のどかなケイバ

一口馬主やってます

侵略者を討つな! 54

2023-01-04 06:38:04 | 小説
 山際怜子は慌てて股間を両手で隠します。撮影してた広川雫は唖然。
「ええ~・・・」
 金目ひなたはそんな広川雫を見て、
「広川《ひろ》ちゃん、そうじゃないって!」
 金目ひなたは広川雫からスマホを奪うように受け取ると、しゃがみ込み、山際怜子の股ぐらにスマホを向けました。
「ここからこうやって撮影するんだよ!」
 山際怜子は再び身体をくねらせ、反抗を始めました。
「何すんのよーっ! やめてってーっ!」
「うつせーよ!」
 金目ひなたはさっと立ち上がると、山際怜子の腹を思いっきり踏みました。悲鳴をあげる山際怜子。
「ぐふぁーっ!」
 山際怜子は踏まれた腹を両手で押さえました。大股を広げられたままゴホッ、コボッとさっきより激しく咳き込みます。金目ひなたは再びしゃがみ込み、山際怜子の股ぐらの撮影を再開しました。
「ふふ、いい映像《え》、いい映像《え》」
 それを聞いて広川雫は唖然。
「もうやめてあげて!・・・」
 広川雫は心の中で叫びました。これはいくらなんでもひどい、ひどすぎる・・・
 金目ひなたは広川雫にスマホを渡します。
「広川《ひろ》ちゃん、ちゃんと撮影してよね!」
「あ、はい!」
 次は私がターゲットになる・・・ それは絶対嫌だ! そう思うと広川雫は慌ててスマホを受け取り、撮影を再開しました。一方金目ひなたは広川雫を見下ろし、
「あはは、そうそう、その調子! その調子! この映像を裏サイトで売れば、100万円円にはなるわね、きっと!」
 ちなみに、金目ひなたはまだ小6ですが、興味本位で1度裏ブラウザに行ったことがありましたた。が、そこでパソコンがウィルスに感染してしまい、大変なことになったことがありました。
 そんなわけで金目ひなたは2度と裏ブラウザには行く気はありません。単なる脅しです。
 広川雫はスマホで撮影しながら、横目でその金目ひなたを見ました。広川雫の知ってる金目ひなたは、こんな娘《こ》じゃなかった・・・

 半年くらい前、広川雫は教室の後ろの方で複数の男子児童に絡まれたことがありました。
「やめてよ! やめてって!」
 不快を意思表示しても、男子児童はへらへら笑いながら広川雫の長い髪を両側から引っ張ります。と、そこに、
「やめよな!」
 と、かなりきつ目の声が。男子児童たちがその声の方を見ると、そこには金目ひなたが。さらにその後ろには片岡愛美と飯島莉桜の姿がありました。金目ひなたの眼は恐ろしい眼。それを見て男子児童たちはびびります。
「な、なんだよ・・・ ちっ!」
 金目ひなたの父親は高級官僚《キャリア》。そのせいで先生たちからひいきにされてました。公立の小学校でそんなことがあるはずがないて感じですが、前述の通り、ほんとうに金目ひなたはひいきにされてたのです。
 そんな娘《こ》に手を出したらどうなることやら? そう判断したのか、男子児童たちは行ってしまいました。
 この一件で広川雫は金目ひなたに憧れました。それまでずーっとひとりぼっちだった広川雫は、自分の強い意志で金目ひなたの仲良しグループに入ったのです。

