goo blog サービス終了のお知らせ 

のどかなケイバ

一口馬主やってます

女神「神の国を侵略した龍」序章

2017-08-18 13:23:51 | 小説
ここで発表してきた小説「女神」 実はすでに他所で発表してまして、向こうでは思った以上の読書を獲得してます。特に1話「女神の一番長い日」はかなりの読者を獲得しました。が、5話だけはなぜか極端に読者が少ないんですよねぇ・・・ なんでなのかなあ? 明日からここで5話を発表していくんですが、ここでは読者が減らないことを期待します。
ちなみに、この小説の主人公女神は暗いキャラでしたが、4話で怨恨の相手が死んだことで、5話から急に明るいキャラになります。読者がいきなり減ったのはそのせいではないと思いますが。
なお、5話はかなりの箇所で添削してあります。ゆえに最初に発表した話とは微妙に食い違ってます。ご了承を。

実は5話はあるアニメを見ていて、このアニメに0話があったたらいったいどんな話になるんだろうと思ったら、その瞬間にできてしまった話です。ちゃんとそのアニメにつながるように作ったつもりです。ま、そのアニメはめちゃくちゃ明るいアニメで、こんな憂鬱な話ではないのですが。そのアニメのタイトルですが・・・ ま、ヒミツてことで。わかる人にはすぐにわかると思うけど。

この話、6話以降はありません。プロットも考えてません。つまり5話で終了です。あしからず。

女神「前方の敵、後方の敵」8

2017-08-15 17:26:52 | 小説
 テレストリアルガードのサブオペレーションルーム。イスに座ってる香川隊長が、右手の拳を開けました。すると小さな石が転げ落ち、テーブルの上を転がりました。隊長がそのまま視線を上げると、そこには赤いマントの幼い女の子が立ってました。幼い女の子はマントと一体になったフードをかぶってます。その手には弓矢が握られてます。すでに射る寸前です。女の子がしゃべりました。
「一度言いましたよね。あなたは殺し過ぎました」
 隊長はそれに応えました。
「覚悟はできてるよ。さあ、やるんならやってみろ!」
 女の子はニヤっと笑うと、矢を放ちました。その矢が隊長の心臓に刺さりました。矢はアサルトライフルの銃弾を数十発喰らっても絶対破れないテレストリアルガードの隊員服をいとも簡単に貫通したのです。
「うぐっ・・・」
 しかし、隊長にはまだ息があります。
「くそっ・・・ ちゃんと中まで矢が刺さってねぇじゃねーか! 一気に殺せよ!」
 幼い女の子はフードで目が見えませんが、口元は笑ったように見えました。女の子は次の矢をつがえました。が、ここで壁に開いた大きな穴から、女神隊員が突入してきました。
「隊長!」
 幼い女の子が矢を放ちました。それを女神隊員がハニカム構造のバリアで防ぎました。バリアを出すポーズは特に決まってませんが、今回は片ひざを付き、両腕を肩よりちょっと大き目なサイズで真っ直ぐ伸ばし、両手を目いっぱいに広げ、バリアを発生させました。それを目の当たりにして、女の子はかなり驚いたようです。正確には、女神隊員の剥き出しになった単眼を見て驚いたようです。
 女神隊員は右手で拳銃を作って、光弾を発射。それが幼い女の子の喉元に命中。女の子は吹き飛ばされ、背中を壁に打ち付け、そのままずるずると倒れ込みました。女神隊員は右手で拳銃を作ったまま、女の子のところまで小走りで進み、とどめに2発光弾を発射。その光弾が女の子の心臓を直撃。女神隊員は女の子の生死を確かめるべく、そのフードをめくりました。
「ええ?・・・」
 女神隊員は驚きました。その幼い女の子は自分と同じ単眼だったのです。ただ、女の子は鼻のような小さな突起があります。女神隊員にはそれがありません。明らかに違う人種でした。女神隊員は直感しました。この身体は仮の肉体。本物は別のところにある。
 と、怪しい女の子の身体は衣服ごと微粒子になり、そのまま消えてしまいました。
「隊長! 隊長!」
 女神隊員がその声で振り向くと、海老名隊員が隊長の上半身を抱き上げてました。隊長の意識は消え消えです。
「ああ・・・」
 隊長の胸に刺さってた矢が、やはり微粒子のようになり、そのまま消え去ってしまいました。隊長はなんとかしゃべりました。
「えびちゃん、悪いがテーブルの上にある石・・・」
 海老名隊員がテーブルの上を見ると、そこには小石が落ちてました。
「その石を大事に保管しておいてくれ・・・
 それから、2人とも、今見た怪人は絶対口外しないでくれ。頼む・・・」
 隊長の首がガクンと落ちました。それを見て海老名隊員と女神隊員は愕然としてしまいました。
「隊長ーっ!」
 自動ドアが開き、上溝隊員が入ってきました。上溝隊員は異変に気付くと、
「い、いったい、何があったの!」
 海老名隊員は泣き声で思いっきり叫びました。
「お願い、救急車を呼んで!」

