先日、仙台市博物館の特別展『仏のかたち、人のすがた/仙台ゆかりの仏像と肖像彫刻』を見てきた。この特別展は「東日本大震災復興記念、仙台市博物館開館50周年」のための催しで、以下はチラシの紹介文。
-仙台平野を中心とする地域は、古代から国分寺などの国家的な施設が設置され、陸奥国(むつのくに)の中で重要な役割を果たしてきました。以降、各時代に生きた人々の侵攻とともに寺社や仏像などが造られ、江戸時代に城下町・仙台が築かれてからは、古くからの由緒ある寺社が大規模に整備されていきます。また一方で藩主の主導による新しい寺社も建立され、ゆかりの藩主や夫人の肖像彫刻が祀られました。こうした寺社は、現在も地域の人々をつなぐ憩い安らぎの場として、確かな歴史を伝えています。
この展覧会では、寺社に伝えられた仏像や肖像彫刻などを通じて地域の歴史と伝統を見つめ直します。東日本大震災によって、地域の寺社も少なからず被害を受けました。しかし、歴史ある寺社や文化財の存在は、それ自体が様々な苦難を越えて復興を成し遂げてきた先人たちの足跡といえます。修復と復興をくり返して伝えられてきた文化財をご覧いただくこの機会が、未来へ向かう復興の一助となることを祈念いたします。
主な展示資料は以下の通り。
・十一面観音菩薩立像/西光院蔵(仙台市若林区)
○不動明王立像・毘沙門天立像/陸奥国国分寺蔵(仙台市若林区)
◎釈迦如来立像/龍寶寺蔵(仙台市青葉区)
□安国上人坐像/真福寺蔵(仙台市若林区)
・金剛力士立像/黒川神社蔵(大和町)
・千体仏/満蔵寺蔵(仙台市若林区)
・獅子・狛犬像/東照宮蔵(仙台市青葉区)
□陽徳院坐像/瑞巌寺蔵(松島町)
・伊達光宗騎馬像及び神将像のうち神将像/圓通院蔵(松島町)
・伊達忠宗坐像/仙岳院蔵(仙台市青葉区)
・保性院(伊達宗勝の母)坐像/祥雲時蔵(一関市)
□釈迦如来立像/久成寺蔵(奥州市)
※◎は重要文化財、○は宮城県指定文化財、□は市・町指定文化財
展示は3部に分かれて構成されており、次のように説明している。
・第1章:像が語る歴史
仏像などの文化財には、様々な形で携わった先人たちの足跡をみてとることができます。奈良時代から江戸時代に造られた像を通じて、地域の歴史を概観します。
・第2章:肖像を祀る-仙台藩の霊屋(おたまや)
江戸時代、仙台藩では藩主や重臣を中心に「霊屋」という霊廟を建立して個人を祀りました。そこに祀られた肖像彫刻などにこめられた祖先への想いをさぐります。
・第3章:藩主と夫人
仙台藩主や夫人にゆかりのある仏像には、親から子へと受け継がれ、両者の願いを託された像があります。世代を超えて像に託した願いを紹介します。
今回の特別展は展示品がいささか少なめに感じたし、古い仏像には痛みが激しく顔や衣の浮彫も失われ、かたちから辛うじて仏像と分かるものさえあった。ただ、仏像自体が大きく場所をとるため、何点も展示するのは難しいのかもしれない。
それでも様々な仏像が展示されており、見応えがあった。個人的には武神系のものよりも観音菩薩像を見た方が心和む想いになる。神将や不動明王なら勇ましいが、金剛力士像となれば仏像界のキン肉マンにも見えてくる。驚いたのは燕沢の善應(ぜんのう)寺蔵の十一面観音菩薩立像が展示されていたこと。小学生時代、この寺の近くに住んでいたクラスメートがいて、善應寺で遊んだこともあった。
上の画像は特別展の目玉のひとつで、伊達政宗の正妻陽徳院こと愛(めご)姫の坐像。東北の方言に「めごい」という言葉があり、可愛らしい、愛しいという意味。名前通り愛姫は美しく賢夫人だったといわれる。
政宗はじめ伊達家当主の肖像画や彫刻が幾つか展示されていたが、やはり藩祖政宗の作品が多かった。さらに各政宗像の容貌がそれぞれ微妙に異なっており、本当の顔はどれなのか?と言いたくなる。
政宗と愛姫との間に生まれた長女・天麟院こと五郎八(いろは)姫の坐像もあり、上の画像がそれ。陽徳院と容貌がよく似ているのは母娘ゆえか。この姫も才色兼備だったそうだ。
東北地方の仏像ならば作品の出来はイマイチと思いきや、予想した以上によかった。会場の説明では京都などから一流の仏師を呼び寄せ、制作させたそうで、どうりで質は引けを取らなかった訳だ。都会から優れた芸術家を呼び寄せるのは、今も昔も変わりない東北の現象なのだ。
◆関連記事:「最後の戦国武将-伊達政宗 展」
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