トーキング・マイノリティ

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震災を利用する者たち その一

2012-03-11 20:40:36 | 世相(日本)

十年を生きた気がする、この一年

 これは3月9日付の河北新報の川柳コーナーで佳作に選ばれた一句であり、作者は仙台市太白区の浜田一生さん。浜田さんが被災されたのかは不明だが、今日でちょうどあの大震災から一周年を迎える。私は被災者ではなかった宮城県民なので、この一年で十年を生きた気までは しなかったが、家族や家屋、財産、職を全て失い、助かったのは命だけという被災者にはさぞ苛酷な一年だったのは想像に難くない。改めて震災の犠牲者の方々には謹んで哀悼の意を表したい。

 3.11以前、大地震と言えば宮城県では昭和53(1978)年6月の宮城県沖地震を意味していたが、昨年以降は東日本大震災に変わった。私は双方の大地震を体験しているが、今回のそれに比べれば昭和時代の地震などものの数にも入らないと感じた。おそらく私のこの先の人生も含め最大規模の地震になると思うし、そうであってほしいものだ。今から三十数年後、これを上回る震災など体験したくない。
 もう、あれから一年。公共建造物の多くはまだだが、仙台市内の大半は復旧を果たし、スーパーやデパートなど震災前と変わらないほど商品が溢れている。震災直後の品薄が遠い夢のようだ。街灯も全て消えた震災直後の暗さを思い出しても、今のように電気が何時でも使える暮らしを続けていると、震災後の不便な生活の実感さえ失われていく。

 マスコミではこの一年間震災関連ニュースを伝えなかった日はなかったし、地元紙・河北新報もその種の記事が連日欠かさず載っている。ただ、震災関連ニュースを洪水のように垂れ流し続けている報道姿勢に、被害と無縁だった地の日本人だけでなく、被災県民も うんざりしている人も少なからずいるのではないだろうか?このようなことを書れば、被災者の方々に不謹慎だといった反論もあるかもしれない。
 しかし、震災関連ニュースはマスコミにとっては格好の“ネタ”であり、悲惨な被災地の状況を伝えるのは多くのジャーナリストに飯のタネを 提供することになったのは事実なのだ。

 震災では海外から多額の支援が寄せられ、分けても台湾は突出していた。震災から僅か一ヶ月後に約141億円もの巨額の義援金を提供したにも拘らず、台湾の新聞には日本政府による震災義援金感謝の広告を出さなかったことがネットニュースに紹介されていた。もちろん地元紙の河北はこのニュースを載せていない。
 今年の元日、河北新報では各国の支援状況を詳しく紹介した特別記事を載せており、東北に来た救援隊チームが国ごとに何処で活動を したのか分かり易く、地図に国旗と矢印入りで描かれていた。だが、台湾の国旗が何と“白旗”状態になっていたのだ!台湾国旗を載せないことを河北新報では中国と密約していたのか?元日早々、この記事には家人共々不愉快な想いにさせられた。

 昨年12月半ば頃だったと思うが、外国人演奏家によるチャリティコンサートのベストテンも河北に載っており、クラシックに疎いこともあり演奏家や楽団の名前は聞いたこともないものばかりだった。しかし、これも私の怒りを掻き立てるランキングだった。クラシック界の大御所 ズービン・メータの名がない!
 昨年11月の記事でも書いたが、3月来日していたメータは大震災に遭遇、福島原発事故の影響を危惧するフィレンツェ市長の帰国命令により、公演は一旦中止された。だが、早くも4月10日再び来日公演を行っている。メータがベストテンにも入らないとは、一体 どんな基準なのか?とかく親中侮印の傾向がある日本の文化界、メータはインド人ゆえにランキングを外されたのではないか…と私は勘ぐっている。

 震災以前からマスコミでは無縁社会をがなり立てており、社会での“絆”を強調する論調が増えていた。震災後、“絆”の言葉が出なかった ТV報道番組などあったのだろうか?もちろん未曽有の震災への対処や復興には、国内の団結が必要なのは書くまでもない。しかし、私のようなへそ曲がりは絆コールにはどうも危険性も感じてしまう。下手をすれば全体主義に陥る可能性もあるし、「この非常時に!」と国民に説教していた戦前の風潮と重なる。