 夕焼けの道路を1台の救急車が走ってます。中には隊長が寝かされていて、その傍らで海老名隊員が隊長の手を取ってます。海老名隊員は大泣きしてます。
「隊長・・・ 隊長・・・」
 救急車の後ろを1台のセダンと1台の4WDが走ってます。両車ともテレストリアルガードのクルマで、両車ともパトロールランプを出してます。セダンの運転席には寒川隊員、助手席には倉見隊員、後部座席には女神隊員が座ってます。女神隊員はフルフェイスのヘルメットをかぶってます。4WDの運転席には橋本隊員、助手席には倉見隊員が座ってます。5人ともかなり深刻な顔をしてます。

 病院の病室です。ストレッチャーで隊長の身体が運ばれてきました。さっそく医師が命令です。
「すぐにレントゲンだ!」
 隊長の身体はさらに奥に運ばれていきました。そこに5人の隊員が駆け付けました。さっそくその医師に橋本隊員が質問です。
「どんな状況なんですか?」
「たぶん心臓の疾患でしょう。心筋梗塞か狭心症か・・・ すぐに手術に入ります」
 その後隊長の病気は急性心筋梗塞とわかり、すぐにカテーテル手術となりました。右手首からカテーテルと呼ばれる管を入れ、それを心臓まで挿入。狭窄してる冠動脈を治療して終了。手術そのものは1時間弱で終わりました。

 それからしばらくして、隊長は目覚めました。
「は・・・
 オレはまだ生きてる・・・のか?」
 隊長はベッドに寝かされてました。どうやら病室のようです。胸には複数の心電図の電極が取りつけられてます。左腕には点滴の針が刺さってます。窓にはカーテンがかかってますが、外はとっぷりと夜のようです。
 だれかが立ち上がったような気配。と同時に、
「隊長」
 の声が。隊長が振り返ると、そこにはヘルメット姿の女神隊員が立ってました。
「ふっ、あんたか・・・
 帰って来てしまったようだな。なんか、恥ずかしいなあ・・・」
「ほんとうはみんなこの病室にいたんですが、先生がもう大丈夫だと言ったから帰っちゃいました。これ以上テレストリアルガード本部を空っぽにしちゃいけないて橋本さんが言ったもんで。
 海老名さんは私と一緒に残ると言ってましたが、明日学校があるからってみんなに説得されて、やっぱり帰っちゃいました」
「あは、そっか。で、あんたはなんで残った?」
「またあの赤い女の子が襲って来るといけないと思って、私は残ることにしました。あ、赤い女の子のことはみんなに話してませんから、安心してください」
「そっか、ありがと・・・」
「あの女の子はなんなんですか?」
「たぶん・・・ いや、またあとで話そう。悪い、今はともかく眠いわ」
「はい」
 隊長は再び深い眠りにつきました。しかし、またあの赤い女の子が襲って来るかもしれません。別の怪人が襲ってくる可能性もあります。女神隊員はイスに座ると、寝ずの番を決め込みました。
 でも、翌朝陽が昇るころに隊長が目覚めると、女神隊員はイスに座ったまま、眠ってました。隊長はそんな女神隊員を見て、こう言いました。
「ふっ、ありがとうな」
 今日も窓の外は晴れのようです。

