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レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討 No4

2024-05-16 15:47:41 | レポート

レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討     No4

4.「学びの多様化学校」とは

 不登校特例校の呼び方を公募して「学びの多様化学校」に決まったという。そもそも、「多様化学校」とは何なのか。

「多様」とは、いろいろ違った様子、いろいろと種類の違ったものがあること、さまざま、という意味で、「化」は変化を表し、前の状態と違ったものになる(変わる)、という意味がある。「多様化」とは、様式や傾向がさまざまに分かれる(変化する)ことをいう。

「学びの多様化」とは、「学び方がいろいろな様式や傾向など多くの種類に分かれること」ということで、「学びの多様化学校」は、「学び方がいろいろな様式や傾向など多くの種類に分かれる」、つまり、「いろんな学び方がある学校」ということになる。

「学びの多様化学校」は不登校特例校の新しい名称で、不登校の子どもを対象にした、不登校に特化した学校である。その特徴は、教育課程の基準によらずに「特別の教育課程」を編成して実施できる学校である。午後からの始業でもよく、授業時間数も減らすこともできるし、教育課程も柔軟に編成できるようだ。

「学びの多様化学校」とは、「好きなことを好きな時に学んでよい学校」とか、「行きたいときに行って勉強ができる学校」とか、「自由な学校」という風に、いろいろなイメージが浮かんでくる。ほんとうに「一人ひとりの子どもに寄り添い、一人ひとりを大切にし、一人ひとりに合った学び方ができる学校」であればいいと思うのだが。果たしてどうだろか。

私は、不登校の子どもたちの学びの場、学習できる場ができること、増えることは望ましいと思う。しかし、いくつか危惧することがある。

子どもたちが学校に行けなくなるのは、「友達関係(いじめ)」「勉強についていけない(わからない)」「先生との関係」などが主な原因・要因である(不登校に関する実態調査、2020年文科省)。このような原因・要因が「学びの多様化学校」では無くせるというのか。あるいは、そのようなことを抱えている子どもたちだから、基準を緩和するというのか。

不登校特例校、教育支援センター(適応指導教室)や民間支援団体・施設は、不登校の子どもたちの居場所や学びの場としてこれまでも存在してきた。しかし、文科省も認めている通り、不登校の子どもたちの多くは不登校対策・施策を利用していない。2022年、不登校の子どもたちの36.3%がどの相談施設・機関も利用していない。教育支援センターの利用は10.3%、フリースクール等の民間団体・施設の利用は3.7%である。ちなみに、2016年「不登校特例校」9校の在籍者数は729人であった。不登校対策・施策を利用できているのは限られた子どもたちであって、多くの子どもたちは施策と無縁の状況にある。「COCOLOプラン」では全国に300校の「学びの多様化学校」を作るという。単純に考えて、不登校30万人に300の学校、1校当たり1000人の子どもである。誰だけの子どもが利用するだろうか。他にも学習支援センターや校内支援センター、あるいは、端末を利用したオンライン、などなど学ぶ場や機会は作ったとしても、子どもたちは利用できる状況(物理的にも、心理的にも)にあるのだろうか。

さらに、もう一つ、今現在不登校の子に学びの場が保障されたとしても、これから不登校になる子どもたちもいる。大事なのは、これから不登校になる子どもを作らないことではないか。「学びの多様化学校」が不登校の子どもたちの学びを保障できるというのなら、今在る学校全てを「学びの多様化学校」にすればいいのではないか。そうすれば、不登校は生まれないのでは。

 


レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討 No3

2024-05-09 11:49:52 | レポート

レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討         No3

3.「COCOLOプラン」の概要

 では、「COCOLOプラン」とは、いったいどのようなものか。2023(令和5)年3月31日に文科省が出した通知「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について」には、「目指す姿」として次のようにまとめている

1.不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えま 

す。

✓一人ひとりのニーズに応じた学びの場が確保されている

  ・不登校特例校、校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム)・教育支援センター等、こども  

家庭庁と連携し多様な学びの場、居場所を確保

✓学校に来られなくてもオンライン等で授業や支援につながることができる

✓学校に戻りたいと思った時にクラスを変えたり、転校したりするなど本人や保護者の 

希望に沿った丁寧な対応がされている

2.心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援します。

 ✓1人1台端末で小さな声が可視化され、心の不安や生活リズムの乱れに教師が確実に

気付くことができる

 ✓小さなSOSに「チーム学校」で素早く支援することにより、早期に最適な支援につな

げられている

 ✓教育と福祉が連携し、子供や保護者が必要な時に支援が行われる

  ・子ども家庭庁と連携し自治体の教育部局と福祉部局等の連携・協働を強化

3.学校の風土の「見える化」を通して、

  学校を「みんなが安心して学べる」場所にします。

 ✓それぞれの良さや持ち味を生かした主体的な学びがあり、みんなが活躍できる機会や

出番がある

 ✓トラブルが起きても学校はしっかり対応してくれる安心感がある

 ✓公平で納得できる決まりやルールがみんなに守られている

 ✓障害や国籍言語等の違いに関わらず、色々な個性や意見を認め合う雰囲気がある

 