 そして“絆”を訴えるТVキャスターの衣装こそ、一般国民との絆がないことを如実に示しているものはない。昨年の猛暑でも背広ネクタイ姿 だった国営放送キャスター、同じく国営放送で、真冬でも襟ぐりの広い五分袖のブラウスを着ている女性キャスター。暖冷房が効いたスタジオで節電を主張するのはブラックジョークの極み。震災は大いなる稼ぎ場と喜び、禿鷹より速くやって来た連中もいた。
その二に続く 

◆関連記事:「杜の都、超激震!
 「ズービン・メータ、再び

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23 コメント

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実を言いますと (クッキングホイル)
2012-03-11 21:46:02
両親とも日本人なのですが、実を言いますと、親の都合で台湾生まれなもので、今回のことでもずいぶん台湾は立腹しているだろうと聞かれることがあるのですが、他のケースはどうかわかりませんが、台湾の親戚や友人から僕にはそのような声は全く聞こえてきません。

日本人が自分で問題視して自分で騒ぎ立てているだけのような感じに受け止めているようです。返って、そのことで嫌な気持ちになっている、というところが実情のようですよ。

こんなこと言ってますと、そのうちだれだか特定されてしまいそうですね。まあ別に構わないのですが(笑。
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災害と日本人 (室長)
2012-03-12 10:10:57
こんにちは、
 小生が最近読んでいた『ダイジェストで分かる外国人が見た幕末ニッポン』(講談社、2011年10月)によると、幕末頃の日本人は、本当に正直で、秩序を守り、天災、火災の翌日から早くも何らかの形で、いきいきと「復興」の道を歩み始めていた由。

 嘆き悲しんでもどうしようもないことには、くよくよ泣き叫ぶわけでもなく、すぐに立ち上がり、使える物資を拾い集め、或いはすぐに家の再建を始めるし、笑顔すら見せていたそうです。
 長崎で、オランダ人から、西洋風帆船の操船技術を学んでいた幕府の伝習所の生徒達の実家が、江戸の大火で焼け落ちても、生徒達がさほど心配もせず、実家に帰れとの蘭人教官の言葉にも耳を貸さず、平然と勉強を優先したそうです。

 幕末に日本に来た外国人がそろって、清国人(および東南アジア人)と日本人の差異に驚嘆していて、その道徳と教養の高さ(文字の読み書きが男女を問わず出来る)、正直さ、お金をぼろうとしない清潔さ、などを賞賛しています。
 また、賄賂を取ろうとしない理由に関しては、侍社会における相互監視の厳しさにも言及されています。チップとか、賄賂は一切受け付けないし、帆船から地上(横浜)への小舟での運搬サービスなども、「天保銭4枚」という安さ(幕府が決めた価格)に、外国人らは驚愕している。どの船頭も不満を一切口に出さないという。税関の役人も一切、賄賂を受け付けないという。

 もっとも、賄賂は取らないけど、食事の「おごり」などは、幕府の役人も何ら「賄賂」との感覚とかがなかったようで、条約交渉に関し、結構長い期間が必要なときに、江戸の英国公使館(お寺が外国公館として使用されていた)などは、日本側が決まって昼食時に現れては、洋食(ハム)とか、ワイン、シャンパンなどをばんばん食べまくっていったという。また、江戸郊外の観光地に行くと、高級料亭での高価な食事代金を日本側の警備随員、付添人とかの分も含めて、全部が外国人側の負担で、そういう場合には、日本側は何の遠慮もなかったらしい。黒船の中の食事でも、ワイン、シャンパンなど、通詞、交渉役人なども、全ておいしく平らげていたらしい。食事代については、外国側の負担に何ら違和感がなかった、と言うのも不思議なことだけど。

 ともかく、天災については、結構あっけらかんと、諦めの心情ですぐに前向きに歩き出す、これが昔からの日本人らしいです。今回は、東電の放射能災害、と言う人災(?)部分につき、責任追及の矛先があると言うことで、昔ほど日本人の諦めの境地とか、潔さが見えないようにも感じます。