女神「前方の敵、後方の敵」7

2017-08-14 13:05:02 | 小説
 1時間後、テレストリアルガード専門輸送機ペリカン号がテレストリアルガードの空港にタッチダウンしました。ペリカン号はスペースシャトルのような機体です。ペリカン号は滑走路を走ってきて、カマボコ型の格納庫の横に止まりました。それを3階建ての建物の3階から見ている3つの人影があります。上溝隊員、海老名隊員、そしてその後ろに立っている女神隊員です。女神隊員の頭部には、前髪のウィッグしかありません。ペリカン号の背は高く、3人が立ってる場所よりも高いようです。海老名隊員はそれを見上げて、
「いつ以来かなあ、ペリカン号がここに来るのは?」
 それに上溝隊員が応えました。
「今年に入って初めてね」
 女神隊員は黙ってその会話を聞いてました。
 ペリカン号の前に入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が立ちました。その側で香川隊長と橋本隊員が、2人のJ1の隊員(ペリカン号乗員)と軍隊式あいさつをしています。
 それを遠くから見ている女神隊員。女神隊員は今あの場所にテレポーテーションして、巨大化して、あの3人を踏み潰したい気分になってます。もちろんそんなことはできません。そんなことしたらテレストリアルガードクビになる上に、集中攻撃を喰らってしまいます。もう痛い思いはまっぴら御免。女神隊員はまだ自分の命がかわいいのです。
「じゃあな!」
 と言うと、入谷隊長、宮山隊員、番田隊員はペリカン号に向かって歩き始めました。
「ちょっと待ってくれ」
 それを言ったのは香川隊長でした。香川隊長は入谷隊長の側に行き、横目でペリカン号の乗員2人を見ました。
「さっきの話の続きだが・・・ あの2人は謝罪派か? それとも暗殺派か?」
「さあな。忘れた」
「そっか」
 3人は再び歩き始めました。香川隊長はその3人を見送りながら、ぽつりと言いました。
「もし謝罪派だったら、今のうち言っとく。すまないことをしたな」
 ペリカン号が滑走路を走り始めました。そしてそのまま宙へ。海老名隊員が上溝隊員の目を見上げました。
「行きましょっか」
 上溝隊員はうなずきました。2人は部屋を出て行きます。が、女神隊員はその場に立ったまま。海老名隊員は振り返り、
「女神さん、行きましょ」
 女神隊員は黙って振り返りました。
 廊下です。上溝隊員と海老名隊員が歩いてます。その少し後ろを女神隊員が歩いてます。と、海老名隊員はふと何かを感じました。で、立ち止まりました。その顔は青ざめてます。上溝隊員がそれに気づき、立ち止まりました。
「ん、どうしたの?」
「い、いや、なんでもないですよ」
 上溝隊員は頭に?を浮かべましたが、再び歩き始めました。でも、海老名隊員はその場に突っ立ったままです。女神隊員も海老名隊員には何も気にも止めずに行ってしまいました。当の海老名隊員ですが、かなり深刻なことを考えてるようです。

 それからどれくらい経ったのでしょうか? 女神隊員は自室でベッドの上で、体育座りで小さくなってました。頭には前髪のウィッグがありません。特徴的な単眼が丸見えです。何か思い詰めてます。と、突然ベッドから降り、立ち上がりました。そして一つ眼を閉じました。テレポーテーションをする気です。
 が、ここで自動ドアが開きました。そこには海老名隊員が立ってました。
「女神さん、行ってはいけません!」
「あは、なんのこと?」
 女神隊員はすっとぼけました。
「今あなたがしようとしてることを言ってもいいですか? ペリカン号のところまでテレポーテーションして、ペリカン号を思いっきり殴って壊して、またここにテレポーテーションして帰ってくる」
 それはビンゴでした。「さすが千里眼の海老名さん」と女神隊員は頭の中で笑いました。が、すぐに真顔になり、
「海老名さん、行かせてください! 私、もう我慢できない!」
 と大声で訴えました。
「そんなことしてもバレますよ。地球の観測機器は女神さんの想像をはるかに超えてますから!」
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさん壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
 2人の間に微妙な時間が流れました。その静寂を破ったのは海老名隊員でした。海老名隊員はゆっくりとしゃべり始めました。
「・・・女神さん、もうちょっと待ってください。隊長はあの3人を殺す気なんです」
 それを聞いて女神隊員は驚きました。
「だから、女神さんは何もしないでださい・・・」
 と言うと、海老名隊員の両目から涙が流れてきました。女神隊員はそれを見て驚きました。
「え?」
 海老名隊員は泣きだしてしまいました。
「隊長は自分の命と引き換えに、あの3人を殺す気なんです!」

