストのことをちょっとだけ。
実はお知り合いのお嬢さんがこの舞台に出演していた。
結婚披露宴でちょっと風変わりな仮面のダンスを踊ったり、台詞もちゃんとありまし
たね。ソランゾの誕生パーティーの席にもいて、初日は三上ジョヴァンニが暴れ出し
た時に、思わず「逃げて!」という気持ちになった私(笑)。
笑顔が素敵で頑張ってましたね~。お疲れさまでした。
いっしょにドキドキできた分、観劇の楽しみが増えたことに感謝です!!


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6 コメント

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TBさせてもらいました☆ (rompop)
2006-08-14 23:41:31
お久しぶりです~(^-^)TBさせてもらいました。



12日のお昼の部,同じステージを観ていたんですね!お会いしたかったな~~☆



返信する
こんばんは! ()
2006-08-14 23:51:32
細かいレポ、楽しく拝見しました!

原作読まれたんですね。

やっぱり原作読むと、理解が深まります?

私も読もうと思ってるのですが、なかなか・・・。

芝居は原作にかなり忠実に作られてると聞きましたが、

読みながら舞台の様子が思い出されてきたのでは?



私もソランゾ@谷原にヤラれたうちの1人です。(笑)

いやー、舞台映えする人ですよねぇ。

貴族の風格っていうか、本当に美しかった♪

シャツがはだけた胸元に視線釘付けでした。



ジョヴァンニ@三上さんの圧倒的な破滅的存在感はすごかったですよね。

でも繊細な表現もできるし、、、

いやはや三上さんにはぜひ、舞台をライフワークにして、

年に1作品は舞台で演じてもらいたいものです。
返信する
またもや(笑) (ムンパリ)
2006-08-15 00:59:37
rompopさん、こんばんは!

あ、メタマクに続き、また同じ公演を観てたんですよねー。会えなくって残念っ!

これからは事前に連絡しようっと(笑)。

ヘドウィグに続き、三上さんの命を削るような演技にやはり圧倒されましたね。

ジョヴァンニがアナベラを手にかけたシーンも最後も、涙があふれました。

三上さんも深津さんも本当に素晴しかったですね!

返信する
舞台出演あるみたいです♪ (ムンパリ)
2006-08-15 01:02:47
麗さん、こんばんは!

そうなんですよー、原作にかなり忠実なので、時系列の把握とか人間関係とかのチェックに役立ちました。

長い台詞の中の形容部分も字で追えば頭に入りやすいですし。

それと細かいですけど、アナベラの最期の台詞「ああ、お兄様、あなたの手で?」って疑問符つきなんですね。私、最初アナベラはすぐに観念したのかと思ったけれど、あなたの手で?という文字を見て「むごい、むごい、お兄様」に結びついたんです。

それから、関西のラジオ番組に三上さんが出演して「舞台は1年に1回」って言ってたそうですよ。楽しみですね!



ソランゾ@谷原は私の周囲でもヤラれちゃった人、続出です♪
返信する
我に返るのに2日かかりました。 (ぽぽん)
2006-08-15 11:35:53
いまだ、シュっとしなるカーテンの音と

修道女となったフィロティスの歌声と

雷の音が耳について離れず・・・・てか、あの雷は本物だったんですね。

舞台の神様が役者の情熱に応えて雷を呼んだのかしら。



大阪千秋楽観てきました。かなりお疲れモード。

チケット自力確保かなわかったのに譲ってくれた友に感謝です。

1回こっきりではわかんなかったところ

ここで復習させてもらいました。



役にはいりこんだ故でしょうが、三上さんの憔悴ぶりが

しょっぱなからすでに恋に悩んでいるジョバンニに違和感を感じさせませんでした。

深津さんも娘時代の可憐さから次第に激しい女になって行く様が

見ごたえあったし。

わたくしとしたことが、血塗られたラストシーンを凝視してしまった。

ただ、あの殺陣は、新感線を観た後では・・・・以下略。



で、谷原くん(笑)。

もんくなし完全無欠な美男子でしたわ。声もよし。意外に厚い胸も。

女が自分の思いどおりになるのは当然な貴族、そのままじゃん。

カテコで三上さんと頭くっつけてこそこそ話、かわいかったですわ。

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雷様、ゲスト出演? (ムンパリ)
2006-08-16 08:36:43
ぽぽんさん、おはよーございます。

千秋楽は本物の雷が特別出演ってスゴイですねえ!

1回だけだと、そのイメージで固定化しちゃうかも(笑)。

私もそのパターンで観たかったな~!!

(↑パターンとちゃうって。)



上には書いてないけど、ジョヴァンニがアレを食べちゃうシーンと最後の無差別殺人は、原作にはないオリジナルだそう。原作ではアナベラのあと死んじゃうのは憤死する父のフローリオと、ソランゾ。行間を読むとしたら、悪党たちと戦う時に巻き添えが出たかな~というくらいかなあ。大量殺人にしたのは戒律、タブーへの徹底的な抗議を強調するため・・・のよう。それでも大きな壁(枢機卿)には全く届かない~。

みたいなことだそうです。



殺陣は・・・ジョヴァンニは勉学に優れているけれど武術は苦手だった、と好意的に解釈(笑)。でも、軍人のグリマルディとヴァスケスは・・・以下略。

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