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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「わにになった子ども」                    シンシア・ライラント:文 ダイアン・グッド:え こしば・はじめ:訳 新樹社

ボディスーツは、いかが?

うちの二番目の子が、幼かった頃。
「この子には、高性能のボディスーツが必要…!」と、いつも思っていた。
超・感覚過敏だったのだ。

朝の光が「まぶしい~」と言って泣き、そよ風がカーテンを揺らせば「うるさいっ」と嫌がる。冷蔵庫のかすかにうなる音が変化するのを聞き分けて、「こ、こわい~」と泣き出す。パジャマが肌に触れただけで「冷たいーっ!」と、絶叫して裸で逃げ出す。
「(洗剤の匂いが残っていて)このお皿は臭い」と、突き返す…。
いつも不機嫌な子どもだった。

5才くらいだったか。台所で「玉ねぎを切りたい」と言い出した。仕方なく、イスの上に立たせ、水泳用・ピンク色のゴーグルをはめ、両鼻にティッシュを詰めて、やらせてみた。本人は上機嫌だったが、私は疲れた。

それでも、高校生になった今は、本当に本当に、マシになった。必要に応じて、自分で「見えない高性能ボディスーツ」を着脱する術を身に着けたらしい。玉ねぎを切る時は、死なない程度に息を止めている。カーテンは自分で閉めに行く。いつのまにか、遮音用耳当ても、耳栓も、使わなくなった。感謝な日々。

さて、この絵本。幸運にも「超・高性能ボディースーツ」を手に入れた男の子のお話しです。うちの二番目にも着せてやりたかったです。これだけの長さがあれば、お友だちとの距離感も、うまく取れたことでしょう。というか、友達も不用意には近づけず、遠巻きに見守ってくれたことでしょう。
…あぁ、熱心でまじめな学校の先生たちも、きっと!

ライラントの生い立ちは、自伝的絵本「わたしが山おくにすんでいたころ」(ゴブリン書房)に詳しいのですが、田舎の大自然の中で、のびやかに育った人です。この絵本は、そんな彼女から、キチキチした都会の学校教育に何とな~くなじめない子どもへの、軽やかな提案のように思われました。
 
ー感覚過敏とか、発達障害とか、今どきの呼び方は、さておいてー
キチキチになじめない子どもたちと、その親たちへ。
とりあえず学校をやりすごすための、軽やかな提案。
「こんなボディスーツは、いかが?」と。
「こんなボディスーツが必要な子どもだ、と、思いませんか?」と。

ついでに。ライラントの作品には、他にも短編「ヴァン・ゴッホ・カフェ」(偕成社)が、めちゃめちゃしびれます!大人にもおすすめです。

 

 
 
 
 


 
 
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