あれは予兆だったんだろうか。
『お願いがあるの。初日とかでなくていいから、早めの日にちでチケットを譲ってもらえる?』
お前から初めて強請(ねだ)られて、有頂天になった。
でも、そんなチケットなど取るんじゃなかった。時間は戻らない。どんなに悔やんでも、もう遅い…
一度は、失ってしまったと思った宝物。取り戻した、と思っていた。
もう二度と手離すことはない、と信じていたのに…
神はあっけなく、彼奴を連れ去った。その手元に置くために。
葬送の列に、並ぶことを許されなかった俺。
芸能を生業とするものの、宿命。公演は何があっても、続けられる。
あの日の公演を観ることのなかったお前に、心残りはないんだろうか…
闇夜、短い時間の最后の逢瀬。夜の帳が二人を隠す――。
一生を同じ空間に在ると、共に誓った永遠は二度と訪れない。
彷徨いゆく闇の中、いまは亡き姿を捜す。
夢幻。
優しい光りに包まれて、それは空に散った。
見上げた天空からは、静かに白いものが舞い落ち始める。
愛してる、いつまでも。
そして決して忘れない。その声音も、その姿態も。ほんの束の間の、逢瀬でさえも。
この命尽き果てる、その最期の一瞬まで――。
【終わり】
著作:紫草
【作品b】のHPを立ち上げました。
これまでの作品を全て移行してのスタートです。
時間が許しましたら、覗いてみて下さい。
本家サイト共々、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
紫草 拝
『お願いがあるの。初日とかでなくていいから、早めの日にちでチケットを譲ってもらえる?』
お前から初めて強請(ねだ)られて、有頂天になった。
でも、そんなチケットなど取るんじゃなかった。時間は戻らない。どんなに悔やんでも、もう遅い…
一度は、失ってしまったと思った宝物。取り戻した、と思っていた。
もう二度と手離すことはない、と信じていたのに…
神はあっけなく、彼奴を連れ去った。その手元に置くために。
葬送の列に、並ぶことを許されなかった俺。
芸能を生業とするものの、宿命。公演は何があっても、続けられる。
あの日の公演を観ることのなかったお前に、心残りはないんだろうか…
闇夜、短い時間の最后の逢瀬。夜の帳が二人を隠す――。
一生を同じ空間に在ると、共に誓った永遠は二度と訪れない。
彷徨いゆく闇の中、いまは亡き姿を捜す。
夢幻。
優しい光りに包まれて、それは空に散った。
見上げた天空からは、静かに白いものが舞い落ち始める。
愛してる、いつまでも。
そして決して忘れない。その声音も、その姿態も。ほんの束の間の、逢瀬でさえも。
この命尽き果てる、その最期の一瞬まで――。
【終わり】
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紫草 拝