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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「にんじんケーキ」 ナニー・ホグローギアン:作 乾侑美子:訳 評論社

純愛物語の、その後

ご存じでしょう、有名な絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」。まっしろでふわふわで美しい白うさぎと、まっくろでつやつやの黒いうさぎの超・純愛物語!! 「愛とは、こういうものらしい。恋の結末は、こうあるべきだ」と、幼な心に強烈に植え付けてくれた、あの美しい絵本。うっとりと、ページをめくった覚えのある方も多いはず…

だが、しかーしっっ!「しろいうさぎとくろいうさぎ」よ。

君たちが、そこで終わったはずはない。続きがあるでしょう?純愛の、その続きが!

それで? 結婚したあと、二人で暮らし始めて、で、あなたたち、どうなりました?…そこが知りたいんですよ。特に、大人になった私たちは。おそらく、結婚に疲弊する親たちを、冷めた目で見ている子どもたちも。 

この「にんじんケーキ」は、その続編として、ぴったりです。作者も、うさぎの毛色も違いますが。この物語は、二匹が晴れて夫婦になるところから始まるのです。

初めから、何もかも完璧、隙がない、非の打ちどころのない結婚、だった、はずが…

正統な内容が、正統な語り口で語られていくうちに、くすっと笑わされ、笑わされ続け…。そして本当に、しみじみ、身に沁みます。ふたりが共にいることの、むずかしさ。コミュニケートしようとすればするほど、ディス・コミュニケーションがむき出しになり…もう、勘弁してよ~。

よく「対話が大切」と言いますが、実は対話ばかりでは、話は進まないものです(笑)。妻がさりげなく、押し付けられる女性の役割に反発しているのも、愉快です。

なーんて、大人ぶった解説は不要でした、ごめんなさい。とにかく面白くて、笑えます。

結婚という暴挙にトライする二人の、新居の本棚に置いてあげたい絵本です。

ちなみに、冒頭。両家の母親が、新婦・新郎に贈る言葉*が、これまた正統派でして。人間の結婚式でもよく引用されるのですが、ウサギの親たちも、聖書のパウロの言葉を、ちゃんと知ってるんですねぇ。

*新約聖書 エペソ人への手紙5章22~33節 5分で読めます。

 

 

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