侵略者を討つな! 53

2023-01-04 06:19:07 | 小説
「はあ? あんた、ほんとうに痛い目に遭いたいらしいなーっ!?」
 そう言うと金目ひなたは、右手で荒々しく山際怜子に張り手を喰らわしました。再び尻もちをつく山際怜子。金目ひなたは横目で片岡愛美と飯島|莉桜《りお》を見て、
「片岡《まな》ちゃん・飯島《りお》ちゃん」
 と合図。
「OK!」
 と言うと、片岡愛美は山際怜子の上半身を押さえつけます。飯島|莉桜《りお》は下半身へ廻り、山際怜子のパンツに手を掛けました。はっとする山際怜子。
「や、やめて・・・」
 山際怜子は身体をくねらせます。すると片岡愛美は、
「うっせーんだよーっ!」
 と、激怒。山際怜子にスリーパーホールドをかけます。これが意外と強力。
「ああ・・・」
 山際怜子は半分白目を剥きます。力が入りません。かろうじて、
「く、首を絞めないで、お願い・・・ もう抵抗しないから・・・」
「ふ、わかりゃいいんだよ」
 と言うと、片岡愛美は腕をほどきました。すると山際怜子はゴホッ、ゴホッと激しく咳き込みました。
 飯島|莉桜《りお》は楽々と山際怜子のパンツを脱がし、ついに山際怜子は素っ裸になりました。
 広川雫は愕然としてます。あの優しい金目ひなたがこんな鬼畜な行為をするなんて・・・
 金目ひなたは横目でその広川雫を見ました。
「広川《ひろ》ちゃん、スマホ!」
「え?」
 突然の呼びかけに広川雫はびっくり。金目ひなたは荒々しく言葉を続けます。
「スマホよ! スマホ!」
「あ、はい!」
 広川雫は言われた通り、自分のスマホを取り出しました。金目ひなたはそれを見て、
「撮影してよ!」
 撮影・・・ 金目ひなたはこの凄惨な光景を記録しろと言ってるのです。
「で、できないよ、そんなこと!」
 ついに広川雫は反抗しました。が、
「へ~ あなたもここで|素っ裸《まっぱ》になりたいのかな~!?」
 ああ、金目ひなたの牙が今度は自分に向かおうとしてる。私はこんなところで裸になりたくないよ・・・
 広川雫はぽつりと応えました。
「わ、わかったよ・・・」
 金目ひなたはニヤッと笑いました。
「ふふ、じゃあ、撮影してよ!」
 金目ひなたは今度は片岡愛美と飯島|莉桜《りお》を見ました。
「じゃ、2人とも!」
 片岡愛美と飯島|莉桜《りお》は同時に応えました。
「OK!」
 2人はそれぞれ山際怜子の足首を持ちました。突然の出来事に山際怜子はびっくり。
「え?・・・」
 片岡愛美は飯島|莉桜《りお》の顔を見て、
「行くよ!」
「うん!」
 そして2人同時に、
「せーの!」
 と言って、あらん限りの力を使って山際怜子の両脚を大きくぐわっと開きました。山際怜子は顔を真っ赤にして、悲鳴をあげました。
「きゃーっ! やめてよーっ! やめてってーっ!」

女神10章第53話について

2023-01-03 13:54:14 | 小説
いつのころからか私は小説を書くようになってました。最初のうちは当ブログで・・・ いや、先代のブログだったかな? ともかく自身のブログで発表してましたが、そのうち小説を発表させてくれるHPを発見し、そちらに移動しました。今は「小説家になろう」とカクヨムで発表してます。
メインで書いてる小説は女神という小説。ウルトラセブンのウルトラ警備隊のような地球防衛組織テレストリアルガードに一つ眼の宇宙人女神が転がり込んでくるところから物語は始まります。
最初のうちはだらだらと書いてましたが、11章を書いてるとき運営から警告がきました。
「あなたの作品は15禁の範疇を超えました。是正してください」
けど、具体的にどこに問題があったのかまでは指摘はありませんでした。私は書きかけの11章のどこかに問題があったと判断し、11章を丸ごと削除、10話で完結とさせました。
が、またもや運営から警告がきました。
「あなたはまだ問題ヶ所を是正してません。もし〇日まで是正しない場合は、あなたの投稿はすべて削除します」
私はパニクッてしまい、小説女神を丸ごと削除してしまいました。
今思えば10章のあの部分に問題があったような? いや、そうだとしても、その部分をあげてから警告がくるまで7ヶ月もありました。7ケ月後に警告を出すなんて、あまりにもひどくありませんか?

実はそのあと、カクヨムでも女神を連載させました。問題だったと思われる例の箇所は、少し柔らか目の表現としました。原文を100とすると80くらいか? 今のところカクヨムでは警告が来てません。
そのあと小説家になろうで再び1話から女神の連載を開始しました。そしてついに問題箇所(だったと思われる部分)に到達しました。前述の通り、原文100だったキツイ表現をカクヨムでは80とスケールダウンさせました。けど、それをそのまま小説家になろうに載せた場合、また警告が来るかもしれません。他の人の証言だと、小説家になろうでは規制がきびしいようです。
そこでこうすることにしました。問題箇所女神10章第53話だけは当ブログで発表します! 表現具合ですが、原文の100のままで書きたいのですが、当ブログに迷惑をかけてはいけないので、80の表現としましょう!

明日女神10章第53話をあげます!

