「この匂いがなかったら、憶えていなかったかもしれない」
和人がそう言って、美沙という名のついた香水の小瓶を手に取った。
『俺が、顔を変えてやる』
そう言った彼に、何を期待したというのだろうか。
でも私は彼に縋った。人の中で、最悪の顔を持つ男だと分かっていたのに。
後にレイプ犯の方が、雑誌に載った和人の顔に似せて整形したのだと判ると、今度は和人が激怒していた。
素顔の犯人は骨格が和人に似てた。だから瓜二つと呼べるまでに似たのだと聞かされた。
結局、和人の整形発言は取り消してもらい、私は彼と付き合っている。
誰にも語れない心の傷を、隠す必要のない人。
私を纏った小瓶の香水は、私たち二人の間を今も優しく漂っている――。
【終わり】
著作:紫草
和人がそう言って、美沙という名のついた香水の小瓶を手に取った。
『俺が、顔を変えてやる』
そう言った彼に、何を期待したというのだろうか。
でも私は彼に縋った。人の中で、最悪の顔を持つ男だと分かっていたのに。
後にレイプ犯の方が、雑誌に載った和人の顔に似せて整形したのだと判ると、今度は和人が激怒していた。
素顔の犯人は骨格が和人に似てた。だから瓜二つと呼べるまでに似たのだと聞かされた。
結局、和人の整形発言は取り消してもらい、私は彼と付き合っている。
誰にも語れない心の傷を、隠す必要のない人。
私を纏った小瓶の香水は、私たち二人の間を今も優しく漂っている――。
【終わり】
著作:紫草