石上神宮
こう書いて いそのかみじんぐう と読む。
日本最古の街道と言われている山辺の道のちょうど中程にあり、記紀にも出てくる由緒ある神社だ。
それだけ長い歴史があるのだから、どんな縁起があるのか期待したのだが、いろいろ期待とは異なった。
と言っても、社殿に文句がある訳ではない。赤い塀と楼門に囲まれた奥に鎮座する主殿は檜皮葺で、均整の取れた静謐な雰囲気をただよわせている。
問題は、まず神社への入口が分かりにくい。地図うえでは、天理大の山側に位置しているのだが、森の真ん中に一の鳥居が書かれているきりで、そこにどうやって到達できるのか分からない。
付近の特に南側を回ったが見つからない。
そのうち東側に回ってやっと案内標識が見つかった。国道から曲がりくねったアスファルト道が伸びており、途中で急に玉砂利になり、そこに立派な鳥居がたっていた。ここからが参道になるようだ。
この参道も、真っ直ぐではなく曲がっていた。
次に、境内には10羽ぐらい鶏が放し飼いにされていた。彼らは全く人を気にかけず、鬨の声をあげていた。鶏は所構わず糞をする。清浄であるべき境内で、いいのだろうか。
楼門の前に摂社として出雲建雄神社があるのだがこれがまたおかしい。鳥居が隣の祠との間に建てられ、小階段を登ると敷石が真っ直ぐではなく、斜め左に伸びている。
何故こんなことになったのか。
これは想像だが、昔は「参道は直線であるべき」という常識はなかったのではないだろうか。同じく古い伊勢神宮も、参道は直線ではない。
御守り売場の説明文を見ると、そもそも石上は、主殿の裏に当たる場所で勾玉の原料である玉壁が採れ、その場所自身が神域であった。
社殿や参道、鳥居すらも、後世に取って付けらられたものなのだろう。そう考えると、何となく納得がゆく。
ところでこの神社、由緒や祭神が書かれた、あの立て札がない。
Wikipediaで調べたところ、主祭神はフツノミタマ。ご神宝フツノミタマの剣に宿る神霊であるとのこと。神話に出てくる神様でないところもこの神社らしい。
古代の宗教は、僕らが普段目にするような形式を備えていない。
この奈良には、まだまだ面白いものがありそうだ。