『君戀しやと、呟けど。。。』

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『愛しい想い』 vol.14

2006-04-19 10:26:22 | 小説『愛しい想い』
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 最初、何を意味するメッセージが流れたのか、理解できなかった。暫くして改めて発信する。
 今度こそ、はっきりした。

 私からの番号は受け付けられないって云っているんだ。

 怒り、だろうか。それとも別の、何か気持ちの悪い感情。一瞬のうちに私を包み込んだ、そのよく分からないモノに支配され、私は意識を失った。
 気付いたら、病院のベッドに眠っている。ベッドのふちに顔を伏せ母が寝ていた。
 少し動くと、母も動き、そして目が合った。
「魅子。魅子、ママが分かる
 どうして、そんなこと聞くんだろう。頷きながら、変な感じがした。母が備え付けのナースコールを押し、私の意識が戻ったと告げている。
 暫くして、ナースと医師がやってきた。

「魅子さん。自分のしたこと、憶えていますか?」
 一通りの診察を終えると、医師は人払いをし、こう聞いてきた。
 私のしたこと?
 …
 …
 …
 あれ、何も思い出せない。
「魅子さん、今、何歳ですか?」
「それくらいは分かります。… … … 分かりません。先生、私、記憶喪失になっちゃいました」
 半分苦笑いをして、半分泣いて、やっと答えた。
「無理をするのはやめましょう。今は、ゆっくりと怪我を治すことです」
「怪我? 私、怪我してるんですか!? でも、どこも痛くないんですけど」
「大丈夫。急がないで、ゆっくりやりましょう」

 山崎と名乗った医師は、優しいマスクでそう云った。
 母が戻ってくると、私は何があったのか、と聞いた。
 すると母は小さく首を横に振るだけで泣き出してしまい、その母に手を伸ばそうとして初めて、下半身に違和感を覚えた。
「ママ、私、起き上がれない」

 驚いた私は頭の中が真っ白になってしまい、目の前で泣く母も、ただ泣き続けていた。

 その時だった。
 スライドの扉が、スウ~っと開いて、そこに優一が現れた。
「優一、大変、私、起き上がれない」
 そう云う私の言葉に重なるように、彼が云う。
「魅子、意識が戻ったのか」
 思わず自分のことより、うん、と返事をしていた。
 母が病室を出ていくと、替わりに優一がベッドのすぐ近くにきて座った。
「よかったな、意識が戻って」
「どうして皆、そんなに大袈裟なの? 私、何かしたの!?」
「何かしたって… 憶えてないのか」
 頷く私に、優一の手が伸びてきた。左の頬を触られる。優しい手。

 あれ、私って振られたんじゃなかったっけ

「ごめん。混乱してる。どうして優一がここに来てくれるの? 私、振られたんだよね。それは憶えてる。どうして、優一が」
 その時、ふわっと彼の体が覆いかぶさってきて、私はKissされた。
「ごめんな」
 そう残して、彼は病室を出て行った。
           To be continued
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