『君戀しやと、呟けど。。。』

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『残り香』6

2009-01-31 11:19:20 | 作品b 【掌編】
「この匂いがなかったら、憶えていなかったかもしれない」
 和人がそう言って、美沙という名のついた香水の小瓶を手に取った。
『俺が、顔を変えてやる』
 そう言った彼に、何を期待したというのだろうか。
 でも私は彼に縋った。人の中で、最悪の顔を持つ男だと分かっていたのに。

 後にレイプ犯の方が、雑誌に載った和人の顔に似せて整形したのだと判ると、今度は和人が激怒していた。
 素顔の犯人は骨格が和人に似てた。だから瓜二つと呼べるまでに似たのだと聞かされた。

 結局、和人の整形発言は取り消してもらい、私は彼と付き合っている。
 誰にも語れない心の傷を、隠す必要のない人。
 私を纏った小瓶の香水は、私たち二人の間を今も優しく漂っている――。
                       【終わり】

                             著作:紫草
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