~消えない悲しみ 消せない記憶・番外編1~
うわぁ~
頭を掻き毟り、ガシガシと混ぜっ返す。
「ちょっと何するんですか。セット終わったばかりなんですよ」
「この前、一緒に来てた友だちのデザイナーさん!? 俺のファンだっていう。彼女の連絡先を、貴女から聞いたらどうなりますか」
いつもなら決して自分から、こんなことは言わない。
でも、このスタイリストがいつまた自分の担当につくかは分からない。何故ならこの人は穴埋めだから。ならば、今しかないのだと悟る。
驚く顔は一瞬で、そのスタイリストは答えた。
「それは無理」
だと。そして自分が仲介するから、先に俺の電話番号なりアドレスなりを教えてくれれば伝える、と言われた。
「ま。私が信用できれば、の話ですけど」
気持ちは決まっていた。
出逢いから数ヶ月、彼女を忘れられない自分がいる。
それを告げると、一枚のメッセージカードを取り出し此処に伝えたいことを書けばいいと。そして封筒に入れそのまま渡してくれると言う。
「連絡があるかないかは、彼女次第です」
残酷ともとれる一言は、逆に確実にこのカードが彼女に渡ることを伝えてくれる。
「書きます」
そして何の躊躇もなく、携帯の番号とアドレス、そして連絡が欲しいと書いて渡す。
俺の携帯に彼女からのメールが届くのは、この日から更に半年経った春のこととなる。
【終わり】
著作:紫草
うわぁ~
頭を掻き毟り、ガシガシと混ぜっ返す。
「ちょっと何するんですか。セット終わったばかりなんですよ」
「この前、一緒に来てた友だちのデザイナーさん!? 俺のファンだっていう。彼女の連絡先を、貴女から聞いたらどうなりますか」
いつもなら決して自分から、こんなことは言わない。
でも、このスタイリストがいつまた自分の担当につくかは分からない。何故ならこの人は穴埋めだから。ならば、今しかないのだと悟る。
驚く顔は一瞬で、そのスタイリストは答えた。
「それは無理」
だと。そして自分が仲介するから、先に俺の電話番号なりアドレスなりを教えてくれれば伝える、と言われた。
「ま。私が信用できれば、の話ですけど」
気持ちは決まっていた。
出逢いから数ヶ月、彼女を忘れられない自分がいる。
それを告げると、一枚のメッセージカードを取り出し此処に伝えたいことを書けばいいと。そして封筒に入れそのまま渡してくれると言う。
「連絡があるかないかは、彼女次第です」
残酷ともとれる一言は、逆に確実にこのカードが彼女に渡ることを伝えてくれる。
「書きます」
そして何の躊躇もなく、携帯の番号とアドレス、そして連絡が欲しいと書いて渡す。
俺の携帯に彼女からのメールが届くのは、この日から更に半年経った春のこととなる。
【終わり】
著作:紫草