『君戀しやと、呟けど。。。』

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作品bより~『選ぶ道』Ⅰ 新番外篇3

2010-07-31 09:22:38 | 作品b 【掌編】
 空見上げ、漆黒の闇に星を探す。彼奴の好きだった星。
 あれは何て名前だったろう。
『たかが惑星だろ』
 と言った俺に、ふくれっ面の彼奴の頬を思い出す。

 朔。
 何処かで彼奴もこの星を、見上げているのだろうか――。

 芸能人なんて、くそくらえだ。
 辞めたって構わない。
 本気で思ったその思いを、何故、言葉にしなかったんだろう。
 愚かとは、後悔する奴のことだ。つまり、俺…

 二人で擁き合った、最後の夜。
 珍しく彼奴から腕を絡ませた。そして黙って、ただ長い間、見つめ合っていた。
 我慢できなくて、目を逸らしたのは俺。
 あの時、どうして最後まで彼奴の顔を見ていなかったんだろう。

 そうだ。
 恥ずかしさに背けた顔を戻されて、キスされたっけ。

 彼奴は何も言わない、いつも。
 でも何か意味があったんだろうか。
 今となっては、もう聞くこともできない。

 姿を消した彼奴。
 捜す術(すべ)を、俺はもたない――。
                        【終わり】
                          著作:紫草
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