のどかなケイバ

一口馬主やってます

死神 Lovely Death 2

2017-09-01 07:23:49 | 小説
 しかし、このデ×××ト、期待とは別のところでものすごい威力を発揮してみせた。オレは自分のアパートを目指して歩いたが、その間何人ものボンデージルックの幼い女の子を見かけたのだ。今は12月だぞ。寒くないのか? きっとみんな死神なんだな。デ×××トを入手したから、見てはいけないものが見えるようになってしまったんだな、きっと。
 しかし、まあ、この世にはたくさんの死神が蠢いてるんだなあ・・・ まあ、日本だけでも今1億2千万の人口があるんだ。世界だと70億を優に超えてるって話を聞いたことがある。死神だけでもこの世にいったい何人いることやら。
 でも、なんでみんな幼い女の子なんだ? もっと年いった死神はいないのか?

 オレは自分のアパートに到着した。オレの部屋は2階にある。2階に昇ろうとしたとき、2人の男が立ちふさがった。かなりヤバい雰囲気。オレは一瞬ビビったが、
「警察です」
 よかった、どうやらこの2人は刑事らしい。リーダー格の刑事が質問してきた。
「あなた、30分前書店で起きた強盗傷害事件を見てますね」
「あ、はい」
 今度は若い刑事の質問。
「あなた、なんであの場から逃げ出したんですか?」
 オレはフリーズしてしまった。やっぱ逃げ出したのはまずかったか・・・ ここは何か説明しないと・・・ が、ベテラン刑事の方が畳みかけてきた。
「ちょっと警察に来てもらえないですかねぇ」
 あれ、もしかしてオレ、万引き犯の一味と間違えられてんの? まいったなあ・・・ オレはなかば強制的に警察に連行されてしまった。

 しかし、オレは1時間ばかしで解放されることになった。すぐに濡れ衣だとわかってもらえたのだ。
 が、警察署を出ると、その玄関前にはもっと厄介なヤツが待っていた。刺された万引きGメンの相棒だ。20代前半て感じの女。一応美人だが、眼が怖い。ちょっと嫌な感じがある。
「あは、どうも」
 何か言おうとして、とりあえずこんな言葉を発してみた。
「どの面下げて警察署から出てきたのよ?」
 ああ… 想定してた以上の厳しいお言葉が返ってきたよ。
「あの~ 刺された人は?」
 オレは定石通りの質問をしてみた。
「へ~ 知りたいんだ。そりゃ気になるわよねぇ。死んだら仲間は殺人鬼になっちゃうもんね」
 だから、オレは仲間じゃないってばさあ・・・
「来て」
 というと女は振り向きざま歩き出した。おいおい、オレ、どうすりゃいいんだ? もう仕方がないなあ、この女についていくしかないか?・・・

