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トーキング・マイノリティ

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マルクスとマキアヴェッリ その②

2010-04-03 20:48:08 | 歴史諸随想
その①の続き
「研究室」氏はさらに拙ブログにも、「マルクス本性」というコメントをされており、改めてマルクスが共産主義を説いた背景が浮かび上がってくる。

マルクスが、普通の視点から見てとても尊敬できない類の人間であったことは、ポール・ジョンソン著の『ユダヤ人の歴史・近世編・離散した諸国で受けた栄光と迫害』(徳間文庫、06年12月)のP244-249に詳しく書かれています。ユダヤ教を嫌い、生涯自らは金を稼がずに親族あるいは、エンゲルスからの資金援助に依存して勉強ばかりしていた。エンゲルスがいくら勧めても、工場の見学もせず、現実の労働者も見ずに、全ての理論を書物から得た情報のみで構築した。共産主義社会は、労働者による統治ではなく、キリスト教徒のエリート知識人階級による「管理機構」に委ねる意図だったという。

 つまり、プロレタリアは単なる手段で、彼らの義務は服従だけである由。結局、レーニンだけが悪かったわけではなく、マルクス自身も、エリート官僚による支配を想定していたのだ。この構図は図らずも、ユダヤ社会に根強かった、律法学者支配階級(カテドクラート)による支配、という構図そのままである由。ユダヤ教を何ら勉強せず、むしろキリスト教徒になる方がまし、といいながら、自宅では、妻や子供に対し、家父長式にふるまい、生活資金は全て後援者にたかることで(資金要請の手紙を書く)得ていたという。ユダヤ社会のラビ達も、生涯金持ちのユダヤ人らの支援で生活し、勉強ばかりするというユダヤ社会の伝統で、マルクスも一種の「ラビ」的な人間(日本の現代で言えば、ニート、引きこもり)だったという…

「研究室」氏には、『マルクスだったらこう考える』(的場昭弘著、光文社新書)への論評記事もあり、末尾のこぼれ話はには苦笑した。「マルクスが妻が連れてきた下女と、その下女の妹と、更には姪の誰かと、○○婦人と…合計最低4名と不倫した」そうで、下半身は資本家並みにお盛んだった。人間的と解釈もできるが、オスとしては正常でもある。下ネタ話に、つい私は次のような皮肉コメントを書いた。
-彼は資本家が他人の妻に手を出していることに対し、「公認の婦人共有」を提案しましたが、「非公認の婦人の独占化」を実行していたとは。「裕福な連中の愛国主義などというものは、財産や既得権を危地に曝すという緊張には耐えられないものらしい」と言ったのはネルーですが、マルキストも男の本能から自分の女の所有権を危地に曝すことには耐えられないでしょう。

 他にも『カール・マルクス』(E・H・カー著、未来社)を論評したブログ記事も面白い。この記事には同時代人の観察も紹介されており、此処からマルクスの特異な人格も浮かび上がってくる。

-マルクスのいうことは確かに内容が充実しており、論理的で明確だった。だが私は、あれほど相手を傷つけ、我慢できないほど傲慢な態度をとる人には、一度も会ったことがない。彼は自分の考えと根本的に食い違っている見解に対して、ある程度敬意を払って検討する心遣いを示さなかった。自分に反論する人をあしらうときには、いつでも軽蔑の色が見えすいていた。
 また自分の気に入らない議論に答えるときには、いつでも同情に値する相手の無知を毒々しく嘲るか、またはそんな議論を持ち出した動機について相手の名誉に関わるような疑念を示した。私は、彼が“ブルジョア”という言葉をいうときの痛烈な嘲笑的調子(唾を吐き棄てるようなと言いたい)を今でもよく憶えている。ところで“ブルジョア”というのは、精神的、道徳的頽廃の泥沼深く落ち込んでいるということをはっきり典型的に示す言葉なのだ。そして彼は自分の意見に楯突く人を誰でも“ブルジョア”として非難した…

 著者カーは証人たちの観察から、次のような結論を下す。精神分析医にとっても、マルクスはさぞ研究に好ましい対象だろう。

-彼の精神は逆境にあっても不屈だった。みずから自分に課した超人的任務に対する忠実さは完璧だった。これは賞賛すべき美徳だが、彼の場合は恐るべき権力意志、つまり正しさを押し通そう、自分だけの正しさを押し通そうとする意志にむしばまれていた。彼は、反対し、批判し、または別の考えを抱く人たちを剣で、剣でできないときは、毒に浸したペンで絶滅しようとした。だが、このような人は世界をよりよくすることができない。

 一般にネガティブなイメージのないマルクスに対し、マキャヴェリズムの語源となったルネサンスの思想家マキアヴェッリは、それだけでも印象が悪い。「目的達成のために手段を選ばず」の権謀術数を説いた者と認識されており、冷酷な人物と思われがちだが、公私共に私生活ではあまり“マキャヴェリスト”でなかったことを知る人は少ない。
その③に続く

◆関連記事:「女と共産主義

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