 ここはサブオペレーションルームです。隊長はイスに座って目の前の壁の大きな穴を見てます。で、なんとなく苦笑してしまいました。そしてオペレーションルームの上溝隊員に話しかけました。
「上溝隊員」
 上溝隊員は振り返り、
「はい」
「すまないが、大事な連絡をしなくっちゃいけないんだ。10分ばかし退席してくれないか」
「あ、はい・・・」
 上溝隊員は立って、自動ドアから出ていきました。隊長はそれを見て、次に壁に開いた巨大な穴を見ました。人1人楽々通れる空間。剥き出しになった鉄筋は切断され、切断面にはビニールテープが巻かれてます。
「ふっ、こうなるとドアの鍵も意味がなくなるな」
 隊長は巾着のような小さな布製の小袋を取り出し、それをテーブルの上でひっくり返しました。すると小さな石ころが飛び出し、テーブルの上を転がりました。そう、あの小石です。隊長はその小石を握ると、その拳を胸に置きました。そしてそのまま瞑想にふけりました。

 ここは地球はるか上空、ペリカン号が飛んでます。そのコックピットです。メインの席は横に2座席で、先ほどの2人が操縦してます。その1人が発言しました。
「まもなく大気圏を脱出します」
 その後方では入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が補助席に座ってます。このうち、宮山隊員と番田隊員が会話してます。まずは番田隊員の発言から。
「あ~あ、オレたち、クビかなあ・・・」
 それに宮山隊員が応えました。
「いや~ まだチャンスはあるさ」
「そりゃ、お前にはまだチャンスがあるだろうよ。なんてったって元総理大臣の孫だし」
「あは、次の仕事が見つかったら、紹介してやるよ」
「そうしてもらえるとうれしいなあ」
 2人は笑顔です。と、ここで2人は入谷隊員の異変に気づきました。
「ん、隊長?」
 隊長の顔は恐怖に引きつってます。
「ああ・・・」
 それを見て宮山隊員が、
「どうしたんですか?」
「お、お前、あれが見えないのか?」
 隊長はまっすぐ前を見て、そう言いました。宮山隊員もまっすぐ前を見ましたが、何もありません。
「ええ? 別に何もありませんけど?」
 しかし、隊長の眼には見えてました。真っ黒いマントを着て、そのマントと一体になったフードをかぶってる男。その手には死神の鎌が握られてます。フロントガラスの外側にそいつは立ってるのです。隊長は震えてます。
「な、なんなんだ、こいつは?」
 今度は番田隊員が話しかけました。
「隊長、何もいませんって!」
 怪物はフードを取りました。その顔は一つ眼のガイコツでした。隊長はついに悲鳴をあげました。
「うぎゃーっ!」
 隊長はレーザーガンを取り出しました。それを見て宮山隊員と番田隊員が慌てました。
「隊長、辞めてください!」
 2人は力ずくでレーザーガンを取り上げようとしましたが、入谷隊長はレーザーガンを離しません。と、怪物はいつの間にかフロントガラスの内側に立ってました。入谷隊長のすぐ目の前です。怪物は鎌を大きく振り上げました。
「やめろーっ!」
 そう言うと、隊長はレーザーガンを発射。その光線がフロントガラスを貫通。宮山隊員と番田隊員の顔が絶望的になりました。
「ああ・・・」
 地球の縁で何かがピカーっと光りました。