 太陽はすでに傾き、もう夕暮れになっていた。オレと女万引きGメンが歩く先にかなり大きな病院があった。直感的にわかった。さっき刺された万引きGメンが入院してる病院なんだと。
 病院の中に入ると、女はエレベーターに乗った。女はさっから一言も発してなかった。顔色もずーっと同じ。オレは何か質問しようと思ったが、そんな雰囲気じゃなかったので、オレも黙ってエレベーターに乗ることにした。
 エレベーターから降りると、女はすぐさま廊下に面したドアを開けた。その中に入ると、やっと言葉を発してくれた。
「見て」
 そこは一面ガラス張りだった。その向こうは病室らしく、いろんな機材に囲まれたベッドがあった。そのベッドの中に寝かされている人間は・・・ たぶん昼間刺された初老の万引きGメンなんだろうな。
「とりあえず安定してるみたい」
 おいおい、本当か? 今あの人の足元に立ってんの、誰だよ? 黒いボンデージのかわいい女の子。こいつは死神だろ。
 ちなみに、最初に出会った死神はセパレートのボンデージだったが、今目の前にいる死神は大きく背中が開いたワンピースのボンデージだった。さっきの死神の髪型はショートボブだったが、今目の前にいる死神はツインテール。死神のファッションもいろいろとあるようだ。
「あなた、なんであのとき、逃げ出したの?」
 女が質問してきた。ようやく本題に入るようだ。
「別に理由なんかないよ。ビビっちまって、それで逃げ出したんだよ」
「ウソ!」
 ウ、ウソって・・・
「あなた、私の眼を見て逃げ出したでしょ! あなたもあいつらの仲間だったんじゃないの?」
 なんだよ、さっきの刑事と同じかよ。また一から説明しなくっちゃいけないのか? だいたいオレはあんとき、あんたの眼を見てないって!
 と、そのとき、けたたましい警報音が鳴り響いた。ほんとうに突然だった。
「な、何、これ?」
 女万引きGメンが慌て出した。どうやら病室の中の男の容体が急変したようだ。まあ、死神が控えてるんだ。先が短いのは確かなようだが。
 すぐに2人のお医者さんと3人の看護師さんが病室の奥にあるドアを開け入ってきた。オレの隣にいた女は、両手でガラスをドンドンと叩き始めた。
「ねぇ、何が起きてんの? 何が起きてんのよう?」
 おいおい、そんなに叩いたらガラスが壊れるぞ。このガラス、かなり高いんじゃないのか?
 オレは再び病人の足元に立ってる死神を見た。あいつが頭の方に廻るとおしまいだったっけ? とりあえず追っ払ってやるか。
 オレは死神から教えてもらった呪文を唱えることにした。が、ここで大事なミスに気づいた。忘れたのだ。すっかり呪文を忘れてしまったのだ。う~んと、なんだっけ? う~んと・・・
 ああ、もういい。とりあえずオレの記憶にある呪文を唱えてやる!
「パンプルピンプルパムポップン!」
 すると、なんと死神は瞬時に消えてしまった。おいおい、呪文はなんでもいいのかよ?
 と、女万引きGメンが唖然とした状態でオレを見ていた。当たり前だよな、こんな古い乙女チックな呪文をなんの脈略もなく、いきなり唱えたんだから。
 が、病室の中でも騒動が起きているようだ。なんと、寝ていた万引きGメンが上半身を起こしてるのだ。医者も看護師もただただ驚いてるようだ。
「よ、よかった・・・」
 女万引きGメンはそうつぶやいた。そしてオレを見てこう言った。
「あなた、魔法使いだったの?」
 いや、別にそういうものじゃないけど・・・
 オレが返答しないでいると、女はさらに話しかけてきた。
「すごいよ。魔法の呪文であの人を治しちゃうなんて」
 女はただひたすら感嘆していた。これって誤解ていうやつか? まあ、これでオレにかけられた嫌疑は晴れたみたいだ。よしとしよう!
 男万引きGメンはすぐさま一般の病室に移された。オレと女万引きGメンはその部屋に通してもらった。男はなんで急に元気になったのかいまいちわからないようだが、ともかく喜んでオレを出迎えてくれた。
 男万引きGメンと話してるとき、オレは手にしてたカバンを見た。この中にはデ×××トが入ってる。そうか、わかったぞ。これを持ってるときに何か呪文を唱えれば、死神を追っ払うことができるんだ。呪文なんか、なんでもいいんだ。
 こんなに凄いデ×××トだ。万引き犯の名前を書けば、きっとすぐに死ぬはず。でも、名前が、名前がわからんのだ。未成年となると、新聞にも名前が載らないだろうし・・・ くっそーっ、なんであんなやつら、法律が許してるんだ? やっぱオレが制裁をくわえないといけないのか?
「さあ、もう遅い。帰りなさい」
 男万引きGメンのこの一言で、オレたちは病室を出ることになった。

 オレと女万引きGメンは病室を出た。そのまま2人並んで歩き始めた。歩きながらオレは女万引きGメンの顔を見た。もしかしてこの人、あの2人の名前知ってるかも? 書店ともなると顔も広いだろうから、知ってるかもしれないな。ちょっと鎌をかけてみるか。
「あの~ あの2人の名前、わかりますか?」
「あの2人て、万引き犯のこと?」
「はい」
 女はちょっと考え、こう言った。
「知ってるけど・・・ インターネットに名前載せるの?」
「べ、別に、そんなことしませんよ」
 なんだ? 警察に口止めされてんのか? 女はさらに考え、こう言った。
「別に教えてあげてもいいけど・・・
 1人は・・・」
「あ、ちょっと待って!」
 どうやら名前を教えてくれるようだ。オレは慌ててカバンの中からデ×××トを取り出した。
「何、それ?」
「ただのメモ帳ですよ」
 女はちょっと怪しんだが、すぐに話を再開してくれた。
「1人はサムカワアキラ、もう1人はアヤセコウジよ」
 ちょっと待ってくれよ。正しい名前、つまり漢字じゃないとダメなんだよ。で、漢字の名前を教えてもらい、それをデ×××トに直に書き込んでやった。これであの2人は死ぬはずだ。これでこの世は少しはよくなるはずだ。なんかちょっと爽快になった気分だ!
 病院を出ると、外はすっかり夜になっていた。女万引きGメンは食事に誘ってくれたが、それは丁寧に断った。ともかく今は、あの2人の突然死のニュースが楽しみで楽しみでしょうがないのだ。

死神 Lovely Death 1

2017-08-31 10:38:22 | 小説
 もう12月・・・ オレはいまだに就活中。困ったものだ。そろそろ本気で就職先を決めないと!
 てなわけでいろんな会社を訪問してみたが、これがまったくのダメダメのダメ。オレのオツムじゃ一流企業はハナっからムリだとわかっていたが、中小企業も全部ダメだったなんて・・・ 完全に想定外っす。今もまた会社訪問してきたが、この会社もムリっぽいなあ・・・
 いっそうのこと大学院に進学するかな・・・ いや~ オレのオツムじゃ、そっちもとうていムリだと思う。やっぱ地道に就職先を探すか・・・

 会社訪問の帰り、ちょっと寄り道をして駅前の本屋に入ってみた。暇潰しでいつも寄ってる大きな本屋だ。中に入ってビジネス書を手にするかと思いきや、いつものコミック本のコーナーである。ま、これくらいの余裕があってもいいじゃないのか。
 ほんとうは立ち読みしたいんだが、今のコミック本はみんなビニール袋に入ってるから、読むことはとうていムリ。表紙を見て中身を想像するくらい。さ~て、どれにするかな・・・
 と、隣りにいるいる2人の男子高校生の声が聞こえてきた。どうやら1人の高校生がビニールに包まれたコミック本をもう1人に見せてるようだ。
「これ、どんな話だっけ?」
「さあ、もらっちゃえば」
「あは、そうだな」
 と言うと、なんとその男子高校生は自分のカバンの中にその本をポイっと放り込んでしまったのだ。これってもしや万引き? いや、完全に万引きだろ!
 オレは何か言おうとしたが、オレの心の中にいるもう1人のオレがそれを阻んだ。相手はふつーの高校生に見えるが、万引きを平然とやってのける高校生だ。そんなことしたら何されるのかわからんぞ!
 万引き高校生たちは外に向かって歩き出した。オレはちょっとフリーズしてたが、無意識のうちにやつらを追いかけていた。

 エントランスの自動ドアを開けると、さっきの高校生の前に1人の初老だけどガタイのいい男が立ちふさがっていた。どうやら万引きGメンのようだ。その背後には厳しい眼の20代の女性が立っていた。どうやら彼の相棒らしい。よかった、やつらの悪事は阻止されそうだ。
「君たち、カバンの中に会計してない本が入ってるようだが?」
 その質問にやつらはシラを切った。
「さあ」
「ちょっと見せてくれないか?」
 万引きGメンが高校生のカバンに手を伸ばした。その瞬間、もう1人の高校生が万引きGメンの身体に当身を喰らわした。いや、こりゃあ当身じゃないぞ、いったい何をやったんだ?・・・ と、思ったら、万引きGメンの身体がゆっくりと崩れ落ちた。高校生の手には血だらけのナイフが。なんと高校生は万引きGメンを刺したのだ。
「きゃーっ!」
 万引きGメンの相棒の女が、思いっきり悲鳴を上げた。こりゃあもう修羅場だ。とんでもないものを目撃しちまったぞ!
「来い!」
 万引きGメンを刺した高校生は、万引きした高校生の手を握って駆け出した。あたりがざわついた。オレはというと、なぜか意味もなくへたれこんでいた。情けないぞ、オレ。何もできないのかよ、オレ・・・
 オレはなんとか立ち上がると、別方向に駆けだした。別に逃げる必要はないのだが、なぜか駆けていたのだ。

 路地を曲がると、オレは立ち止まった。ひどく荒い息だ。オレは両膝に両手を載せ、荒い息を整えた。なぜか無性に悔しかった。
 ふと足下を見ると、何やらドス黒いノートが落ちていた。B5くらいの大きさのノートだ。こ、これはもしや、デ×××ト? もしデ×××トなら、さっきの男子高校生たちの名前を書き込んでやる! そうしないとオレの気持ちが晴れないのだ!
 オレは意を決すると、そのノートに手をかけた。
「ノート、返して!」
 その瞬間、ふと声が聞こえてきた。そうだ、デ×××トを拾うと、その本来の持ち主の死神を見ることができるんだ。これはきっと死神の声だ!
 オレは顔を上げた。そこに死神がいるはずだ。が、そこにいたのは9歳くらいのかわいい女の子だった。でも、何か変だ。全身真っ黒い水着のような服装、いや、ボンデージと言った方がいいかな? ともかく9歳児とは思えないきわどいファッションなのだ。
「そのノート、返してよ!」
「君は?」
「見てわからないの? 死神よ!」
「ええ・・・」
 これが死神? 今はこんな小さな女の子が死神やってんのか? うそだろ。
「ねぇ、ノート返してよ!」
 女の子、いや、死神が語気を荒げてきた。でも、こんなチャンス、二度とないはず!
「嫌だね」
「どうして?」
「オレは今どうしても殺したいヤツがいるんだ。そいつの名前を書かせろ!」
「何言ってんの?」
「これ、デ×××トだろ?」
「バカ」
 かわいい死神はプッと噴き出した。
「それは近々死ぬ人の名簿よ。それを見て私たち死神は仕事するの。あなたが持ってても全然意味がないじゃん!」
 近々死ぬ人の名簿・・・ んじゃあ、これに名前を書き込めば、やっぱそいつは死ぬってことじゃんか! やっぱこいつはデ×××トだ!
 オレはジャケットの内ポケットからボールペンを取り出した。さっきの万引き野郎の名前を書こうと思ったのだ。が、ここで大事なミスに気付いた。やつらの名前がわからないのだ。これじゃあ、ぜんぜん意味がないじゃん。
「何やってんのよ! ねぇ、ノート返してよ!」
 かわいい死神はいらついてきたようだ。
「嫌だ!」
 オレはそれしか言えなかった。が、ここでいいことを思いついた。
「じゃ、お前がやつらを殺してくれよ?」
「殺す? 誰を?」
「さっき万引きして、店員を刺し殺した男子高校生だよ」
 いや、店員が死んだかどうかまでは確認してないけど。
「知らないわよ、そんなの!」
 死神はそう言い放った。つれないやつだなぁ。ま、あの事件のことなんか、知ってるはずがないよな・・・ やつは言葉を続けた。
「だいたい私は死神よ。悪魔じゃないの。死んだ人や死ぬ間際の人から命を奪うことはできるけど、ピンピンしてる人から命を奪うことは絶対できないわよ。
 ねぇ、いい加減、そのノート、返してよ!」
 ヤツはさらにイライラしてきた。でも、オレもこのまま引き下がる気は毛頭なかった。
「じゃあ、何か代わりのものを出してくれよ!」
 かわいい死神は困ってしまったようだ。ちょっと考えると、こう言った。
「じゃ、1ついいことを教えてあげる。教えてあげるから、絶対ノート返してよ!
 私たち死神は死にそうな人の前に行くと、まずその人がどういう状況にあるのか確認するの。
 もし死ぬ間際だったら枕元に立つ。死んだら魂が抜け出すから、すぐさま回収できるように枕元に立つの。こうなったらもうおしまい。誰であろうと、死神を邪魔することは絶対できないわ。
 でも、死ぬまでにまだ余裕があると見たら、足元に立つ。足元からマイナスのエネルギーを放って、ムリに命を縮めてやるの。それに他の死神に、こいつは私の獲物だってアピールにもなるしね。
 そんな死神を見かけたら、こう呪文を唱えるの。
 クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン!」
 おいおい、なんだよそれ? どこかで聞いたことがある呪文だぞ。だいたいなんで1文字だけひらがなが入ってるんだよ。こいつ、オレをバカにしてるんのか?
「この呪文を唱えたら死神は強制的に引き剥がされるから、その人の命は護られるはずよ」
 ほ、ほんとかよ? どう考えても眉唾もんだろ、それ。けどオレは、反射的にその呪文をつぶやいていた。
「クルクルバビンチョ パペッピポ ヒヤヒヤドキッチョの モーグタン!」
 次の瞬間、かわいい死神は消えてしまった。おいおい、なんだよ、これ? まじホンモノの呪文だったのかよ?
 でも、デ×××トはオレの手に握られたままだ。あいつ、間抜けなやつだなぁ。大事なデ×××トを回収する前に秘密の呪文を教えちまうなんて。やっぱ子どもだったんだな。
 このデ×××ト、大事に使わせてもらうぜ。オレは持ってたカバンにそのノートを仕舞い込み、意気揚々と歩き出した。

死神 Lovely Death 序章

2017-08-29 10:44:42 | 小説
長い間当ブログに上げ続けたSF小説「女神」 現在文章化してある「女神」は昨日ですべて上げてしまいました。ま、その後も添削を続けていて、特に5話「神の国を侵略した龍」は、ちょっと違う話になってます。
以前6話はプロットさえ作ってないと書きましたが、今はプロットはできてます。でも、それに肉付けして文章化する気は今のところないので、たぶん3ヶ月は発表はないと思います。
となると、明日からしばらく挙げるネタはなくなります。当ブログは立ちあげてからずーっと毎日何かを書いてきましたが、それもお終い。それだと面白くないので、他の小説を上げようと思います。
以前旧ブログに上げた小説「死神」 これもかなり添削してまして、その後も他のHPで1度上げたのですが、その後もさらに大幅に添削してあります。明後日からしばらくは、その小説を上げようと思います。
「死神」とは明治時代に書かれたスタンダードな落語のタイトルです。それを現代風に大幅に改変しました。タイトルも「死神 Lovely Death」としてます。

明日は競馬の話を上げるので、明後日から話を始めます。

女神「神の国を侵略した龍」7

2017-08-28 17:38:49 | 小説
 ヘロン号がミサイルを発射。そのミサイルが怪獣から見て、左斜め上から飛んできます。怪獣が軽く火焔を吐くと、ミサイルは四散しました。怪獣は心の中で叫びました。
「ふふ、1対1じゃ、真後ろを取られなければ絶対勝負になる!」
 ヘロン号のコックピットの橋本隊員。
「ちっ、こっちの動きは完全に読まれてるなぁ・・・ じゃ、これはどうだ?」
 ヘロン号が怪獣に向かって急降下して行きます。怪獣はそれを見上げました。
「今度はなにをする気?」
 橋本隊員が叫びました。
「ガトリング砲発射!」
 ヘロン号がガトリング砲発射。それに対し、怪獣も火焔を吐きました。
「甘いんだよ!」
 すると、なんと火焔がガトリング砲の20mm銃弾を消し去ってしまいました。ヘロン号が旋回。コックピットの橋本隊員が横目で怪獣を追いながら
「くそーっ! ガトリング砲も効かないのかよ!」
 そのヘロン号を怪獣が眼で追ってます。
「よーく狙って撃てば、絶対当たるはず!」
 怪獣がまたもや火焔を吐きました。それをきりもみ回転で逃げるヘロン号。その瞬間橋本隊員が得意顔を見せました。
「おっとーっ!」
「そこだ!」
 怪獣は火焔を吐いたまま、首を少し振りました。ヘロン号の目の前に火焔が。
「うわっ!」
 ヘロン号が空中で大爆発。その直後、2つの落下傘が降りてきました。橋本隊員と倉見隊員です。橋本隊員は悔しがってます。
「くそ・・・」
 怪獣は振り向き、ストーク号を見ました。それに気づいて、寒川隊員と上溝隊員は焦りました。
「ええ~!」
 怪獣はニヤっとしました。
「次はお前だ」
 寒川隊員は叫びました。と言っても、かなりうわずった叫びです。
「に、認識ステルス機能発動!」
 するとストーク号は消滅しました。
「ふっ、またへんちくりんな魔法を使いやがって! これでどーだ!」
 怪獣は火焔を吐きながら、360度回転。途中火焔が何かにヒットし、爆発。そこからストーク号が現れ、火を噴きながら墜落していきます。コックピットでは寒川隊員も上溝隊員も気を失ってます。その光景を橋本隊員が見ています。その橋本隊員は針葉樹のかなり高いところに落下傘が引っかかってしまい、ぶら下がっている状態になってました。
「や、やばい・・・」
 が、ここで1つの大きな人影が現れました。その人影が燃え盛るストーク号を両手でキャッチ。その人影は巨大化した女神隊員でした。橋本隊員は喜びました。
「よし!」
 女神隊員はそのまま湖まで走り、ストーク号を湖面につけ、ストーク号を消火。女神隊員がここでつぶやきました。
「ふーっ、間に合った・・・」
 女神隊員がストーク号を湖畔に置くと、横からの視線を感じました。女神隊員が振り向くと、怪獣が自分をにらんでました。
「ふふ、ついに来たか。
 私はお前を殺す。神に殺された仲間の恨みを晴らしてやる!」
 女神隊員も怪獣をにらみます。
「あいつには光線技は一切効かない。となると、残る手は・・・」
 怪獣が軽く火焔を吐きました。女神隊員はそれを軽く交わしました。怪獣は再び火焔を吐き、女神隊員は再び交わしました。怪獣は思いました。
「ふふ、ここじゃ、ブレスは有効打にはならないか・・・ ま、自分で選んだ場所だ。できる範囲でお前を倒してやる!」
 怪獣は翼をはためかせました。そして浮上し、女神隊員に突っ込んでいきます。女神隊員はぶつかる寸前、さっと横に避けました。通り過ぎた怪獣は、直後口の中で炎を溜めます。
「ここで決める!」
 怪獣は振り向きざま火焔を吐きました。
「死ねーっ!」
 が、そこには女神はいません。怪獣は焦りました。
「ええ?・・・」
 女神隊員は怪獣の上で大きくジャンプしてました。その手には剣が握られています。女神隊員は剣を下にして墜ちてきました。そして・・・
 女神隊員の剣は怪獣の左側の翼の付け根にぐさりと刺さりました。そのまま2つの身体は絡み合って地面に激突。その瞬間剣はさらに深く刺さり、怪獣は悲鳴をあげました。
「うぎゃーっ!」
 一方女神隊員の身体は山肌を転がり、ダム湖に落ちてしまいました。怪獣は消え消えの意識の中で、湖畔の道路に手をかけ、陸に上がろうとしている女神隊員を見ました。
「あは・・・ やっぱり女神だ、とっても強いや・・・」
 怪獣は最後の力を振り絞って、翼をはためかせ、浮上しました。と、怪獣の目の前に巨大な魔法円が現れました。
「ここには何もなかった。あったのは私の敗北だけだった・・・」
 怪獣は魔法円の中に入っていきました。そして魔法円は消えました。女神隊員はそれを見上げてました。

 それから数時間後、大病院の1人部屋の病室のベッドに上溝隊員が寝かされてます。その左足には骨折治療用のコルセットがあります。顔面右半分は包帯で覆われてます。上溝隊員はつぶやきました。
「ああ、もう・・・」
 別の1人用の病室のベッドに寒川隊員が寝かされてます。その左腕には骨折治療用のコルセットがあります。寒川隊員はつぶやきました。
「くそーっ・・・」
 別の1人用の病室のベッドに倉見隊員が寝かされてます。その右脚には骨折治療用のコルセットがあります。倉見隊員はつぶやきました。
「参ったなあ・・・」
 別の1人用の病室のベッドに橋本隊員が寝かされてます。その右腕には骨折治療用のコルセットがあります。橋本隊員が申し訳なさそうに発言しました。
「すみません・・・」
 その橋本隊員を香川隊長が見てます。隊長は車いすに乗ってました。
「まったくお前ら、揃いも揃って・・・ おまえらのせいでオレは今日退院になったよ。まだ1週間は寝てなくっちゃいけないのにさ・・・」
「女神がいるじゃないですか」
「あは、あいつはストーク号の免許もヘロン号の免許も持ってないし、それ以前にクルマの免許も持ってないんだぞ。そーいや、さっき警察から抗議の電話が来たなあ。あいつ、バイクを盗んだうえに、そのバイクを無免許で乗り回したんだそうだ」
「バイクを? それで現場に来たんですか?」
「ああ、その通り。正当な理由でバイクを盗んで、無免許で乗ったんだ。いくらなんでもこれは問題ないだろ。この抗議は無視することにしたよ」
 隊長は車いすを回転させました。
「じゃ、今から退院の手続きをしてくるよ」

 すでにあたりは暗くなってます。ここは病院の玄関の前です。今自動ドアが開き、白いワンピース・白い帽子姿の女性と、杖(ロフストランドクラッチ)をついた私服姿の隊長が出てきました。それを遠くから見ている報道カメラマンたちが色めき立ちました。
「お、おい、あれはテレストリアルガードの隊長じゃなのいか?」
「じゃ、隣りにいる女はヘルメットレディ?」
 カメラマンたちは慌ててシャッターをバシャバシャと切り始めました。
「よーし、特ダネだ!」
 2人の前にタクシーが停まりました。白い帽子の女は、タクシーのトランクに持っていたかばんを入れました。女がトランクを閉めると、隊長はその女に会釈しました。女も帽子を取って会釈しました。するとその女の眼はふつーに2つありました。それを見てカメラマンたちはがっくしです。
「ちっ、なんだよ。ふつーに眼が2つあるじゃないか」
 隊長が後部座席に座りました。タクシーが走り始めました。

 そのタクシーの車内です。今隊長の横に頭が1つすーっと現れました。それはウィッグをかぶった女神隊員です。実は女神隊員は始めっからタクシーに乗ってたのです。ずーっと頭を下げてて、ここでようやくふつーの姿勢になったようです。隊長はその女神隊員を見て、
「あんたも大変だなあ」
 女神隊員は白い帽子をかぶりながら、
「あは、もう慣れてきました」
 隊長はタクシーの運転士に話しかけました。
「あ、運転士さん。下溝通りと片倉通りの交差点に行ってくれないか」
 タクシーの運転士さんはテレストリアルガードの基地に行くつもりだったので、ちょっとびっくりです。
「ええ? あ、はい、わかりました」
 隊長は女神隊員の白い帽子に注目しました。
「ん? 今日はク○リの帽子じゃないのか?」
「私は精神崩壊したくないし、蜂の巣にもなりたくないし、自爆もしたくないし・・・」
「あは、そっか。でも、実はク○リは生きてたんだぞ」
「そうなんですか?」
「ま、次のシーンでは遺影になってたが」
「やっぱり死んでたじゃないですか」
 タクシーは快調に走ってます。隊長と女神隊員の会話は続いてます。女神隊員の質問です。
「あの怪獣はなんだったんでしょう?」
「さあな、オレもわからんよ。ま、これはオレの推測だが・・・
 あの怪獣はどこか別の次元からやってきたんじゃないかな? そしてまた別の次元に行った。たぶんあの怪獣は、次元の壁を平気で乗り越える能力を有してたんだろう」
「あの怪獣は死んだんでしょうか?」
「あは、さすがにそれはわからんなあ。どちらかと言えば、あの怪獣に剣をぶっ刺したあんたの方がわかるんじゃないのか?」
「あは、私にもわかりませんよ。でも、剣で刺したとき、意外と手応えはなかったんですよ」
「そっか。じゃ生きてんかもな」
 タクシーの運転士さんが隊長に呼びかけました。
「そろそろ言われた場所に着きますが?」
「ああ、そっか。じゃ、その信号の手前の駐車場に入ってくれないか」
 タクシーが言われた通り、駐車場に入りました。なんとそこは牛丼屋でした。それを見て女神隊員は唖然としてしまいました。
「あ、あの、隊長?・・・」
 隊長の側のドアが開きました。隊長はそこから降りる体勢です。
「塩分か? お前も上溝と同じこと言うのか?」
 女神隊員は呆れてしまいました。隊長はタクシーから降りました。
「塩分が濃いみそ汁さえ飲まなきゃ、別に問題はないだろ。先にテレストリアルガードの基地に帰っててくれ」
 タクシーが走り出しました。隊長は杖をつきながら店舗に向かいました。
「まったくどいつもこいつも、塩分を取るな、塩分を取るなって、うるさいんだよ! オレは1週間に1回牛丼を喰わないと、身体中にじんましんが出る体質なんだ!」
 隊長、そんな体質は聞いたことがないですよ。
 隊長は店舗に入りました。
「いらっしゃーい!」
 さっそく店員の威勢のいい声が響いてきました。隊長はイスに座りながら注文です。
「大盛1つ」
「はい、大盛1つ!」
 すぐに隊長の目の前に大盛の牛丼が運ばれてきました。隊長はさっそく箸を取りました。
「あは、ようやく好きなものが食えるぞ!」
 さっそく1口目。しかし、その瞬間隊長の顔色は変わりました。
「しょっぱい。なんてしょっばいんだ?・・・ オレは今までこんな塩の塊のようなものを喰ってたのか?・・・」
 隊長は1ケ月程度減塩料理を食べてきたせいか、減塩料理に身体が慣れてしまったのです。日本の外食産業は異様なほど料理に食塩を混ぜてます。減塩料理に慣れてしまった人からみたら、外食産業の料理のすべては食塩の塊なのです。
 隊長は残念な顔で箸を置きました。そして店員に話しかけました。
「すまないが、勘定してくれないか?」
「あ、はい・・・」
 店員は不思議な顔で隊長を見ました。
 隊長が店舗から出てきました。隊長はつぶやきながら杖をついて歩いて行きます。
「ひどい味だなあ・・・ ここはジェノサイド企業なのか?・・・」

