その一、その二、その三の続き
インドに渡航した日本人も多く、その体験を書いているブログも見かける。渡航だけでなくヒンディー語やグジャラート語を解する女性ブロガー、サンスクリットの書を邦訳しているブロガーさんまでいる!これほどマニアックではなくとも滞在体験のある方なら、インドがいかに遵法主義と程遠い状態にあることは知っているはずだ。汚職が広く蔓延り、政治家はもちろん警察官もそれが当たり前、収賄は一個人だけでなく権力者に親戚縁者が群がる様は、中国と殆ど変わりない。ちゃんとした業種や会社さえ裏で贈賄工作は普通である。
「インドからの手紙/悠久のムンバイ」というサイトがある。書かれてあるのは2000年の出来事だが、その中の「悠久のムンバイ3」「悠久のムンバイ19」に見る賄賂天国のインドの凄まじい実態は日本人の想像を絶するだろう。3では「刑務所の中までも金しだいの「金持ち天国」」の見出しで始まり、「警察は政府よりももっと悪い」「この国の正義と治安は、「お金」によるといっても過言ではないような気がします」等の文章がある。賄賂天国だけでなく脱税天国の国でもある。
惜しいことに2006年7月で更新が止まっているブログ「悠久のムンバイ」も、実に興味深い記事ばかり。インドの映画や小説にも汚職や格差社会が見えるが、現地に滞在した日本人による記録はやはり分かり易く参考になる。
辺境の島国ということもあり、日本人には異様に海外の国に入れ込む者が少なくない。殊に女にはその傾向が強く、憧れの国となると理想郷のような書き方をする者までいる。贔屓している国を貶されて気分の良い者はいないにせよ、外国愛のあまり極度にキレイごとを並べるのは、同胞に誤解を与えることに繋がる。
インドを愛するがゆえに“信頼”が擁護目的で馬鹿げたコメントをしたのなら、まだ弁護の余地もある、しかし、この者は特にインド愛もないと私は見ている。文体からこの者は、ブログ『キリスト教の問題点について考える』さんの少し前までの常連の一人と同一人物なのはほぼ確実だし、別HNで盛んにコメントしていた時、インドに言及するようになったのは今年4月以降だった。この時も有名な在日インドと会った、知己がいる類の書込みをしていたが。
「インドIT企業に長年いる」と称する“信頼”だが、勤務先の人事部長や関連の友人にカーストについて調べてもらったと書いただけで、インドに疎い日本人でも社会人体験があるならならおかしいと思うはず。インド企業に勤める者が普通そのようなことを聞くのか?インド在住外国人ならカースト問題は微妙であり、問われるのを現地人が嫌っているのは誰もが判り切ったことなのだ。インドIT企業に長年いるビジネスマンを詐称、事情通を自慢する目的の信頼性の全くない書込みに過ぎない。
外国人の異教徒には理解し難いカースト制だが、害悪ばかりではなくプラス面もあり、同カースト同士の結束と連帯は未だに根強いものがある。確かに“信頼”の書いた通り普段職場ではカーストや宗教は問題にならないにせよ、結婚となれば無視することは極めて難しい。異なるカーストの男女が恋愛結婚しようとすれば、親兄弟による“名誉の殺人”が田舎はもちろん都市部でも行われることも珍しくない。経済成長でこの因習が廃れるどころか、逆に増加傾向にあるというから言葉もない。
「IT産業がカーストの壁を崩す大きな力になっている」等のエコノミストの意見は、経済成長すれば中国も民主化が進むと予測する欧米人中国専門家と重なる。どちらも能天気な的外れなことにおいて。
その二に「インドの課題」と題し、Alexさんから「List of countries by number of Internet users」というサイトを紹介して頂いた。そしてAlexさんさんは、「インドはITのイメージがありますが、インドのネット人口は僅か7.5%で日本の80%、中国の34%にすら遠く及ばないのでとてもIT大国と呼べない有様です」と言っている。
それを見たトオニさんが「ネットの比率と人口数」として、「2010年の推定人口とAlexさんの示すネット利用率とで計算してみると…」の結果は以下の通り。
・印度:約9200万人
・日本:約1億100万人
・中国:約4億5600万人
平等思想が金科玉条となっている戦後日本人の殆どは、カースト制と聞くだけで拒否反応があるのではないか?インドのこの風習はかなり特殊だが、程度の差はあれ階級がない社会など人類史上未だに実現したことはない。カースト=悪と見るよりも、何故この制度が古くから続いているのか調べた方が、インド理解に繋がると私は考えている。
『だれも知らなかったインド人の秘密』(パヴァン.K.ヴァルマ著、東洋経済新聞社)には1960年代、ニューデリー在住のメキシコ大使オクタビオ・パス(後にノーベル文学賞受賞)の言葉が紹介されている。「カースト制度は変化ではなく、持続のために考案されたものです」(217頁)
◆関連記事:「女盗賊プーラン」
「インドの選挙事情」
よろしかったら、クリックお願いします
最新の画像[もっと見る]
-
禁断の中国史 その一 2年前
-
フェルメールと17世紀オランダ絵画展 2年前
-
フェルメールと17世紀オランダ絵画展 2年前
-
フェルメールと17世紀オランダ絵画展 2年前
-
第二次世界大戦下のトルコ社会 2年前
-
動物農園 2年前
-
「覇権」で読み解けば世界史がわかる その一 2年前
-
ハレム―女官と宦官たちの世界 その一 2年前
-
図解 いちばんやさしい地政学の本 その一 2年前
-
特別展ポンペイ 2年前