具体的には、

〇「学びの多様化学校(不登校特例校)」の増設

〇校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)、教育支援センター等の強化

〇一人台端末の利用

〇「チーム学校」(教師・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー・養護教諭・学校医等)での支援

〇学校と地域・関係機関との連携・協働

〇学校を「みんなが安心して学べる」場所に(1人1台端末の利用・いじめへのき然とした対応・等)

である。

 

これらの支援は、これまで行われてきた支援と全く同じである。ただ、

〇これまで遅々として進まなかった不登校特例校を「学びの多様化学校」と名称を変更し、

300校という数値目標を設けたこと。

〇各自治体取り組んできた「適応指導教室」を教育支援センターという名称にしたこと。ま

た、小学校や中学校で取り組まれていた「別室」あるいは「保健室」「相談室」での指導・支援を「校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム)」と名称を付けて、2024年度には5億円という予算措置をしたこと。

〇また、こども家庭庁を一緒に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進 

本部」が設置されたこと。

などが、これまでとは違った対応になっている。

 「COCOLOプラン」を見てみると、ようやく本腰を入れて不登校対策に取り組もうとしているかのように見える。しかし、不登校の子どもたちが30万人を超え、文科省が取り組んでいた不登校対策を多くの子どもたちが利用さえしていない状況が明らかになり、やむを得ず、「新しい不登校対策」を講じなければならないまでに追い込まれたのである。

 しかし、「COCOLOプラン」の内容は、これまでと同じ中身である。さて、どれほどの効果があるだろう。それは、すぐに明らかになるだろう。

なぜなら、子どもたちが学校に行けなくなるのは、子どもや家庭に課題があるからではなく、学校教育や教育制度に問題があるからであり、それを子どもたちが拒んでいるからであるという不登校問題の本質から目を背けた対策になっているからである。(私レポート「不登校問題の本質」参照を)

 

「COCOLOプラン」に関して、まだいくつかの点を指摘しなければならない。さらに、批判的検討を進めたい


水曜塾 5月の開催日

2024-05-08 09:08:05 | お知らせ

不登校・ひきこもりの人たちの居場所水曜塾

5月の開催日

日 時  1日、8日、15日、22日の各水曜日に行います。

     午後1時から4時までです

      (29日は都合により休みとさせていただきます。)

場 所  亀岡市総合福祉センター

持ち物  自分で考えて持ってきてください。

連絡先  090-9706-9431(野中・携帯)

水曜塾は、誰でも自由に参加できます。

予約は不要です。関心のある人は来てください。

 


レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討 No2

2024-05-08 09:04:06 | レポート

レポート 新しい不登校対策「COCOLOプラン」の批判的検討         No2

2.「COCOLOプラン」について

 先に「学びの多様化学校(不登校特例校)」について言及したが、改めて、文科省の新しい不登校対策「COCOLOプラン」」とは何か、見てみよう。

(1)「COCOLOプラン」取りまとめの背景

小・中・高等学校の不登校児童生徒が約30万人になり、90日以上の不登校の小・中学生4.6万人が何らの相談・指導も受けていない(2022年度)状況あるという認識の下、

「COCOLOプラン」を取りまとめるにあたって、文科大臣は、

「私は、不登校により学びにアクセスできない子供たちをゼロにすることを目指します。

そして、子供たちに、「大丈夫」と思っていただけるよう、徹底的に寄り添っていきま

す。このため、教育行政の責任者として、私は、

 1-不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える

 2-心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する

 3-学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする

ことにより、誰一人取り残されない学びの保障を社会全体で実現していきます。」 

 そして、一人ひとりに応じた多様な支援を行い、不登校となっても学びを継続し社会で活躍できるよう、取り組んでまいります、と述べている。

 まさに不登校の子どもたちに寄り添い、思いやりのある支援策のように思える。しかし、不登校30万人、無支援児童生徒4.6万人は不登校の状況を表しているだけである。そこからは不登校の子どもたちに対する不憫さや同情しか生まれて来ないだろう。そうして生まれてきたのが「COCOLOプラン」である。不登校の子どもたちの学びの場の確保と言い、誰一人取り残されない学びの保障とは言っても、不登校を無くすとは言っていない。そこに、「COCOLOプラン」の限界があると言えるだろう。

2024.5.8 野中

 


不登校を考える親の会「こぶしの会」

2024-05-07 14:34:10 | お知らせ

不登校を考える親の会「こぶしの会」

5月の開催日

日 時 2024年5月18日(土) 午前9時30分から11時30分まで

場 所 ガレリア亀岡2階和室研修室 (亀岡市余部町宝久保1-1)

参加費 300円(会場費)

連絡先 090-9706-9431(野中 携帯)

「こぶしの会」は、誰でも、自由に参加できます。お子さんの登校渋りや不登校に悩んでいる方、ぜひご参加ください。一人で悩まないで、一緒に話し合いましょう。