女神「前方の敵、後方の敵」6

2017-08-10 11:01:12 | 小説
 女神隊員の攻撃は続きます。今度は両腕をL字に曲げ、両ひじを腋に付けました。その両手には光のエネルギーが集まっていきます。それを見てマニアたちはまた歓喜です。
「おお~ ヘルメットレディの光線技だ!」
「こんな大技まで見せてくれるのかよ!」
 が、両者の間にストーク号が割り込みました。ストーク号は女神隊員に顔を向けてます。香川隊長が呼びかけました。
「もういいだろう!」
「隊長、撃たせてください!」
 女神隊員は涙声でした。
「相手が憎いのはわかる。でも、あいつらはテレストリアルガードスペースステーションJ1の隊員だ。我々と同じテレストリアルガードの隊員なんだ。もしあいつらを撃ったら、もうお前はテレストリアルガードの隊員じゃなくなるんだぞ!」
 それを聞いて女神隊員は両手をだら~んと下げました。今女神隊員はテレストリアルガードの隊員という以外、身分を保証するものがありません。テレストリアルガードをクビになったら、その先どんなひどい運命が待っているのかわからないのです。
 と、スペースストーク号が急浮上を始めました。それを見て橋本隊員が、
「逃がすかよ!」
 ヘロン号がビームを発射。それがスペースストーク号の後部に命中。スペースストーク号はゆっくりと落下していきます。それを見てマニアたちはまたざわつきました。
「な、なんだ? テレストリアルガードの中で内紛が起きてるのか?・・・」