 まあ、福島の惨状を見れば、同情しないわけにはいかないけど、放射能に関しては、必要以上に高い基準値を設定してしまった政府にも、小生は憤りを感じます。そこまで厳しい基準で食品を規制するのも、除染基準値が低すぎるのも、コスト意識がなさすぎるし、科学的根拠もない。科学的根拠のない、非常識な放射線関連の基準値については、週間ポストが何度も、予算の無駄遣いと警鐘を発しています。
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Unknown (うさちゃん)
2012-03-12 13:14:23
広告は集まった金額で決めてないと政府は言ってました、なるべくお金を使わない方法を模索した結果としておかしくないでしょう。白旗に不満があるとしても台湾自身が立場を明瞭にしてないんだから、しょうがない。平常時に国交の有無を気にする必要がなくても、重大時だからこそ、外交関係によって変わる事があるでしょう。
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RE:実を言いますと (mugi)
2012-03-12 21:39:51
>クッキングホイルさん、

 貴方は台湾生まれだったのですか!それは全くの予想外でした。台湾人ブロガーさんから、時々コメントがあります。日本語表記が上手いので、台湾在住の日本人が成り済ましているのか?とも思ったことがありますが、コメント内容から本物の台湾人のようでした。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/700c2d77a76e91b45a9b9ce72fc455ca#comment-list

 日本事情を知る台湾人は日本政府の対応を特に不快感を示すこともなく、平静に受け止めていると聞いたことがあります。常に中共の圧力を受けているため、このような“冷遇”には殊更神経質にはならないのでしょうね。この点では台湾の方がずっと「大人の国」です。

 今回の義捐金に限らず、日本人はとかく自分で問題視して自分で騒ぎ立てている傾向が強いですよね。そして親日国等とはしゃぎすぎる。自分たちと他国人との視点は違っているということも気付かず、他国の目を異様に気にする。元から人目を気にする民族性もありますが、マスコミが外国の目を権威にしたがることにも原因があると思います。
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RE:災害と日本人 (mugi)
2012-03-12 21:47:46
>室長さん、

『ダイジェストで分かる外国人が見た幕末ニッポン』、私は未読ですが面白そうですね。幕末時代の日本人も天災や火災にも挫けず、復興に向かって歩み始める姿勢に今の東北と重なり、感動させられました。
 幕末だけでなく、明治になって来日した外国人にも称賛する者も少なくなかったとか。以前、「イラン人が見た明治の日本」という記事を書いていますが、この来日イラン人は同行したイラン人と異なり、日露戦争は日本が勝つと予言していたそうです。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/3ffd295f08a473778ebe3a03bcfebd91

 食事の「おごり」の習慣も、以前に見た『平戸オランダ商館日記』に同じような記載がありました。そのためオランダ人は、日本人と交渉する際、使いには鶏やワインを持たせたそうです。面白いのは厳しくキリシタン取締りをした役人が「洋食」が大好きで、オランダ人に鶏やワインをねだったとか。17世紀前半でも異教徒の食品を穢れとは思わなかったようです。

 さて、21世紀の日本ですが、幕末と違いТVやインターネットのような映像をフルに使った媒体があるため、風評被害のような“人災”まで生んでしまいました。同じ東北でも福島県の被災はこちらとも違います。津波では宮城県が最も酷かったですが、放射能という目に見えない災害は実に厄介です。

 放射能に関して、私もマスコミが騒ぎ過ぎていると感じています。専門家と称する学者たちも言っていることがバラバラで、返って信用出来なくなる。ネットでも盛んに騒ぎを煽っているブロガーもおり、今後東日本では百万人が死亡する等と妄言を書いている者もいた!これぞブロガー自身の願望でしょう。その類が拙ブログにも参上しました。

 幼い子供のいる母親が神経症になるのは分らなくもありませんが、中高年までが放射能に過敏になるのは如何と思いますね。福島から山形に自主避難した若い母親が、雪かきが大変、孤立感を感じるとぼやいていたのをローカルニュースで見たことがあります。雪かきが嫌なら、関東にでも避難すればよかったのに…と思いました。これではネットで一部の者が「東北の乞食」と嘲るのは無理もない。
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うさちゃん へ (mugi)
2012-03-12 21:54:34
 ここは私見の主張に過ぎない個人のブログだし、震災に関しての一県民の私見を述べただけなのであしからず。

>>広告は集まった金額で決めてないと政府は言ってました

 これぞ底の浅い見え透いた言い訳というものだし、擁護としても拙劣。義捐金の最も多いところには謝礼しないという決定も、反日日本人や外国人は別として摩訶不思議と見るのが一般国民。

