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ジョルダインとランドとともに、オーガの沼、窯の火、木に落ちる雷など、三つの魔女の試練を超えてバヒトラム民に話を聞くことになった。闇の精霊の言うとおり、アタラクシアの件であまりいい感情は持っていない。しかし、カーンが冬の山を登った日、何が起こったのか、その一端を伝えてくれた。雪獣人と根源の炎。カーンと族長の行方。
行く先々で知る雪獣人とアベッスの成り立ち、ドラゴンの異変、ガーディアンの誕生、六魔女の死。事態が少しずつ動き出していく予感があった。
そして、探していた雪獣人の族長プローキの発見。第四の光る顔の試練を経て語られたのは、雪獣人とアベッスのすれ違いの話だった。そこに見え隠れする第三の存在。プローキは言った。炎を守るガーディアンを倒し、炎を取り返してくれ、と。
エイル村に到着した。ドラゴン博物館管理人のウーランから、いにしえのドラゴン、ラブレスカの物語を聞いた。イニックスの炎を、文字通り胸に抱いたラブレスカ。シルバーウィロウと恋に落ち自らの責務をなおざりにした魔女。再び冬の山を訪れ、ラブレスカとともに歩むシルバーウィロウ。
エイル村の食事処で、ジョルダインと一緒になった。感慨深げに、少し気弱に、ジョルダインは旅の始まりを懐古する。ヤツとこんな仲になると誰が想像しただろう。
この旅が終わったらどうするのか。そう訊いた私の声は、わずかな緊張で素っ気なかったかもしれない。グラスを持つ手の震えを悟られないか、気になった。
だがジョルダインは、それに気づいていない様子で顎に手を当てて考え、ハイデルの隅でジャレットと子どもと、静かに、賑やかに過ごしたい、と答えた。
ヤツの口の端がくいっと上がり、軽く目を瞑ったのを見て、私は、聞かなければよかった、と思った。ジョルダインのことをわかっていたつもりで、わかっていなかったのかもしれない。
ハイデルから連れてこられたというピエロ姿のゴブリンを送り出した時も、吹雪警戒所で防衛の指示を矢継ぎ早に出した時も、そこにあったのは、護り手として前に出る男の不器用な思いやりだったのだろう。そんな男が漏らした、現実的な望みが実は、人並み程度の夢想だったのだ。
不意に見上げてきた、フードの奥で光るヤツの目は、ベルガモンに操られていた時にはなかった希望と不安が見えた。私は軽くうなずいてやって、椅子から立ち上がり、ヤツの肩をぽんと叩いてやった。その時の私の顔は、きっと苦虫を噛み潰したような表情になっていただろう。
笑い合う客たちの声や食器の触れる音が、食事処に満ちていた。
アベッス達の居留地を直し、冬の木を浄化して五番目の魔女の試練をくぐり抜けた。止まない雪の降る山道を往復し、旅の途中で手に入れた物をバルハン王子に届け、今回の事の発端となったシェレカン鉱山に向かった。ドベンクルンのダフマンを探しているが、どうやらここにはいないらしい。
一度ドベンクルンに戻ろうとした時に、エイル村に逃げてきた人間の仲間らしき男たちが、辺りをうかがいながら隠れているのを偶然見つけた。全員は助けられない、と少し慌てたように言うジョルダインの言葉に、男たちは、なら逃亡用に作った地図を奪い返してきてくれと頼んできた。
どこか油断があったのだろうか。宝箱の中にあるというので、素直に箱を空けた瞬間、緑色をした煙が視界を覆い、体がしびれて、私もランドも、ジョルダインまでもがその場に倒れた。
「すまない…死にたくなかったんだよぅ…」
先ほどの男たちが目をそらしながらそう言っていたのを聞いて、私は意識を手放した。
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