レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討 No4
4.「学びの多様化学校」とは
不登校特例校の呼び方を公募して「学びの多様化学校」に決まったという。そもそも、「多様化学校」とは何なのか。
「多様」とは、いろいろ違った様子、いろいろと種類の違ったものがあること、さまざま、という意味で、「化」は変化を表し、前の状態と違ったものになる(変わる)、という意味がある。「多様化」とは、様式や傾向がさまざまに分かれる(変化する)ことをいう。
「学びの多様化」とは、「学び方がいろいろな様式や傾向など多くの種類に分かれること」ということで、「学びの多様化学校」は、「学び方がいろいろな様式や傾向など多くの種類に分かれる」、つまり、「いろんな学び方がある学校」ということになる。
「学びの多様化学校」は不登校特例校の新しい名称で、不登校の子どもを対象にした、不登校に特化した学校である。その特徴は、教育課程の基準によらずに「特別の教育課程」を編成して実施できる学校である。午後からの始業でもよく、授業時間数も減らすこともできるし、教育課程も柔軟に編成できるようだ。
「学びの多様化学校」とは、「好きなことを好きな時に学んでよい学校」とか、「行きたいときに行って勉強ができる学校」とか、「自由な学校」という風に、いろいろなイメージが浮かんでくる。ほんとうに「一人ひとりの子どもに寄り添い、一人ひとりを大切にし、一人ひとりに合った学び方ができる学校」であればいいと思うのだが。果たしてどうだろか。
私は、不登校の子どもたちの学びの場、学習できる場ができること、増えることは望ましいと思う。しかし、いくつか危惧することがある。
子どもたちが学校に行けなくなるのは、「友達関係(いじめ)」「勉強についていけない(わからない)」「先生との関係」などが主な原因・要因である(不登校に関する実態調査、2020年文科省)。このような原因・要因が「学びの多様化学校」では無くせるというのか。あるいは、そのようなことを抱えている子どもたちだから、基準を緩和するというのか。
不登校特例校、教育支援センター(適応指導教室)や民間支援団体・施設は、不登校の子どもたちの居場所や学びの場としてこれまでも存在してきた。しかし、文科省も認めている通り、不登校の子どもたちの多くは不登校対策・施策を利用していない。2022年、不登校の子どもたちの36.3%がどの相談施設・機関も利用していない。教育支援センターの利用は10.3%、フリースクール等の民間団体・施設の利用は3.7%である。ちなみに、2016年「不登校特例校」9校の在籍者数は729人であった。不登校対策・施策を利用できているのは限られた子どもたちであって、多くの子どもたちは施策と無縁の状況にある。「COCOLOプラン」では全国に300校の「学びの多様化学校」を作るという。単純に考えて、不登校30万人に300の学校、1校当たり1000人の子どもである。誰だけの子どもが利用するだろうか。他にも学習支援センターや校内支援センター、あるいは、端末を利用したオンライン、などなど学ぶ場や機会は作ったとしても、子どもたちは利用できる状況(物理的にも、心理的にも)にあるのだろうか。
さらに、もう一つ、今現在不登校の子に学びの場が保障されたとしても、これから不登校になる子どもたちもいる。大事なのは、これから不登校になる子どもを作らないことではないか。「学びの多様化学校」が不登校の子どもたちの学びを保障できるというのなら、今在る学校全てを「学びの多様化学校」にすればいいのではないか。そうすれば、不登校は生まれないのでは。