オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

徒きの百姿 法輪寺の月

2017-05-27 | 月百姿

月岡芳年 月百姿

『法輪寺乃月 横笛』 

明治二十三年印刷

 

横笛(よこぶえ)は建礼門院徳子の雑子女(侍女) 生没年不詳

 

平重盛の侍 斎藤時頼(さいとうときより)は

宴の席で舞った横笛に心を奪われ恋に落ちるが

父茂頼に叱責され嵯峨の奥「往生院」に出家し

滝口入道と名を改めます。

 

国立国会図書館デジタルコレクション 010

 

平家物語 巻十 横笛より

月もおぼろの二月十日余りの頃、横笛は滝口入道を探して往生院へ向かい

ようやく滝口入道のいる僧房を探しあて、もう一度会いたいと供の者を使わせる。

障子の隙間から横笛の姿を見て心が揺らいだ滝口入道だが、すぐに人を出し

「そのような人は居りません お門違いではないでしょうか」と言わせた。

横笛は力なく涙を抑えて帰るのですが、真の心を伝えたく

近くにあった石に自らの指を切り、流れる血で詠を書いた

 

『山深み 思い入りぬる柴の戸の まことの道に我れを導け』

 


月百姿 竹生島月

2017-05-26 | 月百姿

月岡芳年 月百姿

『竹生島月 経正』 

(ちくぶしまづき つねまさ)

明治十九年届

 

平経正(たいらのつねまさ)は平安時代末期の武将。父は平経盛。

生年不詳~寿永3年2月7日没(1184年3月20日)

 

木曽義仲討伐のために北陸へ向かうなか

琵琶湖竹生島に渡り、戦勝祈願をした

国立国会図書館デジタルコレクション 067

 

平家物語 巻七 竹生島詣 より

経正が竹生島明神の御前にひざまづき読経していると

だんだんと日が暮れ居待の月が湖上を照らし社殿もますます輝きます。

まことに趣き深かったので常住の僧が「これは名高い琵琶です」と

琵琶を差し出してきました。

受け取った経正は、秘曲・琵琶三曲の中から「上玄」「石上」を弾きます

お宮の中も澄み渡り 明神も感動に耐えなかったとみえ

経正の袖の上に白龍が姿を現しました。

経正はあまりのかたじけなさに琵琶を置き詠いました

『ちはやぶる神に祈りの叶へばや しるくも色のあらはれにけり』


まもなく朝敵を成敗し、凶徒を退けることは疑いないと喜び

船に乗り竹生島をあとにした。


原典「平家物語」 竹生島詣/菊川怜  くだり


都きの百姿 嵯峨野の月

2017-05-25 | 月百姿

月岡芳年 月百姿

『嵯峨野乃月』

明治二十四年印刷

 

小督(こごう)は平安末期の高倉天皇の女房。藤原成範の娘。

保元2年(1157年)~没年不詳

美貌と音楽の才能で名高い才女。

 

 

平家物語 巻6 小督 より

小督の局は高倉天皇の深い寵愛を受けていたが

娘徳子が天皇の中宮である平清盛に憎まれ

宮中を去り姿を隠してしまいます。

小督が嵯峨野のあたりにいるという噂を聞いた天皇は

早速捜し出すように弾正大弼・源仲国に命じます。

折から八月十五夜

仲国は嵯峨野を馬で馳せめぐりますが捜しあぐねますが

やがて法輪寺のあたりでかすかに琴の音が聞こえ

耳をすますと「想夫恋」の曲です

横笛を抜き出しちらっと鳴らし 門をたたくが

 清盛を恐れる小督は戸を閉じて中へ入れようとしません。

 

国立国会図書館デジタルコレクション 085

 

源仲国の説得によって宮中に戻った小督は

治承元年(1177年) 天皇との間に範子内親王を儲けるが

清盛に知られ 治承3年に出家させられ嵯峨付近に隠棲した。

 

ここでの主役は笛を合わす仲国ではなく

嵯峨野の隠れ家で琴を弾く小督の局のようです。

 

雅楽 想夫恋(拍子二まで)~平安時代末期・鎌倉時代の古楽譜にもとづく再現~


月百姿 いつくしまの月

2017-05-24 | 月百姿

月岡芳年 月百姿

『いつくしま乃月』 室遊女(むろのあそびめ) 

明治十九年届

 

厳島神社の鳥居をくぐっていく 室の津の遊女を乗せた船

 

国立国会図書館デジタルコレクション 058

 

平家物語 長門本巻第五 室泊遊君歌事より

平清盛が建礼門院に皇子が生まれるようにと

厳島に月詣に行く途中に舟を室の津(現在のたつの市)につけると

遊女たちが舟をこぎ寄せてきます。

その中の一人が清盛の舟の下で

「はなうるし塗る人もなき我身かな むろありとてもなににかはせん」

と吟じるのを聞いた清盛は この遊女を召し上げたというお話から。