11月28日、中村吉右衛門が心不全により死去した。享年77歳と早すぎる死に驚いた方も多かったろう。中村吉右衛門といえばテレビ時代劇鬼平犯科帳が有名だったし、私の大好きな時代劇でもあった。池波正太郎原作の鬼平犯科帳シリーズ全作も読んでおり、原作ファンから見ても中村の鬼平は本当に良かった。あれだけ質の高い時代劇は現代では制作も難しいだろう。
鬼平には男女ともに魅力的な人物が大勢登場しており、鬼平をめぐる女性たちについて書いてみたくなった。鬼平に登場する女性キャラで特に好きな人物は?と聞かれれば、鬼平の妻・久栄、密偵おまさ、茶店の女主人お熊の3人を挙げたい。一番好きな女性キャラは?と言われても、久栄とおまさでは甲乙つけ難く、1位は決められない。
久栄は18歳の時に平蔵と結婚するが、実は“傷物”だった。『むかしの男』にはその経緯が描かれており、久栄は隣に住む悪い男に誘惑され、弄ばれた挙句、捨てられる。本来なら嫁にいけない身になった久栄だが、平蔵は彼女の過去を知った上で妻に迎えたのだった。
テレビ版の『むかしの男』を紹介するブログ記事もあるが、原作とはストーリーが若干違っている。むかしの男は久栄の過去を持ち出し、盗賊仲間を釈放させる腹積もりだった。彼女がむかしの男と対面するのは原作と同じだし、男が「はじめての男は忘れられぬものというが……」と言うのもほぼ同じ。
むかしの男に対し、「ばかなことを」と一括する久栄は、同性から見ても胸がすく。映像がない分、返って小説は想像力が刺激されるのだ。事件解決後、久栄は夫に対し、「女は、男しだいにござりまする」とも言っている。尤もツイフェミがこの種のセリフを見たら、発狂することだろう。
密偵おまさは十か十一の少女の頃から平蔵に思いを寄せており、平蔵が酒を飲み過ぎた翌日など、その小さな手で器用に白粥に梅干し、香の物をそえたものをこしらえ、平蔵のいる中二階まで運んでくれたものだった。平蔵は少女の思いには全く気付かなかったが、夫からその話を聞いた久栄は、おまさが今でも思いを寄せていることを悟る。但し、平蔵とおまさはついに男女関係にはならなかった。
白粥に梅干し、香の物はいかにも呑兵衛が好きそうな食事だし、私も好きだが、池波正太郎の好物でもあったという。鬼平に出てくる料理はどれも美味しそうなものばかりだが、作者の好みもかなり反映されているようだ。
中年以降から平蔵に思いを寄せているのが茶店の女主人お熊。平蔵が勘当同様になって屋敷を飛び出し、本所・深川でゴロを巻いていた頃には、毎日のように酒を飲ませたり、泊めてやったほど。
それだけならまだしも、平蔵を泊めた夜更け、四十を過ぎたお熊が素っ裸で平蔵の寝床に潜り込んできて、「銕(てつ)つぁん、取って食おうとはいわないから、一度、味をためしてくんなよ……」と夜這いをかける。
さすがの平蔵も下帯一つでほうほうの体で逃げ出したが、平蔵と再会後には密偵たちの連絡の場所として己の茶屋を使わせるなど、彼の仕事に協力を惜しまない。このような仲もいい。
鬼平に登場する女賊も魅力的なタイプが多い。女賊ゆえにあくが強いのは当然でも、かつて平蔵と関係があったり、中年になっても色香は衰えず、男たちを翻弄する女もいる。
面白い小説とはストーリーはもちろん、魅力的な登場人物で読ませられてしまう。このような良質の時代小説はテレビドラマ化してもいい作品となる。
◆関連記事:「鬼平犯科帳」
だが、今のテレビは絶対にやらないだろう。理由はエントリーにもある通り、
>尤もツイフェミがこの種のセリフを見たら、発狂することだろう。
になって、「嫌なら見るな」と啖呵でも切ろうものなら、ツイフェミは即座にBPOに提訴するに決まっている。
しかし、ネットの広告料が既にテレビのそれを抜いて久しい。民放テレビはじり貧になって枯れていくのだろう。団塊世代が後期高齢者と化してしまった今、最後の新聞テレビの拠り所がいよいよ消えていく。その後は「そして誰もいなくなった」。
ツイフェミはサザエさんにも家父長的と噛みついていたようですが、BPO自体、極めて偏った組織ですからね。欧米のドラマもポリコレのおかげですっかりつまらなくなりました。
先日、河北新報では若者の半数はテレビを見ていないという特集記事が載りました。新聞とテレビは密接な関わりがあり、民放テレビのじり貧化は新聞と重なります。
尤もネットでも規制が進んでおり、「デジタル・ファシズム」の危険性も大きいでしょう。
30近くなってからガソリンスタンドの待合においてあるコンビニ本の漫画版の鬼平や漫画版の剣客商売を読んで池波作品の良さが分かりましたね。この年になってからTV版見たら多分すごく面白いんだろうあなと。
あとですね数年前アニメ版鬼平というのも放映されてたんですよ。実はw
漫画版の鬼平や剣客商売とはさいとうたかを作品ですよね?私も漫画版鬼平はイイと思いましたが、やはり原作の方が好みです。
今回記事にするに当たりwikiを見たら、数年前にアニメ版まであったことを初めて知りました。検索したら公式動画サイトもあります。
https://onihei-anime.com/movie/
漫画版を見た方がいいような、、、
鬼平では登場人物が五鉄で軍鶏鍋を囲むシーンがよくありますが、本当においしそうですよね。私も軍鶏鍋を食べてみたいですが、軍鶏自体が入手しにくく、軍鶏鍋を出す店は殆どありません。ご鉄のモデルとなった「かど家」の動画もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=A--dGOsn1e0&t=17s
確かに軍鶏を解体するシーンはありませんよね。江戸の町で軍鶏が簡単に手に入ったのかも疑問です。
私もググったら、「かど家」は既に閉店していたことを知りました。「かど家」以外にも閉店した池波正太郎お気に入りの店はあるかもしれません。
やはり時代の流れでしょうか。今の若者は鬼平を読まない人が多いだろうし、時代劇も放送されていません。いくら人口の多い東京でも昔ながらのお店は商売が難しくなってきているようですね。