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闇の精霊の声で目を覚ますと、岩がむき出しの薄暗い洞窟のようなところにいた。クラクラする頭を押さえながら辺りを見回した。どこからかランドの声が聞こえた。いきなり体が吹き飛ばされた。暗闇に慣れていない目をこらしてなんとか状況を把握しようとする。ガリガリという音とともに、黒い影が近づいてきていた。
ショックで震える四肢をなんとか動かして、剣を抜き盾を構える。すぐさま衝撃が来た。だが対処できないほどではなかった。剣を振るう。正体不明の敵は硬い体をしていたのか、剣が当たると火花が散った。そこに浮かび上がったのはヤドカリかカニか。舐めるな。
次々に襲ってくる黒い影。どうやら奥の岩の割れ目から湧き出しているらしい。私は突っ込んできた影を蹴飛ばして、その隙間を駆け抜け、岩の割れ目に向かった。そこにはひときわ大きなカニの影があった。
まんまと罠にはまった不甲斐なさや、わけもわからず攻撃を受けているこの状況への苛立ちが、この時に急激に膨れ上がった。縦横無尽に、いや、暴れ回る気持ちをそのままに剣をたたきつけた。何度も、何度も。
ガギッという衝撃で、割れ目の岩に私の剣がめり込んだことに気づき、私の周りの脅威はひとまず消滅していた。
ランドの声が聞こえていた方はこの割れ目の奥からだった。漆黒の闇に足を向け、少し経つとランドとジョルダインの姿が見えた。ランドが、外の空気の匂いがするという方へ私たちを導く。
だがたどり着いたのは瓦礫で埋まっている水の湧き出ている場所。ランドは間違いなくここだという。その時、岩の一部が動き、金色の眼が煌めき、竜の咆哮が響く。
「マクタナン! お前を導く二人がやってきたぞ!」
そんな声が洞窟のが岩に反響した。振り向くと、宗教がかった衣装の男が目を見開いて興奮していた。ヤツがダフマンか。どうやら太古の混沌に乗っ取られているようだった。
事の次第を問い詰めている中、唐突に、ジョルダインが言った。
「結局、一人しかたどり着けないのか…」
その瞬間、ジョルダインの纏っていた空気がガラリと変わった。まさか。そう思いながらも私は剣を抜いた。気を失っているランドに剣を突き立て、君と仲間であるわけがない、カルフェオンを許すわけにはいかない、君を倒せば自由になれる、ジョルダインはそう言って、ベルモルンの闇の力を私にぶつけてきた。
何かがおかしい。そう感じてもそれが何かはわからなかった。ジョルダインは容赦のない攻撃を仕掛けてきた。赤黒い魔法が光り、剣がぶつかり火花が舞う。何度もぶつかり合い、何度も弾かれ合った。
再び唐突に、ジョルダインが膝をついた。二人して何やってるんですか、とランドの声がした。気づくとダフマンの姿はなく、ランドはわけがわからないとばかりに首をひねっていた。私もわけがわからなかった。闇の精霊の言うとおり、どこまでが幻影だったのかはっきりしない。
ジョルダインはいまだ幻影に惑わされているようだった。しかし、ランドの持っていた、ジャレットの香りがするという香水で、ジョルダインは我に返った。
「…何でそんな物を持っているのだ」
「忘れてたんだよ。でもこれは忘れない。あとでからかえるから」
どさっと、何かが落ちる音が聞こえた。私たちは顔を見合わせ、暗闇の中音がした方へ向かった。瓦礫の隙間から見えるマクタナンの顔の前に、ダフマンであったものが倒れていた。死んでいた。
君たちに救われた。マクタナンはそう言い、最後の魔女の試練を克服した証をくれた。そしてマクタナンは歴史の欠片、人間のエゴを私たちに語り、助言を施し、私たちをムロウェクの迷宮から出してくれた。理解が追いつかない部分もあるが、魔女の試練を終えたことに、少しだけ安心した。
ぐるんと意識が回り、目を開けると、冬の山の臨時警戒所に立っていた。雪が、静かに降っていた。
その後の出来事には、深いため息しか出ない。
結果だけを見れば、果てしない冬の山に登り、イニックスの炎は守られ、ジョルダインは私たちの前から姿を消した。それだけだ。
ただ、第七の魔女の試練、とも言うべき最後の場面で、私は試練の力に自由を奪われ、ジョルダインはイニックスの炎の力を克服できなかった。それだけだ。
ジョルダインは、イニックスの炎とともに、姿を消した。セレンディアの平和のために、と呟いて。
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はい、黒い砂漠日記です。
メインキャラで冬の山シナリオを走破しました。新キャラでやった時は流されるままにゲームを進めていましたが、2回目なので、少し落ち着いてストーリーを追ってみようとしました。ムリでした(´・ω・`) 話の流れがあっち行ったりこっち行ったり、独特の言い回しになかなかなじめず、いつものようにかいつまんでのお話になってしまいました。
終わってみれば、いや、ジョルダインと一緒になってから少しずつ、冬の山シナリオは実はジョルダインの再出発の話である、と理解しました。最後の最後でその進む方向が真逆になったようにみえますが。今後に期待です。
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