プロポーズ小作戦61
2020年8月
2020年8月初頭
蓬莱島で国際会議が開催された。議題は先日の世界大停電の件である。
どこの国も最初は自国だけと思った。しかし、情報をすり合わせるとほぼ同時に世界中に起きた事がわかった。どこかの機関の謀略を疑う声も大きかったが、今の世界にそれだけのシステムは無い。
わずか2年足らずで形骸化した超合衆国連合であったが、元参加国の間のホットラインはまだ生きていた。
集まったメンバーは世界をリードする政治家達であったが、同時にあの悪逆皇帝に捕虜にされたいた仲間でもある。
会議の前のティールームでは、天子を囲んでほのぼのとした空気が漂っていた。
「大きくなったね」
「いや、それよりもきれいになったよ」
「最近は外にも出られるようになったかい」
「古語もうまく話せるようになったんだね」
白髪頭の多い各国代表が口々に天子に話しかけるのを見て、取材キャスターのミレイは思う。
なんだか、久しぶりに本家の秘蔵孫娘に会えた、分家のおじさん達みたい。
気持ちはわかる。天子は前もかわいかったけど、最近はほんのり色づいて、かわいい以外の魅力も含まれてきている。
あんなにかわいい子の傍にいて、あの男よく理性が持つわね。
星刻は隠しているつもりだが、彼と天子が2重重ねの片思い状態なのは世界中に知りつくされている。
とうぜん、ミレイも知っている。
ミレイ的には心ひそかに、周りから見れば面白がって、応援もしている。
ミレイが知るところによると、ゼロ革命直後は天子をいだくように守っていた星刻だが、このところ妙に距離を置いている。かと思えばジノを天子に近づけさせてみたりと、まるで「私は忠義を捧げているだけで、断じて不埒な感情など抱いていない」と叫んでいるようだ。
ティールームのぽわぽわほのぼのの空気は、冷然とした声で吹き払われた。
その声を聞いた代表の一人は首筋に刃を充てられた気がしたと後に手記に書いている。
「代表の方々は会議室にお移りください」
中華大司馬の声であった。
2020年8月
2020年8月初頭
蓬莱島で国際会議が開催された。議題は先日の世界大停電の件である。
どこの国も最初は自国だけと思った。しかし、情報をすり合わせるとほぼ同時に世界中に起きた事がわかった。どこかの機関の謀略を疑う声も大きかったが、今の世界にそれだけのシステムは無い。
わずか2年足らずで形骸化した超合衆国連合であったが、元参加国の間のホットラインはまだ生きていた。
集まったメンバーは世界をリードする政治家達であったが、同時にあの悪逆皇帝に捕虜にされたいた仲間でもある。
会議の前のティールームでは、天子を囲んでほのぼのとした空気が漂っていた。
「大きくなったね」
「いや、それよりもきれいになったよ」
「最近は外にも出られるようになったかい」
「古語もうまく話せるようになったんだね」
白髪頭の多い各国代表が口々に天子に話しかけるのを見て、取材キャスターのミレイは思う。
なんだか、久しぶりに本家の秘蔵孫娘に会えた、分家のおじさん達みたい。
気持ちはわかる。天子は前もかわいかったけど、最近はほんのり色づいて、かわいい以外の魅力も含まれてきている。
あんなにかわいい子の傍にいて、あの男よく理性が持つわね。
星刻は隠しているつもりだが、彼と天子が2重重ねの片思い状態なのは世界中に知りつくされている。
とうぜん、ミレイも知っている。
ミレイ的には心ひそかに、周りから見れば面白がって、応援もしている。
ミレイが知るところによると、ゼロ革命直後は天子をいだくように守っていた星刻だが、このところ妙に距離を置いている。かと思えばジノを天子に近づけさせてみたりと、まるで「私は忠義を捧げているだけで、断じて不埒な感情など抱いていない」と叫んでいるようだ。
ティールームのぽわぽわほのぼのの空気は、冷然とした声で吹き払われた。
その声を聞いた代表の一人は首筋に刃を充てられた気がしたと後に手記に書いている。
「代表の方々は会議室にお移りください」
中華大司馬の声であった。