審議は1994年2月28日に第一回会合を開き、1994年8月12日に報告書を完成させた。
報告書は、
多角的な安全保障協力をメインに、日米安全保障協力関係の機能充実、信頼性の高い効率的な防衛力の維持と運用など、ありきたりな提言している。
その具体的な内容は
自衛隊コンパクト化という情勢判断を見誤った提言、
ごくありふれて当然である機動力向上、海上交通輸送路の防衛、テロ、弾道ミサイル防衛、
そして国連平和維持活動、平和維持軍凍結解除など時流に乗ったもの、
安全保障対話の推進、アメリカとの政策協議と情報交流の充実、アメリカ軍との運用面における協力体制の推進、後方支援における相互協力体制の推進、装備面での相互協力の促進、駐留アメリカ軍に対する支援体制の改善
など従来からの問題点を主張しているにすぎない。
具体的施策として、
CキューブドIシステム(指揮・統制・通信・情報)の充実、統合運用体制の強化、機動力と即応能力の向上という当然の提言、
現行約27万4000人から24万人程度への縮小という結論ありきの提言、
画一的な師団編成から多機能的な部隊に再編成(陸上防衛力)、
対潜水艦戦、対機雷戦重視から、よりバランスのとれたもの(海上防衛力)、
戦闘機の削減という現実無視の提言(航空防衛力)、
空中給油機能・長距離輸送能力の検討(航空防衛力)、
弾道ミサイル対処システムのアメリカとの積極協力、
防衛力の弾力性の維持
などをあげている。
対テロ・ゲリラ・コマンド戦など多様化する危機に対処するにはマン・パワーが重要であるが、結局は軍縮傾向政策に沿い、対テロ・ゲリラ・コマンドには不向きな人員削減を提言している。
これは戦闘機の削減にも言えることで、中国軍の航空戦力、海上戦力の大幅な強化という情勢があるにもかかわらず戦闘機は削減することになっており、航空防衛力の低下が懸念される。
一方で空中給油機の導入は検討にとどまっており、戦闘機削減に相応する航空防衛力の維持に懸念を残した。
長距離輸送能力も検討にとどまり、国連平和維持活動の増加や迅速な部隊展開に必要な機動力の強化につながっていない。
海上防衛力の対潜水艦戦重視からの転換は、1個護衛艦群あたり対潜哨戒ヘリコプター護衛艦(DDH)2隻・防空ミサイル護衛艦(DDG)1隻体制から、対潜哨戒ヘリコプター護衛艦(DDH)1隻・防空ミサイル護衛艦2隻(DDG)体制に転換した海上自衛隊実情に沿っただけものである。
防衛力の弾力性の維持といわれているものの、日本の防衛力は、実際は硬直したままであった。