~ おほやけの勅宣承りて、定に参る人 とらふるは何者ぞ ~
『貞信公夜宮中で怪を懼しむの図』
(ていしんこう よるきゅうちゅうに もののけをあやしむのず)
大蘇芳年筆
貞信公は平安時代中期の政治家
藤原忠平(ふじわらのただひら)の諡(おくりな)
『大鏡 上』 太政大臣忠平 貞信公
忠平が醍醐天皇か朱雀天皇の頃、宣旨を受けそのことを執り行う為に
紫辰殿の御帳台の後ろを通ろうとすると、何者かがいるかのような気がし
太刀の石突をつかまれ、奇妙だと思い探ってみると
毛むくじゃらの手で、爪は長く、刀の刃のようだったので鬼だと気づく
忠平は恐ろしいと思うが、おじけついた様子をみせてはならないと思い
「天命の勅命をいただき、その公事の評定のために参る者をつかまえるとは何者だ
もしその手を離さぬと、身のためになるまいぞ」と言い
太刀を引き抜きその者の手を捕まえると、鬼はうろたえ手を離し
鬼門の丑寅(北東)の隅の方へ逃げて行ってしまった。
出典先:立命館大学アート・リサーチセンター