やぎの宇宙ブログ

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エンセラダスのジェット噴出口

2010-03-07 22:48:39 | オリジナル画像
No.395 2010/3/5作成

Vent Positions on Enceladus

大分時間と労力がかかりましたが、エンセラダスの南極地域から噴出するジェットの噴出口の立体的な位置を、画像から計算してみたのでご紹介します。

昨年11月21日、NASAの土星探査機カッシーニが、土星の衛星エンセラダスを接近観測しました。
上の画像は、撮影されたエンセラダスの南極地域の画像を組み合わせたモザイク画像で、No.394で紹介した画像と同じものです。
この画像から数列の帯状の領域からジェットが噴出していることが分かります。
これらは、過去のカッシーニの観測で発見されている「タイガーストライプ」と呼ばれる4本の平行な溝に対応していると考えられます。
しかし、この画像だけでは地平線近く、あるいはその向こう側に見えているジェットも列に沿って分布しているのか、それとも外れた場所に位置しているのかが分かりません。

実は今回の観測では、カッシーニは位置を変えながらエンセラダスの南極地域のジェットを撮影しています。
私達が右目と左目で物を見てそのずれの大きさから奥行きをはかるのと同じ原理で、異なる方向から撮影された画像上でジェットの位置がわずかにずれます。
この現象を視差と呼びますが、これを各画像でのジェットの位置を比べることによって測定し、そこから奥行き方向の位置を特定してみました。

上の画像でA~Wのラベルをつけたジェットについて調べてみました。
この画像だけでもC~G、O~Rは連なって列を作っていることがわかります。
下の画像が、視差から推定した奥行き方向の位置を表したものです。
上に行く程遠く、下に行く程近いことを示しています。
楕円の大きさは大まかな誤差を表しています。
太く淡いジェットは視差の測定が難しいため、特に奥行き方向の誤差が大きくなっています。
この画像により、上の画像では分からない奥行き方向のジェットの位置関係が明らかになったと思います。
少なくとも3本の列を作っており、その列から大きく外れたジェットは確認されませんでした。
ちなみに、ジェットAは一つの画像にしか写っていなかったため視差を測定できませんでした。
しかし、画像上の位置から第4の列の存在を示していると思います。
今回の分析結果は、ジェットがエンセラダスの溝に沿って噴出しているとするこれまでの観測結果と一致しています。

過去のカッシーニによる観測で、ジェットはガスや細かい氷の粒、少量の塩から成っており、噴出口は比較的高温であることが確認されています。
エンセラダスの南極地域では、現在もこのような活発な活動が続いているのです。
エンセラダスは太陽系の中でも最も白い物質で覆われており、恐らく雪のように細かい氷の粒で覆われていると考えられていますが、これもジェットから噴出した氷の粒が降り積もったものと考えられます。
タイガーストライプ以外にも、新旧数多くの亀裂や溝で星全体が覆われており、ごく一部を除いてクレーターが少ないのが特徴です。
また、エンセラダスから放出された氷の粒は土星の周囲をドーナツ状に囲み、Eリングを形成していると考えられています。

元の画像:NASA/JPL提供


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すごい! (通行人)
2010-03-12 20:53:39
画像からジェットの位置まで特定しちゃうなんて大変だったんじゃないですか。
これはつまり縦軸が奥行きを示してるんですか。
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通行人様へ (管理人やぎ)
2010-03-14 12:57:08
コメントありがとうございます。

今回は画像処理よりもデータ処理に苦労しました。
精度は低いので、位置の特定というより、おおよその位置関係が示せたと思います。

縦軸はおおまかには奥行きを示しているんですが、実際には視差の大きさを表しています。
視差が十分小さいときは、距離は視差に反比例します。
実際の距離を求めるには、撮影時のカッシーニと被写体の位置情報が必要ですが、手元にそれらのデータがないので、視差の大きさを縦軸にしています。
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