死神 Lovely Death 4

2017-09-04 15:59:10 | 小説
 救急車が病院に到着した。男子高校生のためにストレッチャーが用意されたが、彼にそれは不要だった。ま、最終的にはそれに乗せられ病院に入って行ったが。
 オレも彼に続いて病院の中に入ろうとしたが、そのときふいに背後から声がかかった。
「あなた、なんてことしてくれたの?」
 振り返ると、そこには最初に出会った死神が立っていた。
「おいおい、地球の裏側まで飛んでったんじゃないのか?」
「あんなインチキな呪文で私を飛ばせると思うの? 飛んで行ったとしても、せいぜい5キロメートルよ!」
 なんだよ、やっぱちゃんとした呪文じゃないといけないのかよ・・・
「それより、あなた、自分が今何やったのか、わかってんの? 私、言ったよね。枕元に死神が立っていたらおしまいだって!」
「それがなんだってゆーんだよ? おまえこそ、ウソ言ったんじゃないのか? 死神が枕元に立ってても、呪文を唱えたら、死神は消えちまったじゃんか!」
「それがいけないのよ! あなたが呪文を唱えたせいで、あなたの命とあの子の命が入れ替わったの!」
 ええっ? てことは・・・
「いい、あなたの命はあと30分よ、あと30分もすればあなたはきれいさっぱり死ぬの!」
 オレはその言葉を聞いてクラっときた。オレの命があと30分だなんて、ほ、ほんとうかよ・・・
「オ、オレ、まだ死にたくないよ。どうすりゃいいんだよ・・・」
「知らないわよ。すべてはノートを返さなかったあなたの自業自得よ!
 あなた、勘違いしてるみたいだけど、ノートは一回触れただけで一生死神を見ることができたし、魔法の呪文も一生使えたし! 別にノートがなくったって、全部できたの!」
 そ、そんな秘密の設定があったなんて・・・
「な、なんだよ、それ? ふざけんなよ! あんたがあのとき説明しなかったからいけないんだろ! なんとかしろよ!」
「説明しようにも、あなた、あのとき、私を地球の裏側へ飛ばしちゃったじゃん!」
 そうだ。あのときオレは、こいつを地球の裏側に飛ばしちまったんだ。な、なんとかしないと・・・ そうだ、ノートだ! オレはカバンからノートを取り出し、かわいい死神に突き付けた。
「これ、返すからさぁ、オレの命、助けてくれよ!」
「バカ、今更何やったって遅いわよ!」
 な、なんだとーっ! オレは両手でノートを引きちぎるポーズを見せてやった。
「じゃ、このノート、破ってやるよ!」
「ちょ、ちよっと待って!」
 さすがにこの行為は死神を慌てさせたようだ。
「わ、わかった。来て」
 死神は振り返ると、歩き始めた。オレはそのあとを追いかけることにした。

