のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「宇宙人受難之碑」7

2017-07-31 07:57:51 | 小説
 この道路の終点はちょっと大きな駐車場でした。2台のクルマがこの駐車場に入ってきました。2台のクルマが停車。ライト消灯。7人が2台のクルマから降りてきました。軽自動車を運転してきた男が空を見上げました。満月に近い月が出ています。その月のせいで、あたりはそれほど暗くありません。
「ふ、ちょうどいい明るさだ」
 それに軽自動車の助手席に乗っていた男が応えました。
「こりゃあ、懐中電灯はいりませんねぇ」
 1.5ボックス車を所有する男が、自身のクルマのハッチバックを開けました。男はそこからハンドブレーカーを取り出し、抱え上げました。ほかの男4人はそれぞれ巨大ハンマーと巨大バールを手に取りました。女の子2人は1台の発電機を2人がかりで持ちました。2人で両端を持つという感じです。
「よし、行くぞ!」
 7人が駐車場の奥にある石碑、宇宙人受難之碑に向かって歩き始めました。1.5ボックス車を運転してきた男が、隣りを歩く男を見てはっとしました。その男はムービーカメラで撮影しながら歩いてるのです。
「お、おい、まさかライブ配信してるんじゃないだろうなあ?」
 男は笑いながら応えました。
「まさかあ~ オレたちゃこれから違法行為を行うんですよ。そりゃあライブ配信できないでしょ。編集で顔は消して、あとでようつべに上げるんですよ」
「あは、そっかぁ。ま、ふつーに考えたらライブ配信はしないよなあ。あははは」
 7人が石碑に近づいてきました。と、そのとき謎の声が。
「ようやく来たか、ずいぶん待たせやがって!」
 その声で7人の歩みが止まりました。軽自動車の後部座席に乗ってた女の子は、特にびびってます。
「な、なんなのよ、これ?」
 石碑の両側からそれぞれ1つずつ人影が出てきました。先ほどの女の子は思わず発電機を落とし、悲鳴を上げました。
「きゃーっ!」
 軽自動車を運転してきた男が、
「だれだ!」
 月灯りが2人の顔を照らしました。それは私服姿の橋本隊員と倉見隊員でした。再び軽自動車を運転してきた男の発言です。
「お前ら、警察か?」
 倉見隊員の発言です。
「いや、警察じゃないな」
 橋本隊員の発言です。
「お前ら、凶器準備集合罪て知ってるか? オレたちゃ警察じゃなくても、お前らを現行犯逮捕できるんだぜ」
 それに軽自動車の助手席に乗ってた男が過剰に反応しました。
「ふざけんな!」
 男は持っていた大きなバールを振り上げ、橋本さんに向かって一直線に走り始めました。
「うおーっ!」
 男は明らかに橋本隊員に危害を加えるつもりです。それを見て橋本隊員は不気味に笑いました。
「あは、こりゃあ正当防衛成立だな」
 橋本隊員はさっとレーザーガンを取り出し、男の頭部を撃ちました。男の首から上が木端微塵に吹き飛び、走っていた男の身体はスローモーションのようになり、最後崩れ落ちました。頭がなくなってしまった男の首から、血がドクドクと流れて出てきます。それを見て軽自動車の後部座席に座ってた女の子がまたもや悲鳴を上げ、その場にへたりこんでしまいました。それ以外の5人も、かなりびびってます。軽自動車を運転してきた男の発言です。
「レ、レーザーガン? レーザーガンてテレストリアルガードしか持ってない武器だろ? お前ら、テレストリアルガードの隊員なのかよ?」
 それに橋本隊員が対応しました。
「だったら、どうする?」
 1.5ボックス車の男は、隣りのムービーカメラを持った男を見て、
「バカか? こっちは一部始終録画してあるんだよ! 全部ようつべに公開してやるからな!」
 と、ここで謎の声が。
「おいおい、ようつべに上げるときは、編集しちゃだめだぞ。ありのままを上げろよ」
 6人は驚き、その声がした方向を見ました。
「な、なんだ、今の声は?」
 すると木陰からムービーカメラを持った私服の寒川隊員が現れました。
「こっちだって、録画してあるんだよ」
 軽自動車の男はほぞを噛みました。
「くそーっ!」
 5人はハンマーやバールなどを放棄して、2台のクルマに向かって逃げ出しました。
「覚えてろよ!」
 腰砕け状態だった女の子は、慌てて立ち上がり、この5人のあとを追い駆けました。
「待って! 待ってよーっ!」
 1.5ボックス車のクルマが走り出し、ワンテンポ遅れて軽自動車が走り始めました。それを橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員が見送ってます。橋本隊員はスマホを取り出し、電話をかけました。
「あ、隊長・・・ やつらは帰りました・・・ はい、1人殺しました。大丈夫ですかねぇ?」
 テレストリアルガードサブオペレーションルームです。隊長がテーブルに座って固定電話に出ています。
「ふっ、何か問題が起きたら、いろいろと手を回してやるよ。こっちは法務省や最高裁にもつてがあるんだ」
 再び橋本隊員です。
「ふ、期待してますよ」
 橋本隊員はスマホを切りました。
「さて、帰るとするか」
 橋本隊員はリモコンを取り出して、それを右手に持って、頭上高く掲げました。すると橋本隊員の頭上にストーク号がこつ然と現れました。どうやら認識ステルス機能で隠していたようです。橋本隊員は倉見隊員と寒川隊員を見て、
「さ、帰ろっか」
 2人が返事しました。
「はい」

 再びテレストリアルガードサブオペレーションルームです。テーブルに座ってる隊長が巾着のような小さな布製の小袋を取り出しました。隊長はその小袋をテーブルの上でひっくり返しました。すると小さな石ころが出てきて、テーブルの上を転がりました。隊長はその小石を持つと、ニコッと笑い、その小石をぎゅっと握りました。その瞬間隊長の顔が真剣になりました。何か念を込めてるようです。

 片側が深い崖の山道です。1.5ボックス車が逃げるように走ってます。その車内です。ドライバーがうだうだと文句を言ってます。
「くそーっ、テレストリアルガードてオレたち地球人を守ってくれる組織だろ? なんでそんな組織に殺されなくっちゃいけないんだよ?」
 助手席に座ってる男は、さっきまで録画してたムービーカメラを見て、
「ともかくこの映像をようつべに上げるよ。テレストリアルガードの凶行を日本人全員に見てもらうんだ!」
 と、このクルマの行く先に、路上に佇む人影が見えてきました。黒装束で黒いフードをかぶった男です。手には死神のような鎌が見えます。どうやらあのブサメンを殺した怪物のようです。
「な、なんだよ、ありゃ?」
 黒装束の男がジャンプして、クルマに向かって飛んできました。それを見てこのクルマを運転している男が驚きました。
「ええ?」
 黒装束の男のフードが風圧で飛びました。その瞬間一つ眼のドクロの顔が思いっきりあらわになりました。それを見て車内にいる4人全員が恐怖に包まれました。
「バ、バケモノだーっ!」
 怪物が鎌を振り上げました。そして鎌をスイング。鎌は窓ガラスやハンドルをスルーして、運転している男を袈裟斬り。男の身体に衝撃が走ります。
「うぐっ!」
 クルマはコントロールを失い、崖の方へ。助手席の男が悲鳴をあげます。
「うぎゃーっ!」
 クルマがガードロープを突き破り、そのまま落下。途中崖から突き出てる岩にバウンドし、さらに下の川へ。そして川のほとりの大きな岩石に激突し、大爆発。

女神「宇宙人受難之碑」6

2017-07-30 15:10:31 | 小説
 ここはブサメンのアパートの部屋です。相変わらず汚い部屋、こんなに不衛生な部屋はほかにあるんかいな、てくらいの汚い部屋です。雨戸は閉めてなかったのか、陽光が部屋の中に差し込んでます。今ブサメンがドアを開け、部屋に入ってきました。ブサメンはパソコンの前に座り、
「よーし、全部書いてやるからな!」
 ブサメンはパソコンのメインのスイッチを入れ、ディスプレイを見ました。当然画面はまだ真っ黒。ブサメンの顔が反射してるだけ。いや、そのブサメンの真後ろに、黒いフードをかぶった男の姿もあります。男は死神が持ってるような鎌を持ってます。それに気づいたブサメンは唖然としました。そして、ゆっくりゆっくりと振り向きました。が、誰もいません。
「おかしいなあ・・・」
 パソコンが立ち上がりました。
「よーし、書くぞ! へへ、警察に復讐してやる!」
 が、またもやブサメンの真後ろに鎌を持った黒装束の男が立ってます。ブサメンは今度は高速で振り返りました。が、やはり誰もいません。
「おかしい。誰かいる。絶対に誰かいる・・・」
 ブサメンは大声で、
「おい、誰だよ! 誰がいるんだよ?」
 と、突然テレビがつきました。
「うわーっ!」
 ブサメンは大声を出して、座布団をかぶりました。
「じょ、冗談じゃねーよ! なんなんだよ、これ?」
 ふつーの男だったら一目散に部屋の外に逃げるてパターンですが、このブサメンはニートな上にほぼ引き籠り。外に逃げるという選択肢がないようです。
 ブサメンは頭に載せた座布団をそーと避けました。特に異常は起きてないようです。
「ど、どうしよう・・・
 そうだ!」
 ブサメンはパソコンであの巨大掲示板に入りました。
「オカルト板、オカルト板・・・」
 ブサメンはキーボードに文字を打ちました。
「誰か助けてください 今オレの部屋の中に死神がいるんです・・・
 誰か、誰か何かいい方法を教えてくれよ・・・」
 しかし、返ってくるレスは、
「メンヘラ発見wwwww」
「はいはい かまってちゃん かまってちゃん」
 そんな言葉ばかり。ブサメンはそれを見て、
「おーい、誰か真面目に応えてくまれよ!」
 と、そのブサメンの顔のすぐ横に、何か得体の知れないものが浮いてます。ブサメンはそれに気づいたらしく、恐る恐るその方向に顔を向けました。そこには黒いフードをかぶった男の頭部がありました。
「うぎゃーっ!」
 ブサメンはエビのように高速で後ずさりしました。
「な、なんなんだよ、お前は!」
 黒装束の男は自分のフードに手を掛けました。そしてフードを取ると・・・ なんとその男は一つ眼のドクロだったのです。
「うぎゃ~!」
 ついにブサメンは部屋を飛び出しました。
「助けてくれーっ!」
 ブサメンは超特急で階段を降りました。と、その足下に突如鎌が現れ、ブサメンの足を引っかけました。
「う?」
 ブサメンの身体は思いっきり宙を舞いました。
「うわーっ!」
 ブサメンの目にものすごいスピードで地面が近づいてきます。
「や、やめろーっ!」
 ふつーの人間だったら本能的に手で顔を防ぐのですが、ニートでほぼ引き籠りのブサメンだと、そんな反射神経は持ち合わせてません。ブサメンは顔面から地面に叩きつけられてしまいました。その瞬間カボチャが潰れるような音が。ワンテンポ置いて、宙に浮いてたブサメンの脚がゆっくりと地面に落ちました。この凄惨な光景を誰かが見てたようです。けたたましい悲鳴と、
「おい、救急車だ! 救急車!」
 の声が。ブサメンの顔から血が噴き出してるようで、彼の頭部はあっという間に血の海に沈んで行きました。

 テレストリアルガードのサブオペレーションルームに海老名隊員が入ってきました。
「ただいま~」
 隊長はテーブルでノートパソコンでインターネットをやってました。隊長は振り返り、
「おかえり」
「あ、隊長、それ、私のパソコン!」
「いいだろ、たまには。
 どうやら今夜決行するようだな。一応50人くらい来ると言ってるが、まぁやつらのことだ。来たとしてもせいぜい10人くらいだろうなあ・・・」
「私も行きたいなあ」
「だめ」
「ええ~ どうして?」
「お前、まだJCだろ。18になるまで待ってろ」
「ちぇっ」

 月明かりがまぶしい夜です。山間部にある小さな駅。どうやら無人駅のようです。今4人の男女が駅から出てきました。それを3人の男女が出迎えました。
「みなさん、どうも」
「初めまして。どうもどうも」
 7人がそれぞれ握手しました。その中の1人、列車組の男の1人が発言しました。
「しかし、すんごいところですなあ。電車が2時間に1本しかないなんて」
 それを出迎え組の男の1人が、
「いや~ ここは電車じゃないですよ。まだ電化されてませんから」
 なんかかみ合わない会話をしています。と、別の出迎え組の女の子の1人が、列車組の男の1人が持ってきたプラスチック製の四角いケースに注目しました。
「それは?」
「ふふ、これは・・・」
 男はそのケースを開けました。それは充電式インパクトドライバーでした。
「ジャーン! インパクトドライバーですよ。これで石碑をぶっ壊すんです!」
 それを見て別の男が、
「ダメダメダメ! そんなものじゃ、石碑は壊れないって!」
 男は駅前の道端に駐めてあるクルマの後部に行きました。1.5ボックスタイプのクルマです。どうやら彼のクルマのようです。男はハッチバックを開けました。そこには巨大なハンマーや巨大なバールがあります。それを見て一同が感嘆な声をあげました。
「おお~っ!」
 その中でも特にすごいのは、巨大なハンドブレーカー。男はそのハンドブレーカーを抱え上げました。
「これくらいないと石碑は壊せませんよ!」
「こりゃあすごいですねぇ。あなた、解体屋?」
「いや~ 親父が解体工なんですよ。今日は借りてきました!」
「こいつぁ頼もしいですなあ! じゃ、行きますか」
 7人が2台のクルマに分乗して出発しました。

 2台のクルマが山道を走ってます。かなりきれいに整備された道です。先頭を走る軽自動車の車内。先ほどの2人の男の会話が続いてます。まずは助手席の男の発言。
「ずいぶんと立派な道ですねぇ」
 運転してる男の返答。
「これ、石碑を設置するためだけに作った道なんですよ。あんなキモいエイリアンのために税金をジャブジャブ使うなんて、最低ですよ」
「ダメだなあ、日本政府は。こんなものを作る金があるんなら、戦闘機やミサイルをもっともっと作ればいいのに」
「石碑は絶対破壊しないといけないですねぇ」
「ところで今日、50人来るって話だったけど?」
「まあ、この手のオフ会の参加人数は、だいたいこんなものですよ」
 ここで後部座席に座ってた女の子が口を挟みました。
「それなんですが、噂では例の写真をネットに上げた人が、今朝死んだみたいなんです。それにびびって、たくさんの人が回避したみたいなんです」
 運転席と助手席の男2人は、それを聞いてびっくりです。
「ええ~?」
 女の子はさらに話を続けました。
「なんでもその人はオカルト板に、誰か助けてください 今オレの部屋の中に死神がいるんです、て上げた直後に、階段から落ちて死んだようなんです」
 これで2人の男はさらにびびるかと思いきや、
「あは、なんだよ、それ? 今時死神ってw」
「若干ゃ草の世界ですなぁ」
 2人の男は思わず高笑いを始めてしまいました。後部座席の女の子はそれを見て元々感じていた嫌な予感が、悪寒に変わったようです。

女神「宇宙人受難之碑」5

2017-07-29 13:48:01 | 小説
 ふもとです。滑り落ちてきた男の身体がようやく止まりました。男は完全にグロッキー状態です。顔がひどく腫れあがってます。女神隊員がその男の前に立ちはだかりました。女神隊員は右手を高く挙げました。するとその手に剣が現れました。女神隊員は両手で剣を握り、振り上げました。男の顔面に剣を突き立てる気です。
「いいぞ、ヘルメットレディ!」
「やれーっ! やっちまえーっ!」
「エイリアンなんか、ぶち殺しちまえーっ!」
 いつのまにか集まってきた人々が大声で叫んでます。それはさっきの子どもたちとは真逆な声でした。その声が気になってしまい、女神隊員は手を止めました。彼女は何か疑問を持ったようです。今私がやってる行為は、テレストリアルガードの隊員として正しい行為なのか?
「な、なんだよ! エイリアンなんか斬り刻んじまえよーっ!」
 その憎悪に満ちた言葉を聞いて、女神隊員は振り向き、その言葉を発した男をにらみつけました。ま、女神隊員はフルフェイスのヘルメットを被ってます。そのせいで外から眼がみえません。にらみつけたところで、あまり意味がないのですが。
 女神隊員は考えました。女神隊員の今日の目的は、ヘルメットを脱いで自分の顔をさらすこと。自分の顔をさらして、5000の同胞の名誉を回復させることでした。でも、こんなに憎悪に満ちたやつらに自分の素顔を見せたら、今度は自分が憎悪の対象になってしまいます。
 女神隊員はすべてを諦めました。すると剣が粒子単位で砕け散り、消失しました。次の瞬間、女神隊員の姿そのものが消えてしまいました。さっきまで声援を送ってた人々はびっくりです。
「お、おい、どこいっちまったんだよ?」

 強い夕陽の中、女神隊員が縮小・等身化して路地に降り立ちました。女神隊員は今ひどい自己嫌悪に襲われてます。今日私はみんなに顔をさらす覚悟でここに来たのに、できませんでした。やっぱり私は弱い存在なんだ・・・
 女神隊員はヘルメットを脱ぎました。そしてそのヘルメットを思いきりアスファルトに叩きつけました。あらわになったその単眼は泣いてました。思いっきり泣いてました。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
 突然のその言葉に女神隊員ははっとし、振り返りました。そこには5歳くらいの女の子が立ってました。女神隊員は何かを言いました。が、女の子の頭の上には?が浮いてます。そう、女神隊員は自動翻訳機がないとこの星の人とは会話できないのです。女神隊員は慌ててヘルメットを拾い上げ、かぶりました。
「ご、ごめんなさい」
「お姉ちゃんはヘルメットレディ?」
「うん、そうだよ」
「うわ~ かっこいい~」
「でも、私は宇宙人なんだ。見たでしょ。私の眼は1個しかないんだよ。
 あなたは宇宙人が嫌い?」
「うん、嫌い。でも、お姉ちゃんは違うよ。お姉ちゃんは私たちのために戦ってくれてるもん」
「あ、ありがと・・・」
 女神隊員はその言葉に、何か救われたような感覚を覚えました。

 ここは病室のようです。どうやら女神隊員がテレストリアルガードの隊員になったとき、最初に居室として与えられた無菌室のようです。今ベッドに1人の男が寝かされてます。女神隊員にズタボロにされた男です。今は縮小・等身化してます。男の周りにはたくさんの医療器具がおいてあります。男の左眼の下に貼られたガーゼがとても痛々しく見えます。
「う、うう・・・」
 男が意識を回復させたようです。目の前には白衣の男が立ってます。
「ん、意識が回復したな」
 白衣の男は歩き始めました。
「じゃ、あとは勝手に」
 白衣の男はドアを開け、出て行きました。患者の男はふと別の人影を感じ、今度は反対方向を見ました。その人影はフルフェイスのヘルメットをかぶった女神隊員でした。男は女神隊員を見て微笑みました。それを見て女神隊員は驚きました。この男は私を見たらきっとおじけづくと想像してたからです。
 女神隊員はヘルメットを脱ぎました。そして頭に小さなヘッドセットを装着しました。
「ごめんなさい」
 そう言うと女神隊員は頭を大きく下げました。ずーっとずーっとずーっと頭を下げてます。男は困った顔をして頭を横に振りました。「違う違う」と言ってるようです。でも、女神隊員はまだ頭を下げています。
 この部屋の一面全面にはガラスがはめ込んであり、その向こうには隊長と橋本隊員と海老名隊員の姿があります。隊長は海老名隊員に、
「お前も行って、謝ってこい」
「ええ~、私はあの人に脅迫されて、仕方なくやったんですよ~」
「ともかく行って謝ってこい、これは命令だ!」
「は~い」
 海老名隊員は部屋を出て行きました。そして無菌室の中に入って行きました。
 女神隊員はようやく頭を上げました。隊長はその単眼を見て、
「これじゃ、どっちが凶悪な宇宙人なのか、わからんな」
 橋本隊員の質問です。
「あの男、どうします?」
「とりあえず、うちの隊員にするか。その状態でじょんのび家族に出向するという形に」
「そんなことできるんですか?」
「大丈夫、テレストリアルガードはなんでもありだ」
「いやぁ、それもそうなんですが・・・ 彼はじょんのび家族に帰れるんですか? もう宇宙人てことがバレちゃってますよ」
「あは、そっか。めんどくさいなあ、日本て」
 なお、隊長は女神隊員に7日間の謹慎を命じました。具体的には7日間サブオペレーションルーム立ち入り禁止です。ただし、この処分には別の意味もあるようです。

 翌朝です。隊長がサブオペレーションルームで固定電話に出てます。
「あ、ああ、あ~そうか・・・ わかったよ、ありがとう」
 隊長は電話を切りました。寒川隊員がマグカップに入ったコーヒーを持ってきました。
「はい、コーヒーです」
 隊長はその寒川隊員を見て、
「あいつ、釈放だってよ」
「あいつって、昨日写真を流出させたやつですか?」
「ああ、例の写真は誰にでもふつーに見られる状態になってたんだそうだ。まあ、早い話、自衛隊のミスだったらしい」
「なんか納得いきませんねぇ・・・」
「まぁ、しょうがないのかなぁ・・・」
 けど、隊長の顔は不自然に笑顔です。何か企みがあるようです。

 朝の陽光の中、1台のパトカーが2階建て木造アパートの前に停まりました。その後部座席が開き、昨日逮捕された例のブサメンが降りてきました。
「けっ!」
 パトカーが走り去りました。ブサメンはそのパトカーに罵詈雑言を浴びせまたし。
「全部ネットに書くからな、覚えてろよ!」
 ブサメンは振り返りアパートの外部階段の手すりに手を掛けました。と、その真後ろに男が立ってます。黒いフードをかぶった黒装束の男です。ブサメンはそれに気づいたらしく、さっと振り返りました。
「ん?」
 が、誰もいません。
「おかしいなあ?・・・」
 ブサメンは階段を昇って行きました。

女神「宇宙人受難之碑」4

2017-07-28 10:23:00 | 小説
 海老名隊員は柄にもなく真顔で女神隊員に言い放ちました。
「調べることはできません。そんなことしたら、私が隊長に怒られちゃいます」
「調べてください。調べる気がないのなら、私は今ここで巨大化します!」
 海老名隊員は唖然としてしまいました。女神隊員がこんなに高圧的になるなんて・・・ 海老名隊員は考えました。もし女神隊員が今ここで巨大化したら、私はがれきの下敷きになって死んでしまうかも。死ななくても、大けがはまぬがれません。
 この部屋の様子は常時録画されてます。今の女神隊員の発言も録画されてるはずです。私は脅かされて仕方なくやった。そんな言い訳が通じる状況です。海老名隊員は決意しました。
「わかりました。調べます」
 海老名隊員は歩いてオペレーションルームに向かいました。と、扉のところで女神隊員に振り返り、
「あ、こっから先は見ないでくださいね」
 と言うと、ボタンを押して扉を閉めてしまいました。海老名隊員はテーブルに座ると、目の前のコンピューターのキーボードを叩きました。つぎに指紋認証システムに左手薬指の腹を置きました。するとピッと音がし、ディスプレイに表がずらーっと現れました。海老名隊員はそのディスプレイに自分の右手の掌をかざしました。
「もう、いくらなんでも巨大化する宇宙人なんか、そんなにいるはずがないよ~ だいたいあなただって数百万人に1人の女神なんでしょ?」
 が、ディスプレイにかざした手に反応がありました。
「あ、いた」

 夕暮れ間近ですが、まだまだ空は明るいようです。ここはテレストリアルガードの基地です。今カマボコ型の格納庫から2機のストーク号が出てきました。JPTG-STORK01と書かれたストーク号の機内には隊長と寒川隊員と女神隊員が、JPTG-STORK02と書かれたストーク号の機内には橋本隊員と倉見隊員が乗ってます。なお、女神隊員はフルフェイスのヘルメットを被ってます。いわゆるヘルメットレディの状態です。
 2機のストーク号が垂直離陸しました。JPTG-STORK01のコックピットの隊長の命令です。
「よし、ジャンプ!」
 同機の寒川隊員です。
「了解!」
 JPTG-STORK02の橋本隊員です。
「了解!」
 2機のストーク号がふっと消滅しました。

 2機のストーク号がふっと現れました。下は山間部ですが、かなり都市化が進んでます。急な山肌に沿って家が建ち並んでます。隊長は下を見て、
「おいおい、こんなところにいるのか?」
 それに寒川隊員が応えました。
「ええ、じょんのび家族という施設にいるようです」
「どんな施設だ? 老人ホームか?」
「それが・・・ どんな施設なんだか、今資料がありません」
「おいおい・・・」
 隊長はなんか嫌な予感がしました。
「とりあえず降りてみるか」
 ストーク01号機の腹から2条の光が照射され、その中を隊長と寒川隊員が降りてきました。2人は公園の中に着地。そこには女神隊員が待ってました。
「隊長、遅いですよ!」
「あんたが早すぎるんだよ」
 実は女神隊員は、テレポーテーションで先に降りてたのです。
 別の路上では光のエレベーターを使って橋本隊員と倉見隊員が着地しました。橋本隊員が倉見隊員に声をかけました。
「この先か?」
「はい、この坂の上です」
 2人は坂を駆け登り始めました。
「よし行くぞ!」
「はい!」

 隊長と寒川隊員と女神隊員が坂を駆け登り、橋本隊員と倉見隊員が坂を駆け登り、この2組が合流したところが、いかにも施設て感じの門の前でした。その施設の中を見て、隊長は唖然としてしまいました。門の向こうにはたくさんの幼い子どもが見えます。中には車いすの子や松葉杖をついた子もいます。みんな楽しそうに遊んでいます。
「おいおい、これはいくらなんでもまずいだろ」
 隊長は海老名隊員の顔を思い浮かべ、
「あのバカ、常識てーのを知らないのか?」
 と、隊長はある異変に気づきました。女神隊員がこの施設の敷地に入って、歩いているのです。
「お、おい、待てよ!」
 隊長も慌てて敷地の中に入りました。
 女神隊員は正々堂々子どもたちの中を歩いてます。が、1人の子どもがその存在に気づいてしまいました。
「あ、ヘルメットレディだ!」
 それを合図に、子どもたちみんなが女神隊員を見ました。
「ほんとうだ! ヘルメットレディだ!」
 子どもたちみんなが女神隊員のところに来てしまいました。
「わーい!」
 女神隊員は完全に小さな子どもたちに囲まれてしまいました。これにはさすがの女神隊員も参ってしまいました。その女神隊員を隊長・橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員が追い越して行きます。
「あとはオレたちに任せとけ」
 女神隊員は小さな子どもたちに悪戦苦闘です。
「ああ、もう・・・」
 隊長は横目で女神隊員を見て、
「あいつ、なんかあせってんだよなぁ。ふっ、ちょうどいいや・・・」
 とつぶやきました。
 隊長たちが施設の建物に到達しました。すると偶然か、今1人の成人女性が建物から出てきました。どうやら施設の職員のようです。隊長はその女性に話しかけました。
「あ、どうも、私たちはテレストリアルガードの者です」
「あ、は、はい・・・」
 突然見知らぬ男が現れ話しかけてきたもので、女性はぽかーんとしています。寒川隊員はその女性にタブレットを見せました。そのタブレットには1人の男の顔が映ってました。
「この男、知ってますよね」
 女性ははっとしました。
「そ、その人は・・・」
 と、ふと女性はこの敷地を区切る木製の背の低い柵を見ました。柵の向こうは山道と原野です。今1人の男がその柵についてる小さな木戸を開けたところです。その男はタブレットに映ってた男です。女性は思いっきり叫びました。
「逃げてーっ!」
 男ははっとしました。女神隊員もはっとしました。男は逆方向に走り始めました。それを見て女神隊員も走り始めました。が、そのはずみで幼い子どもたち数人が弾き飛ばされてしまいました。隊長は大きな声で泣き始めた子どもたちを見て、頭を抱えてしまいました。
「あ~ もーっ!」
 橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も男を追おうと木戸に向かいました。が、その木戸の前に2人の少年が立ちはだかりました。2人とも車いすです。
「おい、どけっ!」
 橋本隊員は思わず大きな声を出してしまいした。車いすの少年が言い返しました。
「嫌だ!」
「あの人は何も悪いことしてないよ! なんで捕まえようとするんだよ!」
 橋本隊員は困ってしまいました。

 男が山道を走って逃げてます。その真後ろを女神隊員が追いかけてます。
「待てーっ!」
 しかし、男は逃げます。逃げ続けます。女神隊員は右手を水平に挙げ、手で拳銃の形を作りました。そして指先から光弾を発射。その光弾が男の左脚に命中。
「うぐぁっ!」
 男は道を外れ、左側の斜面を転げ落ちていきます。
「うわーっ!」
 男は思わず巨大化しました。服はビリビリに砕け、素っ裸になって立ち上がりました。施設の小さな子どもたちはそれを見てびっくりしました。
「お、お兄ちゃん?」
 女神隊員も巨大化。巨大化したと同時に男のあごにアッパーパンチ。男はもんどり打って転倒。女神隊員はその男に馬乗りになりました。そして顔面にパンチ。1発2発。
「ヘルメットレディ、やめてよーっ!」
「お兄ちゃんは何も悪くないんだよーっ!」
 子どもたちの悲痛な叫びが響いてきます。でも、女神隊員の耳に届かないのか、なおも殴り続けます。3発4発5発・・・
「ヘルメットレディなんか死んじまえーっ!」
「お兄ちゃん、そいつを殺しちゃえーっ!」
 子どもたちの声が変わりました。思いっきり泣き声です。女神隊員はそれを不快に思ったのか、立ち上がりました。そして男の身体を思いっきり蹴飛ばしました。男の身体は転がり、そのまま急斜面を滑り落ちて行きました。

女神「宇宙人受難之碑」3

2017-07-27 12:52:34 | 小説
 ここはテレストリアルガードのサブオペレーションルーム。今皿に盛られたワラビのおひたしが、上溝隊員の手によって運ばれてきました。
「はーい、ワラビのおひたしですよ~」
 女神隊員は仕出のお弁当を食べてましたが、その目の前にワラビのおひたしがどーんと置かれました。
「あは、またこれですか?」
「たくさん採ってきたからねぇ、あと10日は出てくるわよ」
「あははは・・・」
 女神隊員は苦笑するしかありませんでした。
 この部屋には今もう1人います。海老名隊員です。海老名隊員は別のテーブルでノートパソコンでインターネットを見ています。その手元には仕出のお弁当がありますが、インターネットに夢中らしく、まったく手をつけてません。上溝隊員はその海老名隊員を見て、
「えびちゃん、あなたもワラビ、食べる?」
「あ~ いらないですよ」
「あなたが採ってきたワラビよ」
 しかし、海老名隊員からの返答はありません。上溝隊員は呆れてます。
「もう~」
 インターネットを見ていた海老名隊員ですが、あるページを開いた途端、はっとしました。かなりショックを受けたようです。そして首をぎーっと廻し、横目で女神隊員を見ました。海老名隊員は上溝隊員とお弁当を食べながら談笑しています。もしこの状態で自分を見たら、明らかにノートパソコンの画面を見てしまいます。海老名隊員は反射的にノートパソコンを閉じてしまいました。
 ここで自動ドアが開いて隊長が現れました。
「ただいま~」
 さらに橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も入ってきました。上溝隊員はこの4人を見て、
「おかえりなさい」
 と、海老名隊員が隊長の前に立ちました。
「隊長、ちょっと」
 海老名隊員には珍しく、かなりの真顔です。隊長は何かを感じました。海老名隊員は隣室のオペレーションルームに入りました。隊長もそれに続きました。海老名隊員が壁に付いてるボタンを押すと、自動ドアが閉じました。上溝隊員はそれに気づき、はっとしました。いや、上溝隊員だけではありません。橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も驚いてます。そのただならぬ雰囲気に、女神隊員も何かを感じたようです。
 実はオペレーションルームとサブオペレーションルームの間の扉は、今の隊長の方針で常時開けっ放しになってました。この扉が閉まったということは、何か重大事項が発生したということ。5人の視線は扉に集中しました。

 しばらくしてその扉が開きました。そこにはかなりきつい眼の隊長がいました。
「あ、みんな、落ち着いて聞いてくれ。特に女神隊員」
 女神隊員ははっとしました。隊長は女神隊員を強い視線を送りました。
「あんたには耐えがたいほどのひどい写真になると思うが、一テレストリアルガードの隊員として見てくれ」
 その怖い顔に女神隊員も覚悟を決めたようです。
 隊長は後ろに立っていた海老名隊員を呼びました。
「おい、みんなに見せてやれ」
「はい」
 海老名隊員は閉じていたノートパソコンを開きました。その画面には1つ眼の男の死体が映ってました。明らかに女神隊員と同じ人種です。それを見て5人の隊員が驚きました。特に女神隊員の驚きは、驚きと言うより、嘆きでした。かなりショックを受けてるようです。橋本隊員の発言です。
「これは?」
「インターネットに貼られてた。どうやらいろんなところに拡散してるらしい」
 今度は寒川隊員の発言です。
「これって、女神さんの・・・」
「ああ、仲間だろうなあ・・・ たぶんあの墜落事故の写真だな」
「いったいどこから流出したんですか?」
「遺体搬出作業は警察や消防は断った。もちろん地元の消防団員も参加してないはずだ」
 今度は橋本隊員です。
「じゃ、自衛隊から?」
「まあ、そうだろうなあ・・・」
 と、ここで自動ドアが開きました。上溝隊員がそっちの方向に振り向くと、女神隊員が部屋を出て行くところでした。上溝隊員は慌てて女神隊員を追いかけました。

 廊下に出ると女神隊員は右手を壁に付けました。ひじから小指の外側にかけて壁に押しつけてるって状態です。そしてその手に顔を押し付けました。
「う、うう・・・」
 女神隊員は泣いてます。それを見て上溝隊員は何か声をかけようと思いましたが、何もできません。女神隊員が泣くのは今日2回目です。2回目とも上溝隊員の眼の前でした。1回目では心の中で笑ってましたが、今回は女神隊員に同情してます。けど、何も声をかけることはできません。上溝隊員まで自己嫌悪に陥ってしまいました。
 しかし、これは女神隊員にはかなりひどい仕打ちです。女神隊員はテレストリアルガードの一員です。地球を守る組織のメンバーの1人なのです。ま、女神隊員にその自覚はあまりないようですが。
 もちろん女神隊員の正体はなんなのか、テレストリアルガードはいまだに発表してません。写真を流出させたブサメンが知るよしもないのです。それでも香川隊長の怒りはかなりなものです。すぐに警視庁に通報。1時間もしないうちに流出元のブサメンの正体がバレ、即刻逮捕になりました。
 しかし、流出した写真はインターネットを駆け巡り、いろんなところに貼られてます。しかも添えてある文章は嘲笑の雨あられ。これは完全に弱いものイジメ、単なる差別です。日本人はここまで劣化してしまったのでしょうか?

 女神隊員は自室で小さくなってました。壁を背に体育座りです。両ひざの間から巨大な一つ眼が見えてます。ウィッグは珍しくつけてないようです。彼女は思い出してました。
 彼女は5000もの同胞とともに母星を退避しました。5000の同胞は仮死状態でカプセルに入れられましたが、彼女は数百万人に1人の女神です。宇宙船の操縦を任されました。しかし、地球の側を通ったとき、テレストリアルガードスペースステーションJ1から攻撃を受け、この地球に墜落。そのとき彼女は5000の命とともに殉死する覚悟を決めました。けど、地球に激突した瞬間、彼女の本能が働いてしまい、ショートテレポーテーションとともに巨大化して難を逃れてしまいました。さらに地球上のテレストリアルガードの猛攻撃を受け、拉致られてしまい、いつのまにかその組織の一員になってました。
 なんで自分はテレストリアルガードの1人になってる? 意志が弱いから? 宇宙船が地球に激突したとき、そのまま死んでしまえばよかったのに・・・ テレストリアルガードに拉致られたとき、巨大化して再び暴れればよかったのに・・・ たとえまたストーク号やヘロン号に攻撃され、身体がズタボロになっても、それはそれで本望だったはず・・・
 私はどっちもできなかった。私は私の命がかわいかったのだ。5000もの同胞の命よりたった1個の自分の命を大事にしてしまったのだ。私はなんて情けないんだ・・・
 せめてあの日散ってしまった5000の命を復権させたい。彼らは死んでるのに、地球人に嘲笑されてる。単眼が気持ち悪いという理由だけで差別されてる・・・ なら、私がこの顔を人前にさらせば・・・
 私はヘルメットレディという名で、スーパーヒロインとしてこの星に迎えられた。私がこの顔をさらせば、みんな、少しはわかってくれるはずだ。そうだ、思い切って顔をさらそう!
 じゃ、どこで顔をさらす? 今すぐ外に駆けて行って、巨大化する? いや、それじゃだめ。もっともっと印象的な場面で顔をさらさないと。それなら・・・
 女神隊員は立ち上がり、廊下に飛び出ました。そして廊下を駆け抜け、サブオペレーションルームに入りした。中では海老名隊員がインターネットをやってました。海老名隊員は誰が入ってきたのか興味がないようです。いや、気づいてないのかも。が、
「海老名さん!」
 女神隊員のその一言で、海老名隊員はマウスを握る手を止めました。
「海老名さん、巨大化する宇宙人を捜してください!」
 海老名隊員はここでやっと振り返りました。すると女神隊員は珍しく単眼をさらしてました。海老名隊員はそれを見て思わず苦笑してしまいました。その状態での発言です。
「ム、ムリですよ、そんな・・・」
「海老名さんは遠くで起きてることや、未来で起きることが見えてますよね。なら、巨大化できる宇宙人が今どこにいるのか、わかるはずですよね!」
 海老名隊員はそれを聞いて、「えっ?」という顔を見せました。そう、海老名隊員は千里眼の持ち主なのです。これを知ってる人は隊長だけでした。でも、女神隊員はいつしか気づいてしまったようです。ま、ほかの4人のテレストリアルガードの隊員も、なんとなく気づいてるようですが。