レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討 No6
6.不登校対策の背景(名ばかりの有識者会議)
2023年3月31日、「新しい不登校対策」が発表された。これは2022年の文科省の有識者会議「不登校に関する調査研究協力者会議」がまとめた対策のコピーであって、何ら新しいものではない。すでに指摘したように名称を「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」とし、装いを変えただけである。
2022年不登校が30万人を数え、国会でも不登校問題が取り上げられ、文科省は対策を迫られた。有識者会議は「報告書」をまとめ、その役割を終えたにも関わらず、急遽、2月に再招集された。議論されたのはたった一回の数十分であった。そして、3月31日に「新しい不登校対策」が発表され、後に、「COCOLOプラン」と名付けられた。有識者会議が単なる手続き・セレモニーだったことがわかる。
有識者会議とは何か。ほんとうに不登校問題解決のために話し合われる場なのか。次の資料を見ていただきたい。
(4)義務教育を全ての児童生徒に実質的に保障するための方策
①不登校児童生徒への対応
・SC・SSWの配置時間等の充実による相談体制の整備、教育支援センターの機能強化、不登
校特例校の設置促進、教育委員会・学校とフリースクール等の民間の団体とが連携した取組
の充実、自宅等でのICT活用等多様な教育機会の確保など、学校内外において、個々の状
況に応じた段階的な支援
・児童生徒の支援ニーズの早期把握、校内別室における相談・指導体制の充実等の調査研究
②義務教育未修了の学齢を経過した者等への対応
・すべての都道府県・指令都市における夜間中学校の設置促進
・専門人材の配置促進による夜間中学の教育活動の充実や受入生徒の拡大
これは、2021年1月16日の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築
を目指して」の第Ⅱ部各論の一部である。読んでわかるように「新しい不登校対策」そのも
のである。この時点で中教審は文科省に対して答申している。第1回「不登校に関する調査
研究協力者会議」は2021年10月6日に開かれた。協力者会議は6回開催されたが、そ
の内容は、まさに答申のいう「校内別室における相談・指導体制の充実等の調査研究」であり、
各委員が事例について発表する形で行われた。
不登校対策は既に中教審が示し、協力者会議は支持された項目を事例にて補完するだけで、不
登校について。不登校問題や対策について話し合い、議論する場ではないようである。事実、協
力者会議において、委員から文科省提出の調査資料について疑義が出たにもかかわらず、なん
ら取り合われず、会議は進められた(不登校問題の本質に迫るような内容だったが)。協力者会
議は議論をしたり深め合ったりする場ではなかったようだ。
つまり、不登校対策の内容は中教審で示され、協力者会議は一部内容を補完しているに過ぎ
ない。たった5回の会議で、事例の報告だけで、議論もなく、報告書がまとめられていくのに
は、こうした背景があり、会議の方向や内容を着て、事例以外の資料を作成し、報告書をまと
めていくのは文科省の役人(官僚)である。すでに決まったレールの上を約束通りに進んで行
くのが協力者会議である。(異論を挟んだり、議論したりする場ではないようだ。)
それは、あたかも、有識者や専門家の了承のもとに対策(政策)が決まっているという形を
とっているに過ぎない。
次は、中教審について考えてみたい。