 歩いた距離は300メートルくらいか。かわいい死神はひとけがまったくない雑居ビルの前に立った。このビルにいったい何があるんだ?
 死神は裏木戸のようなアルミのドアを開けた。中には地下に伸びる階段があった。死神は振り返り、オレの眼を見た。一緒に階段を降りろと言ってるようだ。死神は階段を降り、オレは彼女に続いた。
 階段の周りはコンクリートで覆われていた、はずだった。あるところからゴツゴツとした岩肌に変わったのだ。ほんの一瞬の出来事だった。まるで海岸にある洞窟みたいな感じ。振り返ると、真後ろもずーっとゴツゴツとした岩肌だった。今降りてきたコンクリート製の階段は完全に消えていたのだ。
 下には無数のろうそくが輝いていた。ここは黄泉の国か? さすが死神、雑居ビルの地下室と黄泉の国をつなげやがったよ。
 オレと死神は地下の平らなところに到達した。見るとろうそくの長さは大小バラバラだった。中にはオレの背丈と同じくらいのろうそくもあったし、もう少しで燃え尽きそうなろうそくもあった。ろうそくは太さもバラバラで、直径20cmくらいのものもあれば、3cmくらいのもあった。オレは直感でわかった。このろうそく1本1本は、人の命そのものなんだと。
 死神はここでようやく口を開いた。
「このろうそく、なんだかわかるよね?」
「人の命だろ?」
 死神はニヤっと笑った。ああ、じれったいなあ。
「おい、オレのろうそくはどれだよ?」
 死神は再びニコっとして、そしてしゃがんだ。ヤツの目の前にはもう燃え尽きそうなろうそくがあった。
「これよ。おやおや、想像以上に燃えてるじゃん。燃え尽きるまであと5分ってところかな?」
 ご、5分って・・・ しかし、こいつ、心底笑ってやがるなあ。むかつく・・・
「おい、代わりのろうそくはないのかよ?」
 と、死神はいつの間にか1本のろうそくを握っており、それをオレに見せた。長さ60cm、太さ10cmくらいのろうそくだ。
「新品はあげられないけど、これくらいならいいかな」
「よこせ!」
 オレはそのろうそくを奪い取るように受け取ると、燃え尽きそうになってるろうそくの火をそれに移した。と同時に古いろうそくは燃え尽きた。ふーっ、助かったあ!
「私ねぇ、やっぱ人間に格下げだって。さっき連絡があったんだ。あと3時間もすれば、私はもう人間よ」
 死神がぽつりと言った。オレは自分の命が助かった安心感で、その言葉にはあまり興味を持てなかった。が、続く言葉、いや、脅迫には反応してしまった。
「人間になったらあなたに憑りついてやるからね! 100年憑りついてやる! あなたの一生をぐちゃぐちゃにしてやるから!」
 こりゃあ完全に怒ってるな。オレは何か言い返そうと思ったが、いい言葉がみつからなかった。と、ここで死神は急に声色を変えた。
「ところでさあ、ここ、どこだかわかる?」
「え?、ここは命のろうそくが・・・」
「あははははは、バカねぇ! 地球には今70億を超える人口があるのよ。ここにあるろうそくって何本だと思ってんの? 命のろうそくなんて真っ赤なウソよ!」
 おいおい、こいつ、オレを騙してたのかよ。
「ねぇねぇ、あなたが今握ってるもの、なんだと思う?」
 オレは自分が握っているろうそくを見た。これ、どう見てもろうそくなのだが・・・
「それ、ダイナマイトよ。もう爆発するんじゃないかな」
 ええっ?
「バイバイ」
 と言うと、死神はふっと消えてしまった。冗談じゃねーよ! オレはろうそくを投げ捨て、それとは真逆の方向に走り出した。が、遅かった。ピカっと光って、強烈な熱風が背後からオレの肉体を襲ってきた。ものすごい衝撃。身体が引きちぎられる感覚。無念。オレは爆死したようだ・・・

 ジリジリジリジリ~ 目覚まし時計が鳴った。オレは手を伸ばして目覚まし時計を止めた。夢か。ああ、なんてリアルな夢だったんだ・・・ ち、まだ眠いや。あと5分。オレは再び布団を被った。
 トントントントントン。誰かがまな板で何かを切ってる音だ。いい音だ。いや、ちょっと待て。ここはオレしかいない部屋だろ? なんなんだよ、この音?
 オレが今いるアパートの部屋は、外からドアを開けるとすぐに小さなDKがある。さらにその奥が、今オレが布団を被ってる部屋だ。今誰かがシステムキッチンで朝食を作ってるようだ。誰だよ、いったい?
 オレは起き上がり、目の前の引き戸を開けた。そこには小学生と思われる女の子がいて、食事を作っていた。女の子がオレを見た。
「あ、お兄ちゃん、おはよう!」
 ええ、お兄ちゃんって? オレ、一人っ子だぞ。誰だよ、こいつ?
 が、その顔には見覚えがあった。服装はふつーの小学生だが、印象深いボブヘア。こ、こいつ、死神じゃんか! 夢の中に出てきた死神だよ! あれは夢じゃなかったのかよ?
「お兄ちゃん、もう起きて。学校遅れるよ」
 死神はニコっと笑った。本来ならかわいい微笑みなんだろうけど、オレからしてみりゃ、超薄気味悪い笑いだ。
 こいつ、本当にオレに憑りつきやがった。オレ、こんなやつと一緒に暮らすのか? 最低だ、なんて最低なんだ・・・ くっそーっ・・・

死神 Lovely Death 3

2017-09-02 17:07:49 | 小説
 しかし、次の日もその次の日も、やつらの突然死のニュースはなかった。おかしいなあ。もしや未成年てことで、ニュースにしてないのかも。
 が、3日目の夕方、オレがアパートに帰ってくると、意外なものがアパートの階段の前で待っていた。女万引きGメンと、あのとき万引きをした方の男子高校生が立っていたのだ。おいおい、あのノートに名前を書き込んでも何も起きないのか? あは、なんだ・・・
 しかし、こいつ、なんでここにいるんだ?
「久しぶり」
 彼女が声をかけてきた。オレも何か返事しないと。
「どうしたんですか?」
「この子、昨日警察に出頭してきたのよ」
 女は高校生を見てこう言った。
「あなた、この人に何か言うことあるんでしょ」
 すると万引き犯の男子高校生は素直に頭を下げた。
「ご、ごめんなさい」
 おいおい… ま、こんなところで立ち話もなんだ。オレたち3人は近くの喫茶店に行くことにした。
 喫茶店で聞いた話だと、最初は2人で逃げてたが、万引き犯の方は怖くなってすぐに離脱したとか。で、警察に出頭したようだ。万引き犯とはいえ、万引きGメンに危害を加えてないし、なにより未成年者。警察は調書を取って、とりあえず帰宅させたようだ。
 さらに万引き犯は、父親とうまくいってないとか、母親とは離婚して離れ離れになったとかうだうだと言ってたが、オレにとっちゃあ、ちっとも楽しい話じゃなかった。もう飽きたよって感じ。
 ただ、こいつ、悪い奴じゃなさそうだ。悪いのはもう1人の方か? いや、もう1人の方も案外いいやつかも。オレはなんでこいつらをデ×××トで殺そうとしたんだ? オレってやっぱそうとうバカだったんだ。あはは・・・

 と、その瞬間、オレはふと変な感覚に襲われた。周りのすべてのものが一斉に止まったのだ。どうやら時間が停止したようだ。動いてるのはオレだけ。オレは焦った。これってやっぱあいつのせいか?
「ノート、返してよ!」
 その声は真後ろからだった。立ち上がって振り返ると、思った通りにやつはいた。オレが最初に出会った死神だ。やっぱりこいつか。かわいい死神はなんか悲しい眼をしていた。とりあえず話しかけてみるか。
「お久しぶり」
「ふざけないで! もう、あなたのせいで地球の裏側に飛ばされたのよ!」
 おいおい、あの呪文にそんな効果があったのかよ。
「ねぇ、ノート返してよ!」
 ノート・・・ あれはデ×××トじゃなかった。もう返してもいいかな?
 いや、あのノートには死神を追っ払うという効果があるし、それ以前に死神を可視化できるという効果がある。あれはいろいろと有用だ。そう簡単に返すかよ。軽くあしらってやるか。
「あれはもうないよ。捨てちまったよ」
「ふざけないでよ、そのカバンの中に入ってるんでしょ!」
 そのカバンとは、オレが会社訪問のときに持っていくカバンのことである。もちろん今も持ってる。あのノートを拾って以来、このカバンの中に常時入れて肌身離さず持ち歩いてたのだ。つまり、こいつの言ってることはビンゴなのだ。
 しかし、こいつ、なんでこんなに血眼になってるんだ? ただのノートなんだろ。ちと理由を訊いてやるか。
「これ、ただのノートだろ? なんでそんなに必至なんだよ。代わりのもの、くれないのか?」
「代わりのものなんかないわよ。1人1冊て決まってんの!
 本部から近々死ぬ人の名前がそのノートに転送されてくるの。それがないと私たち死神は仕事ができなくなるのよ!」
「なくすとペナルティがあるのか?」
「あるわよ。それをなくすと、私たちは人間にされちゃうのよ!」
 それを聞いてオレは思わずプッと噴き出してしまった。それを見てやつがカッとした。
「何がおかしいのよ!」
「だって人間だろ。いいじゃん、人間て。素晴らしいぞ!」
「バカ言わないでよ! 私はこう見えても500歳を超えてんのよ! 人間になったらせいぜい80歳しか生きられないんでしょ? そんなの私、絶対嫌よ!」
 ええ、こいつ、戦国時代から生きてんのかよ? う~ん、それじゃ、嫌だろうなあ・・・
 でも、正直こいつがどうなろうと、オレにはまったく関係のない話だ。いや、いっそうのこと人間になって、オレの妹になってみないか? 死神だったらいまいちかわいくないが、妹になったら案外とかわいかも。
 ああ、なんかめんどくさくなってきたぞ。一気に吹き飛ばしてやるか!
「パンプルピンプルパムポップン!」
 かわいい死神はその呪文を聞いてびっくりしたようだ。唇が「なぜ?」と言ってるようにも見えた。が、それはほんの一瞬の出来事。かわいい死神はぱっと消えてしまった。と同時に、時間が再び動き出した。
「あれ、なんで立ってるの?」
 女万引きGメンは座ったまま、びっくりしてた。そりゃそうだ。時間が止まったときオレは彼女の目の前に座ってたのに、今は立ち上がってるんだから。

 帰りの時間になった。オレたち3人は喫茶店の外に出た。と、男子高校生はオレに向かって再び深々と頭を下げた。
「いろいろとご迷惑をかけて、すみませんでした」
 謝ってもらえるのは嬉しいけど、別にそこまで腰を低くすることはないだろって。だいたいオレはあんたから何も被害を受けてないよ。こいつ、本当にいいヤツだな。
 オレたち3人は、それぞれ別の方に向かって歩き出した。が、次の瞬間、とんでもない異変が起きた。1つの人影が飛び出し、男子高校生に当身を喰らわしたのだ。そいつは男万引きGメンに凶刃を振るった男子高校生だった。あのときとまったく同じ、男子高校生をナイフで刺したのだ。男子高校生の声にならない悲鳴が響いた。
「うぐぁっ!」
「おまえ、1人で何いい子になってんだよ」
 刺した高校生がそういうと、刺された男子高校生の身体が崩れ落ちた。
「おい、何やってんだ!」
 オレは反射的にそいつに向かって駆けだした。
「おっと!」
 刺した男子高校生は、今度はオレに向かってナイフを振り上げた。オレは急停止。ぎりぎりでなんとかナイフを交わした。次の瞬間、刺した男子高校生は逃げ出した。くそーっ、あいつは根っからの悪党だったのかよ!
「ねぇ、しっかりして! しっかりしてよ!」
 それは女万引きGメンの声だ。振り返ると彼女は男子高校生の半身を抱きかかえていた。激しい出血だ。オレはすぐさまスマホを取り出し、119番した。
 が、救急車はなかなか来なかった。時間がやたら長く感じた。男子高校生はかなり苦しそうだった。オレはなんとかしたかったが、こんなときのオレは、やはり無力だった。ただ見てるしかなかった。男子高校生を励ます女万引きGメンの声が、いつしか涙声に変わっていた。
 やっと、やっと救急車が来た。救急隊員が男子高校生の身体を救急車に乗せた。一刻を争う大ケガだ。救急車はすぐに出発した。

 オレも救急車に同乗した。女万引きGメンも救急車に乗りたかったようたが、警察の事情聴取があるから残ることにした。本当だったらオレが事情聴取に応じるべきだったのかもしれないが、オレは見てはいけないものを見てしまったのだ。男子高校生がストレッチャーに乗せられるとき、その頭に死神が立っていたのだ。こいつは一大事だ。なんとかとしないと、こいつは死んでしまう。彼女に頼みこんで、オレが救急車に同乗することにした。
 救急車の中、男子高校生はさらに苦しくなっていた。きえぎえに唸り声をあげていた。その頭の上には、相も変わらず死神が立っていた。やっぱりボンテージルックのかわいくって幼い女の子だ。
 オレは最初に出会った死神の言葉を思い出した。
「もし死ぬ間際だったら枕元に立つ。死んだら魂が抜け出すから、すぐさま回収できるように枕元に立つの。こうなったらもうおしまい。誰にでも邪魔することはできないわ」
 その話がもし本当なら、こいつはもうおしまいなのか? くっそーっ、なんとかならないのかよ~ ちと死神に事情を話して許してもらおうか?・・・ いや、そんなことで動く死神じゃないだろって。ああ、何かいい手はないのか?
 いや、もしかしたらこんな状況下でもあの魔法の呪文を唱えたら、この死神は消えるんじゃないのか? ええーい、どうせ死ぬんだ。やっちまえ!
 オレは呪文を唱えることにした。ちょっと・・・ いや、かなり恥ずかしい呪文だが、救急隊員の眼なんか、今はなんにも怖くないぞ。よし!
「パンプルピンプルパムポップン! ピンプルパンプルパムポップン!」
 思いきってその呪文を唱えると、死神は「えっ?」とした表情を見せ、次の瞬間パッと消えた。やった、大成功だ! なんだよ、なんの問題もなくパッと消えたじゃんかよ! あいつ、ウソつきやがって!
 救急隊員たちは冷ややかな眼でオレに視線を浴びせたが、次の瞬間、それ以上の驚愕が起きた。なんと瀕死の男子高校生が眼を醒ましたのだ。その表情は何事もなかったように晴れ晴れとしていた。
「あれ、なんでオレ、こんなところにいるんだ?」
 どうやら何が起きたのか、ぜんぜん覚えてないらしい。ともかく彼は救われた。よかった、よかった。