令和4年度の活動はなぜか雨にたたられることが多く、10月15日にようやく今年度第2回の古道歩きを行うことができました。
今回は、松崎町の岩科の街道と村みちを歩き、そこに残された歴史や生活の跡を眺める古道歩きを計画しました。行きはバスで岩科の奥まで移動し、歩いて帰ってくるという楽ちんなコースです。
集合は旧岩科学校の駐車場です。今回は6人のメンバーが参加しました。
この日は岩科幼稚園の運動会が行われており、賑やかでした。
午前9時9分の東海バスに乗り、7分間ほど走って終点「八木山」で降ります(汗)。
さっそく歩き始めようと思ったのですが、久しぶりに会ったメンバーさんたちは話したいことがたくさんあるのでしょう。おしゃべりに夢中で、私が話し始めるタイミングがつかめません。
まあ、予定に縛られず、のんびり話ながら歩くのもよいですね。皆さん退職して、仕事に追われない自由な身なのですから。
松崎町はかつて養蚕で栄えた町です。生糸の原料にする蚕の繭の品質基準を決める時に、松崎町で採れる繭を基準にしていた、という話は有名です。
ですから、当時からの民家には蚕のための換気口である箱棟が残っていることがあります。
この屋根裏でたくさんの蚕を飼って、繭をとって出荷していたのです。屋根裏部屋だけでなく、蚕を育てる季節には人間の部屋でも蚕を育て、人は台所などで寝た、という話をメンバーさんがしてくれました。
八木山橋から川を眺めると、河原に降りる石段が見えます。この辺の人たちが野菜を洗うなどの仕事に川を利用していた名残だと思います。
ある家の脇に、こんな石が置いてあります。穴が二つあいているので、何かに使っていたのでしょう。みんなで推理してみましたが、何か錘のように使っていたのではないか、という話にまとまりました。
畑の石垣には、こんな工夫がしてあります。私が下見に来た時には気づかなかったので、びっくりしました。
八木山の八幡神社に来ました。ちょうど地域の方々が清掃活動をしていました。「本殿の屋根を改修しているところだから、中を見ていきなさいよ。」と勧められたので、拝観しました。立派な木の祠にお札が納められているようでした。
しばらく歩くと、民家の庭に大きな岩があり、その上にいくつかの石造物がのせてあります。
ちょうどその家のお母さんが出ていらしたので、話を聞きました。
「あの石塔はね、どこか泥棒に入られた家があると逆向きに縄をなって、その縄でぐるぐる巻きにして、どうか泥棒にバチが当たるように、と呪ったんだよ。」と教えてくれました。
そんな風習があったんですね。ホントに空き巣犯にはそんなことはやめてほしいです。
次にお寺を訪ねました。こちらは由緒ある大きなお寺で、ここから分かれたお寺が近くにいくつもあるそうです。
境内には立派な宝篋印塔や日清日露戦争の忠魂碑などが並んでいます。
すると何という奇遇でしょう、メンバーさんのお知り合いの管理人さんがいらして、裏の庭などを案内してくださいました。
「本堂の縁側に腰かけて山門越しに山を眺めると、とてもよい景色で、私は好きなんです。」というお言葉に、この地域の美しさを改めて知る思いがしました。
桑原の旧道に来ました。立派な屋根を持つ大きな民家が並んでいます。岩科の中で一番美しい道がここではないでしょうか。
県道から川を眺めると、製糸工場があった土地が見えました。かなり大きな工場だったものの、関東大震災による火災が原因となり、廃業したとのことです。工場跡が残っている頃は、川から水を取り入れるパイプにズガニが住んでいたので、学校帰りの小学生はそのカニを採って帰ったそうです。
休憩は、県道の拡張工事を行った際に集められた石造物群の前で。ミカンを貰って食べる、このひと時が楽しみであります。
再び県道から旧道へと入り、山裾に広がる棚田やなまこ壁の建物などを見ました。
畑仕事をする人と挨拶を交わすとたいてい「どちらから来ましたか?」と尋ねられます。そんなプチ交流も楽しいものです。
三叉路に祀ってあるのは、サイの神様でしょうか?
峰の集落に来ました。橋の袂から小径が分かれており、小川を渡っています。
メンバーさんが「これは、橋というよりここで洗濯をしたのではないかしら?」と言うので地元の人に聞いてみると、
「ここは山からきれいな水が流れてきているから、洗濯場にしていましたよ。」という答えが返ってきました。
まさにその通りでした。人生経験というのは素晴らしいものだと思いました。
峰の街道には昔を偲ばせる家屋や塀が残っています。
「この塀はなぜ後からかさ上げした跡があるのかな?」
「路面を上げる工事をしたから、それに合わせて積んだんじゃない?」などと、ブラタモリみたいな推理するのも楽しいです。
立派ななまこ壁の民家は必見です。
稲刈りを済ませた田んぼの間を通って、山裾にある津島神社を訪ねました。
ここには松崎が生んだ彫刻の名工、石田半兵衛の作品「雌獅子」が保管されています。
街道を見下ろす景色を前にして、ひと休みしました。
さあ、終点の岩科学校はもうすぐです。
山裾と田んぼとの間を行く細い道は、元からあった古い道を舗装したのだと思います。
とてもきれいに庭を造ってある家や、お寺か? と思われるようなお屋敷があります。
近年、注目を集めているアサギマダラを呼ぶためのフジバカマを植えている家があり、一頭のアサギマダラが花に止まって大きな羽をゆらゆらさせていました。
ちょうど町の午後0時のチャイムが鳴った時に、出発地点の岩科学校に着きました。みんなでなまこ壁の立派な校舎を見ながらお弁当を食べながら、話に花を咲かせてさらに交流を深めました。
案内人鈴木は帰りに町の観光協会近くにあるなまこ壁通りに寄り、花飾りがされた様子を見て帰りました。フジバカマが満開になる頃は、たくさんの人々で賑わうにちがいありません。