里の家ファーム

年のはじめに考える 海に吹く風つかまえて

  東京新聞社説 2020年1月5日
 
 東京電力福島第一原発廃炉への長い道。政府は工程表の見直しを去年の暮れに正式決定し、例えば使用済み燃料の搬出が最大五年、遅れることになりました。つくづく困難な道のりだと、あらためて実感させられます。
 それ以外にも大きな課題が二つ。一つは燃料デブリについて。メルトダウン(炉心溶融)した核燃料が、原子炉格納容器の底まで溶け落ち、冷えて、さまざまな形状に固まったもの。その取り出しは、四十年がかりという廃炉作業の最難関だとされています。
 政府と東京電力は、周辺の放射線量が1、3号機に比べて低く、比較的アプローチしやすい2号機から、来年中に搬出を始めることを決めていました。
◆1グラムからの遠い道のり
 ではどうやって取り出すか。検討内容の一部が明らかにされました。ロボットアームを使って、まずは一グラム程度を試験的に数回取り出してみたあと、徐々に量を増やしていくという方針です。
 デブリの量は2号機だけで約二百四十トン。1~3号機で約九百トンに上ると推定されています。一グラムから一歩ずつ。本当に気が遠くなるような道程ではないですか。
 短時間で人を死に至らしめる高線量のままの格納容器内、作業はすべて遠隔操作のロボット頼み、文字どおり手探りで進んでいくしかありません。
 昨年二月、未知の惑星の赤く荒れ果てた大地のような、2号機格納容器の底部。ロボットアームが初めて燃料デブリとみられる小石状の塊に触れ、わずかに持ち上げることができました。
 「八年かけて、やっとデブリに触れることができました。感慨深いものがある」
 原子炉メーカーの技術者のその時の感激ぶりが忘れられません。ほとんど触れただけなのに。
 もう一つは、汚染水。政府は、原発構内のタンクに今もたまり続けている、放射性トリチウムを含む汚染水の処理方法を、そのまま海に流すか、蒸発させて大気中に放出するか、その両方か、三案を提示しました。
 いずれにしても苦肉の策。風評被害を恐れる漁業者の猛反発は必至です。しかし、汚染水の処理が進まなければ、廃炉はさらに長引きます。廃炉費用だけで八兆円。工期の遅れなどがあれば、その程度では、収まりそうにありません。これほどやっかいで、お金もかかる原発に、なぜ日本政府はこだわり続けているのでしょうか。
◆もうお話にもならない
 「世界レベルでは原発なんて、もうお話にもなりません」。自然エネルギー財団事業局長の大林ミカさんは断言します。
 フクシマの衝撃で安全費用もかさみ、原発は急速にコスト競争力を失いました。一方、再生可能エネルギーは、風力や太陽光を中心に競争力を高めています。太陽の光も風も安全な上にただだから。
 中でも大林さんが特に注目するのが洋上風力発電です。海上に風車を立て、海風でそれを回して電気をつくります。
 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は世界の洋上風力の導入量は、二〇五〇年までに千ギガワット(大型原発千基分)に達すると予測しています。
 長い海岸線を持つ島国日本は、英国やデンマーク同様、洋上風力の潜在力が豊かな国。温暖化への危機感も募ってか、大手電力会社や外資が参入を進めています。
 東北電力は、青森県つがる市沖で出力四十八万キロワット、東電は洋上風力最大手のデンマーク・オーステッド社と共同で、千葉県銚子沖で三十七万キロワットの計画を進めています。北欧最大のエネルギー企業、ノルウェーのエクイノール社も日本オフィスを開設し、営業活動に乗り出しました。
 電力会社だけではありません。昨年清水建設は、五百億円を投じて高性能クレーンを備えた世界最大級の洋上風力発電施設の建造専用船(自航式SEP船)を発注し、話題になりました。
 ところが政府の導入目標は三〇年までにわずか〇・八ギガワット。原発一基分にもなりません。二〇年までに八~十五ギガワットという中国や二五年までに五・五ギガワットという台湾にも見劣りします。
◆原子力の呪縛を解けば
 この期に及んで原発(三〇年度に電源構成比20~22%)や、石炭火力(26%)を重視する国のエネルギー基本計画が、頭を抑えているからです。
 大林さんは指摘します。
 「これを外せば、民間の動きはさらに活発になり、海外からの投資も加速して、日本の洋上風力発電は一気に伸びる。温暖化対策も進みます」
 来年はエネルギー基本計画見直しの年に当たります。見直し作業は今年から。原発と石炭の呪縛を解いて、海風を呼び込まなければなりません。


    トランプの横暴も極まった。「反社勢力」と変わりがないではないか。さらに、ツイッターで『革命防衛隊精鋭部隊の司令官殺害にイランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告した』というのだ。「反社勢力」は社会から抹殺しなければならない。へつらう安倍もこのままにしておいては危ない。

コメント一覧

mooru
コメントありがとうございます。
 今のところ、人類が制御不可能な化け物です。安易に使ってしまいました。
デブリを取り出しても、それをどうするのかも決まっていません。おそらく、その場所で「石棺」(コンクリートで固め10万年管理する。コンクリートの寿命は40年くらいでしょう)となるのではないかと思います。こんなものは即刻止めるべきです。
黒トンボ
廃炉後の放射能物質
http://blog.goo.ne.jp/kurotombo
こんにちは
国内には廃炉が決まった原発があります。
しかし原子炉の構成物質は強い放射能を出していないのか疑問です。その処分方法は話題にならないです。
普賢も廃炉が決まっているのに、唯々税金を次ぎこんでいる。プルトニウムを含む核燃料も炉内に有る筈で、最終的にどの様に処分されるのか不明です。
核燃の燃えカスの処分地でさえ見つからない状況で、原子炉の最終処分はどうするんでしょう?
東京電力福島第一原発廃炉から出たデブリの最終処分地は現在の原発の場所が墓場になるんだろうか?
核燃に関しての知識は殆んど無いので、不安は尽きないです。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「自然・農業・環境問題」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー