この絵本、初版は1965年。村山知義の重厚で愛らしい絵も素晴らしく(1)、小学校の教科書でも紹介されているが(2)、意外なことに、作者は中国人である。
雪深い山の中を舞台に、同じことが繰り返されるシンプルなストーリー展開は、昔話のスタイルそのものだ。だから中国・昔話の再話か、と思ったら、違った!
現代の作家・方 軼羣FangYigun(1914- 2007 )による、オリジナル童話である。
原作「萝卜回来了」は、1956年に中国で発表された後(3)、日本語・フランス語・英語で、それぞれ絵本となった。「現代作品として中国国外で絵本化された、数少ない作品」と評されている(4)。確かに、1960年代に中国人の作品が絵本化されるなんて、日本でもフランスでも、稀有なことだっただろう。
英語版は、raddish is back! (カブが戻ってきた!)、このカブは赤い。
日本語版では、白いカブ。
フランス語版は、カブではなく、ニンジン!
それぞれに、タイトルも、絵の印象もまったく違う(下図参照)。
「これ、ほんとに全部、同じ話?!」と、びっくりする。
しかし、このお話は普遍的だ。
子どもたちは「しんせつ」である。その「しんせつ」が連鎖する時、世界は平安である―そのことが、短いストーリーで描き出される。
新約聖書の中で、イエス様は、幼子たちを抱いて
「神の国は、このような者たちのものなのです」と言われた(マルコによる福音書10・14)。
このような「しんせつ」を素直に実行できる幼子たちの間に、神の国は存在している。
日本語版は、初めての「読み聞かせ絵本」として、本当におススメです!
ぜひ、学校教科書での出会いを待たずして、読み聞かせてあげてください。
1.中国語版として、逆輸入もされた。
2.三省堂「しょうがくせいのこくご 二年」平成27年度版、他。
3.中国では、早くも1959年に短編アニメ化(約17分)されている。動物たちのしぐさや声がとても愛らしく、この時代にこのクオリティー⁉と驚かされる。冒頭の長めの広告を我慢するだけの価値はあります(笑)。https://v.qq.com/x/cover/rqj3oduhqgkmxba/g0018tzaj0b.html
4.https://www.babelio.com/auteur/Yiqun-Fang/552377