>>なるべくお金を使わない方法を模索した結果としておかしくないでしょう

 そのくせ新聞広告費など物の数ではない巨額なお金を不可解な所に使っているが?これは私だけの意見ではないのを忘れるな。こんな意見を述べるキミの素性もおかしく見える。

>>白旗に不満があるとしても台湾自身が立場を明瞭にしてないんだから、しょうがない

 それはキミの私見や主観だが、私も含め少なからぬ日本人は違う。個人の不満を述べただけだし、それにツッコミを入れるキミのコメントもしょうがない内容。台湾は恩着せがましく振る舞う隣国と段違いだが、この二カ国を比較しても本当にどうしようもない。

>>重大時だからこそ、外交関係によって変わる事があるでしょう

 平時においても外交関係のよって変わることもあるし、それが非常時にも影響してくる。外交とは政府間だけでなく民間も少なからず影響があるが?いくら外交辞令を使っても、ネットの時代ではもう隠せない。
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地震関係記事に関する新聞の一面 (スポンジ頭)
2012-03-13 00:29:26
 こんばんは。
 
 今回の地震は日本史上に残る出来事になるでしょうが、地震発生から年末にかけて朝日新聞大阪版一面に掲載された記事の割合を視覚化したものがあります。
http://gigazine.net/news/20120311-newspaper-pageone/

 徐々に減少していくのですが、お盆を過ぎた辺りから格段に減っていきます。それでも関係時期が掲載された日が多く、阪神大震災発生時より分量が勝っているのではないかと思います。どうもその原因は電気予報を含む福島原発関連記事にあるらしく、自然災害のみなら未曾有の大災害でもここまで報道が大きくならなかったでしょう。あの事故が本当に残念でなりません。

 ちなみに、
>「出来るだけ、放射能は怖いと思えるような文章でお願いします」という記事作成依頼」
がネットであったそうで、この異様な依頼は何を目的としていたのか不可解です。いずれにせよ、「善意」とは思えません。
 http://gigazine.net/news/20120114-radioactivity-report/
 
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スポンジ頭さんへ (Davy)
2012-03-13 01:08:36

横レス失礼します。
放射能に関する記事依頼についてですが、依頼の仕方の文面が変ですよね。

ですが、放射能は目に見えないですし、だからこそ危機感も薄れますから、おおげさ位の方がちょうど良いという意味なのでしょうか。。

失礼しました。

返信する
RE:地震関係記事に関する新聞の一面 (mugi)
2012-03-13 21:35:57
>こんばんは、スポンジ頭さん。

 紹介された朝日新聞大阪版一面記事の割合を視覚化したサイトは面白いですね。視覚化という方法だと一発で分かります。震災以外にも重要なニュースもあるし、関西という地理的なことも関係しているのかもしれませんね。
 河北新報はやはり朝日新聞よりも震災関連記事が第一面に占める割合は多いと思いますが、同じように誰かが視覚化してくれる方がいると有難いです。

 河北新報はwikiにも載っているように、「2011年秋からは朝日新聞の受託印刷を開始した。また、2012年春からは読売新聞の受託印刷を開始する予定」とのこと。全国紙との繋がりを強化しているようです。

 仰るように今回の震災で、津波で死者が出ても原発事故がなければ、あれほど報道はされなかったと思います。朝日の煽動は戦前からの伝統があるし、他紙も似た様なものでしょう。カネをもらえば白を黒と書くのがブンヤです。
 先のコメントでも書いたとおり、ネットでも盛んに放射能への恐怖を煽っていたブログもありましたが、貴方の紹介されたサイトを見てやはり…と思いました。その件でhikarinonpuさんのツイートが振るっています。
「アフィで充分稼げるならば食えなくなったライターさんを救済できるかもしれませんが、現実はこんなもの」
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RE:スポンジ頭さんへ (スポンジ頭)
2012-03-13 21:51:54
>Davyさん
 初めまして。

 ヤフーの書き込みで、反核運動家などが福島へやってきた挙句、運動家に入り込まれた地域は大げさに被害を言い立てられ農産物が出荷できなくなったそうです。あのブログ記事依頼はある種の政治運動に思えるのです。

 しかし改めて自分の書き込みを読むと誤変換があって恥ずかしくなります。
 >関係時期(誤)
関係記事(正)です。
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