「じゃ、お願いしますね」
ランが、優一の左肩をポンと叩き、別のテーブルへと移動する。
優一が、にやりとシニカルに笑うのが分かる。
私は、下を向いたままだ。
「ランに何か云われたの?」
優一の言葉は、やっぱり優しくて憎らしいと思った。
「ちゃんと話せって」
「そっか」
優一は、そう返事をするものの、何かを話し始めるという気配はない。
気まずい。。。
思い切り、気まずかった。
何を話せばいいのか、皆目見当がつかなかった。
「ねぇ」
「はい」
思い切り声が上ずってしまい、優一が笑い出した。
もう好きなだけ笑ってくれ、そんな気持ちだった。
「簡単に話を戻そう。確かに、俺は魅子に別れると云った。それは事実だ」
優一の言葉使いが‘僕’から‘俺’に変わった。
それだけ云うと、注いであった気の抜けたビールを一気に飲み干す。
次に大きな溜息をついた。内ポケットから煙草を取り出すと、口に銜える。ジッポのカシャ、っという独特の音がして、目の前に火が現れた。
いつもの流れ。いつもしていたこと。
でも私は思わず、後ろへ下がる。
煙草は嫌い。ジッポの臭いも嫌い。そしてライターの炎も嫌いだった。
「あっ。ごめん、忘れてた」
優一は慌てて灰皿に火を押し付ける。
以前なら、それを当たり前のようになじっただろう。
どうして、忘れるのかと。
どうして、わざとらしく火を消すのかと。
どうして、吸う前に聞かないのかと。
今なら分かる。
何も考えていなかったんだ。
無意識。
きっと優一にとって、煙草に火をつけるという行為に、意志はない。
そう思えば、吸わないで、と素直に云えば良かった。
いかにも、高飛車な態度で、言葉で、偉そうに怒鳴りつけるようなこと、しなければ良かった。
自分の愚かさに、今更ながら腹が立つ。
自分が情けなくて、涙が出てくる。
私って、どうして、あんなに酷い女だったんだろう。
優一とは釣り合わないって、噂される筈だよね。
今になって、本当に自分のことが見えてきた。
今更、気付いても遅いけど。。。
はっと気付くと優一が、優しい顔で笑っている。
To be continued
ランが、優一の左肩をポンと叩き、別のテーブルへと移動する。
優一が、にやりとシニカルに笑うのが分かる。
私は、下を向いたままだ。
「ランに何か云われたの?」
優一の言葉は、やっぱり優しくて憎らしいと思った。
「ちゃんと話せって」
「そっか」
優一は、そう返事をするものの、何かを話し始めるという気配はない。
気まずい。。。
思い切り、気まずかった。
何を話せばいいのか、皆目見当がつかなかった。
「ねぇ」
「はい」
思い切り声が上ずってしまい、優一が笑い出した。
もう好きなだけ笑ってくれ、そんな気持ちだった。
「簡単に話を戻そう。確かに、俺は魅子に別れると云った。それは事実だ」
優一の言葉使いが‘僕’から‘俺’に変わった。
それだけ云うと、注いであった気の抜けたビールを一気に飲み干す。
次に大きな溜息をついた。内ポケットから煙草を取り出すと、口に銜える。ジッポのカシャ、っという独特の音がして、目の前に火が現れた。
いつもの流れ。いつもしていたこと。
でも私は思わず、後ろへ下がる。
煙草は嫌い。ジッポの臭いも嫌い。そしてライターの炎も嫌いだった。
「あっ。ごめん、忘れてた」
優一は慌てて灰皿に火を押し付ける。
以前なら、それを当たり前のようになじっただろう。
どうして、忘れるのかと。
どうして、わざとらしく火を消すのかと。
どうして、吸う前に聞かないのかと。
今なら分かる。
何も考えていなかったんだ。
無意識。
きっと優一にとって、煙草に火をつけるという行為に、意志はない。
そう思えば、吸わないで、と素直に云えば良かった。
いかにも、高飛車な態度で、言葉で、偉そうに怒鳴りつけるようなこと、しなければ良かった。
自分の愚かさに、今更ながら腹が立つ。
自分が情けなくて、涙が出てくる。
私って、どうして、あんなに酷い女だったんだろう。
優一とは釣り合わないって、噂される筈だよね。
今になって、本当に自分のことが見えてきた。
今更、気付いても遅いけど。。。
はっと気付くと優一が、優しい顔で笑っている。
To be continued