女神「神の国を侵略した龍」6

2017-08-26 20:17:36 | 小説
 それからしばらくして、女医さんは外来患者を診察してました。と、突然診療所が大きく揺れました。
「なんだなんだ? 地震か?」
 女医さんが外に出ると、怪獣が上空を旋回してました。あの女が怪獣に変身したのです。怪獣は女医さんを見てつぶやきました。
「ありがとう」
 女医さんもつぶやきました。
「せっかく助けたんだ。死ぬなよ」

 一方こちらは大病院の病室の女神隊員。女神隊員は今テレストリアルガードの隊員服を着てます。頭にはフルフェイスのヘルメットがあります。実はたった今医師から退院許可が出たのです。だからとってもうきうきわくわくしてるのです。と、突然備え付けの固定電話が鳴りました。女神隊員は慌ててその電話に出ました。
「はい、もしもし・・・ ええ?」
 ここはテレストリアルガードサブオペレーションルームです。橋本隊員が固定電話に出ています。
「悪いが迎えに行けなくなった。例の怪獣がまた出たんだ」
「どこに出たんですか?」
「言えないな。あんた、テレポーテーションで来るだろ」
 女神隊員は心の中で「ちぇっ」と言いました。
 橋本隊員が電話を切りました。そして後ろに並んでいる倉見隊員・寒川隊員・上溝隊員に命令です。
「よし、お前ら、行くぞ!」
「はい!」

 テレストリアルガードの格納庫の前の滑走路。今ストーク号とヘロン号が垂直に浮上しました。ストーク号のコックピットには寒川隊員と上溝隊員、ヘロン号には橋本隊員と倉見隊員が座ってます。今日は隊長がまだ入院中なので、倉見隊員が隊長のシートに座ってます。ストーク号はジェイダム爆弾とバンカーバスターを満載してます。ヘロン号は機動性を優先していつもは4割くらいしかミサイルを積んでないのですが、こちらもミサイルを満載してます。
 ヘロン号のコックピットに座ってる、シールドとマスクをしている橋本隊員が命令です。
「よーし、ジャンプ!」
「了解!」
 ストーク号とヘロン号がふっと消えました。

 一方女神隊員ですが、病室でヘルメットをかぶったまま、ノートパソコンであの掲示板を見ています。
「今怪獣が通り過ぎて言った」
「すごい風圧だったよ@佐川市」
 女神隊員はそれを読んで、
「佐川市?」
 女神隊員は今度はノートパソコンで地図を広げました。
「佐川市はここかあ・・・」
 実は女神隊員は以前脳震とうを起こしたとき、それからしばらくはテレポーテーションができなくなったことがありました。正確にはテレポーテーション自体はできたのですが、テレポーテーションの先でひどい頭痛に襲われたのです。今佐川市にテレポーテーションしたら、またあの頭痛に襲われるかも・・・ 女神隊員は熟考し、とりあえず1回だけ試してみることにしました。
 女神隊員は覚悟を決めると、部屋の隅にかけてある千羽鶴を見ました。実はあの日以降も千羽鶴は届けられてました。しかも日を追うごとに千羽鶴は増えて行き、いまや3千羽となってました。全部小学生が折った鶴です。女神隊員はその千羽鶴に話しかけました。
「行ってくるね」
 女神隊員の姿は、ふっと消えました。

 ここは街道です。歩道に黒い渦巻きが発生し、女神隊員が現れました。が、そのとたん、女神隊員は頭を、いや、ヘルメットを抱え、うずくまってしまいました。思った以上の頭痛が襲ってきたのです。
「いたたた~ やるんじゃなかった・・・」
 しかも、狙ったところとはちょっと違うところにテレポーテーションしてしまったようです。
 そこに1台のバイクが停まりました。750ccのバイクです。女神隊員のフルフェイスのヘルメットとテレストリアルガードの隊員服は、ある意味ライダーの姿です。傍らに停まったライダーは、別のライダーが事故を起こしたと勘違いしたようです。ライダーはバイクを降り、女神隊員に駆け寄りました。
「お、おい、大丈夫か?」
「あはは、ごめん」
 女神隊員は自分のヘルメットの首筋に手をかけました。そしてヘルメットを脱ぎました。すると女神隊員の単眼があらわになりました。それを見てライダーは腰を抜かしてしまいました。
「う、うわ~っ! 一つ眼小僧!」
 女神隊員は急いでヘルメットをかぶり直すと、バイクにまたがりました。
「ごめんね」
「ちょ、ちょっと待って!」
 バイクは走り出しました。ライダーは腰を抜かしたままです。バイクに乗った女神隊員は、走りながら鼻唄を唄ってます。
「ぬ~すんだバイクで走りだす~」

 はてしなく続く森林の上を怪獣が飛行してます。その後ろを航空自衛隊のF2戦闘機が7機追ってます。さらにその後ろにはテレストリアルガードのストーク号とヘロン号が並んで飛んでます。ヘロン号のコックピット。シールドとマスクをしている橋本隊員。
「ふっ、宇宙人が相手だとうちらが優先だが、怪獣が相手だと真っ先に現場についた方が優先か」
 それに倉見隊員が応えました。
「ここは自衛隊の腕前を拝見しますか」
 怪獣の眼から見た光景。森林がはてしなく続いてます。遠くにダム湖が見えてきました。その湖を越えて行きます。怪獣はここでつぶやきました。
「ここまでくれば、もう人間はいないな」
 山肌が剥き出しになってる山が見えてきました。怪獣はこの山に着地する気のようです。ブレーキをかけるように翼を大きく広げ、怪獣は山に着陸しました。怪獣が見上げると、7機のF2戦闘機が迫ってきます。怪獣はつぶやきました。
「久しぶりにこの魔法使うけど、ちゃんと使えるかな?」
 F2戦闘機が一斉にミサイルを発射。それが怪獣に向かって飛んできます。
「はーっ!」
 怪獣が気合を入れると、怪獣が半透明なドームのようなものに包まれました。ミサイルが次々とその半透明なものに着弾していきます。ものすごい爆炎が上がりました。が、爆煙が収まると、半透明なドームは何も変化してません。F2戦闘機のパイロットはびっくりしてます。
「き、効いてない?・・・ もう1回攻撃するぞ!」
 再びF2戦闘機が一斉にミサイルを放ちました。それがすべて半透明なものに当たりますが、やはり何も変化しません。ドームの中では怪獣が眼を不気味に光らせ、悠然と構えています。怪獣は遠くに浮いているストーク号とヘロン号を見ていました。
「あいつらは女神の仲間。あいつらを攻撃すれば、きっと女神は現れるはず!」
 ヘロン号のコックピット、橋本隊員がつぶやきました。
「怪獣のやつ、ぜんぜん反撃しないな。やられっぱなしじゃないか」
 それに倉見隊員が応えました。
「でも、ぜんぜん効いてませんねぇ」
 F2戦闘機の一方的な攻撃がまだ続いてます。と、そのパイロットの1人が無線で発言しました。
「残弾少なくなってきました」
 それに別のF2戦闘機のパイロットが応えました。
「仕方がないな。一度離脱しよう」
 そのパイロットは横目でストーク号とヘロン号を見て、
「ちょっとの間、やつらに任せてみるか」
 F2戦闘機7機が一斉に帰路につきました。ヘロン号の倉見隊員はそれを見て、
「自衛隊はお帰りか」
 それに橋本隊員が応えました。
「じゃ、始めるか!」
 ストーク号とヘロン号のジェットエンジンに火がつき、怪獣に向かって飛び始めました。怪獣はそれを見てつぶやきました。
「ふふ、きたか!」
 怪獣はドーム型バリアを解除し、羽ばたきました。そしてそのまま浮上し、ストーク号とヘロン号に突っ込んで行きます。
「いくよーっ!」
 橋本隊員が命令です。
「ミサイル発射!」
 それに倉見隊員と上溝隊員が応えました。
「了解!」
 ストーク号とヘロン号が同時にミサイル発射。怪獣はそれを見て、
「甘い!」
 怪獣が火焔を吐き、それらのミサイルをすべて破壊。さらにその火焔はストーク号とヘロン号を襲います。ストーク号とヘロン号は左右に分かれてこの火焔を回避。橋本隊員は横目で怪獣を見ました。
「まともにミサイルを撃つと、撃ち落とされるか・・・ 考えないといけないな・・・」
 一方怪獣は目でヘロン号を追います。
「ふふ、ここにはあの密林のような高い建物はないぞ!」
 怪獣はヘロン号に火焔を吐きました。ヘロン号はきりもみ回転でこの火焔を避けます。橋本隊員が発言しました。
「くそーっ! 遮蔽物がないところで火焔を吐かれると、逃げるのが大変だ・・・」
 ストーク号がミサイルを4発発射。怪獣は振り向きざま火焔を吐き、そのミサイルを破壊。さらに火焔が伸びてきてストーク号を襲います。寒川隊員が焦ります。
「うわっ!」
 ストーク号はぎりぎり火焔を避けました。それを見て倉見隊員は一安心。
「ふーっ!」
 橋本隊員が無線で命令です。
「ストーク号じゃ大き過ぎて勝負にならないな。お前ら、下がってろ!」
 それにストーク号の寒川隊員が応えました。
「了解」
 寒川隊員はつぶやきました。
「あ~ 悔しいなあ・・・」
 上溝隊員はそれに応えました。
「仕方がないわね」
 ストーク号は旋回して転進しました。

 この現場からちょっと離れた湖畔のアスファルト舗装路を1台のバイクが走ってます。ライダーは女神隊員です。女神隊員はテレストリアルガードと怪獣の交戦を見てつぶやきました。
「ふふ、始まってる、始まってる・・・」