 ここはテレストリアルガード基地内。以前女神隊員が尋問された会議室です。今はJ1の3人が詰問されてます。3人ともパイプイスに座らされていて、両手は後ろ手。その両手には長机を絡ませる形で手錠が掛けられています。ふつーの手錠ではありません。腕のサポーターのようなものを鎖でつないだ、電気ショックが流れる手錠です。この様子は2台のムービーカメラで撮影されてます。J1の3人にはあまりにも屈辱的な対応です。
 入谷隊長が発言しました。
「ふっ、こんなことして、お前ら、ダダで済むと思ってるのか?」
 この3人を詰問してる香川隊長・橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員。まずは橋本隊員の発言から。
「それはこっちのセリフだ。お前らの蛮行は全部録画して、もう総理大臣に送ってあるからな。お前ら、全員クビだ。懲戒免職!」
 宮山隊員は笑いながら、
「あはは、お前ら、オレを誰だと思ってるんだ? 元総理宮山総一郎の孫、宮川駿介だぞ」
 それを聞いて倉見隊員が笑いながら、
「お前さぁ、カメラが廻ってる前で、よくそんな恥ずかしい話をするなあ」
 香川隊長が入谷隊長に質問です。
「なぜわれわれを攻撃した?」
「お前らを攻撃したんじゃない。あの女を攻撃したんだ!」
「女神隊員を?」
「ああ。4か月前オレたちはやつが乗っていた難民船を攻撃した。そうしたらやり過ぎだとたくさんの非難がきた。インターネットを通じてたくさんの罵詈雑言がきたんだ!」
「それは当たり前だろ。お前ら、むこの避難民を5000人も殺したんだぞ!」
「何が当たり前だ! 我々は我々の職務を全うしただけだ!
 1か月前やつらの遺体写真が流出した。そうしたらその罵詈雑言は止まった。逆によくやったというメールまでいただいたよ。でも、それは持って3日。4日目あたりからまた罵詈雑言が復活した。いや、逆に激しくなった。中にはオレたちの写真を一つ眼にしたコラ写真や、黒焦げ死体にしたコラ写真まであったよ。あれは参ったな・・・
 このままでは我々の業務に支障が出ると思い、そこで対策会議を開いた。そこで出た答えは2つだった。1つは、あの事件の唯一の生き残りのあの女に謝罪して、その映像を公開する」
「もう1つは?」
 入谷隊長は少し考え、ぽつりと言いました。
「ビデオ止めろ」
 香川隊長もちょっと考え、倉見隊員と寒川隊員を見ました。
「おい、止めてやれ」
「はい!」
 2人はそれぞれムービーカメラを止めました。香川隊長はそれを確認して、入谷隊長を見ました。
「ビデオ止めたぞ」
 しかし、入谷隊長は無言です。香川隊長は促しました。
「おい!」
 入谷隊長は苦虫を潰したような顔を見せ、そしておもむろにしゃべり始めました。
「もう1つの答えは、あの女を殺すことだった」
 倉見隊員と寒川隊員はその言葉を聞いて唖然としました。橋本隊員は苦笑しました。そして香川隊長の発言。
「なんでそんなことを?」
「地上ではあの女の人気はうなぎ昇りだった。それに反比例する形でうちに来る罵詈雑言が増えていった。なら、あの女を殺せば罵詈雑言は止まるんじゃないか? そういう結論に達したんだ。ま、それでもJ1の中では謝罪派が過半数だったが・・・」
「ふつーの思考の持ち主だったら、そんな結論にはとうてい到達しないな」
 その香川隊長の発言に宮山隊員が応えました。
「それだけオレたちは追い込まれてたんだ!」
 入谷隊長は言葉を続けました。
「そんなとき、昨日だったな、認識ステルス機能を作動させた未確認飛行物体が大気圏に突入した。我々は慌ててスペースストーク号であとを追い駆けた。しかし、未確認飛行物体を追い駆けていたとき、オレたち3人はこんな会話を始めたんだ。地上ではすでにテレストリアルガードが対応しているはず。なら、そこにあの女がいるんじゃないか? なら、あの女を殺す絶好のチャンスになるんじゃないのか? J1では謝罪派が過半数だったが、我々3人は暗殺派だったんだ・・・」
 橋本隊員の発言。
「そこで昨日認識ステルス機能を発動させたまま、女神隊員を襲ったんだな」
「まさかあのユニホームにあれほどの耐性があってたとは・・・ 中の人に合わせて巨大化したんだから、生地の密度は低くなると思ったんだが・・・」
 今度は香川隊長の発言。
「お前たち3人はその後何食わぬ顔でJ1に戻って、あらためてうちに来たんだな」
「ここに来るとき謝罪派に詰め寄られたよ。テレストリアルガード本部に行くんだったらちゃんと謝罪してこいと。お前らがあの女を隠さなきゃ、この件は穏便に済んだんだ!」
「そっか」
 隊長はなぜか苦笑してます。と、その左手のサポーター型無線機(兼携帯電話)が鳴りました。
「ん?」
 隊長はそれに出ました。
「もしもし・・・」
 隊長の顔色は急に変わりました。
「はぁ~・・・」
 その一言で会議室の空気が変わりました。隊長は一同の顔を見て、
「おい、その3人を離してやれ。放免だってよ」
 テレストリアルガードの4人の隊員はびっくりです。
「ええ?・・・」
 香川隊長は宮山隊員を見て、
「ふっ、お前のじーさんの政治力を十分見せてもらったよ」
 宮山隊員はニヤっと笑いました。
「ふふ、そうですか。今後は十分気を付けてくださいね。あははは~」

 サブオペレーションルームです。女神隊員はイスに座ってます。今は前髪のウィッグだけで特徴的な単眼を隠してます。なんか下を向いてます。何かを待ってるようです。と、今ここに香川隊長が入ってきました。女神隊員はピクンと反応しました。奥に座ってた上溝隊員も隊長に気づき、振り返りました。
「あ、隊長、どうなりました?」
「釈放だ」
「え、ええ~?・・・」
 バーンとテーブルを叩く両手。振り向くと女神隊員が下を向いて立ってました。女神隊員は隊長を見て、
「なんで、なんで無罪なんですか?」
「無罪とは言ってないぞ。今日のところは一時釈放だ。あと1時間もすればJ1から迎えが来る」
「なんで? なんで! あいつら、たくさん悪いことしたのに!」
「残念だが、この国の今の法律では、裁けるかどうか、五分五分てところなんだ。
 あんたは自分の同胞を大量に殺した罪で裁きたいと思ってるみたいだが、こればっかりはどうしようもないんだ」
「で、でも、テレストリアルガードにも攻撃した!」
「だから、あれで罪に問えるかどうか、半々てところなんだよ。ま、テレストリアルガード法には明確に違反してるが、それでも懲戒解雇がやっとってところなんだ」
「なんで、なんで・・・
 うおーっ!」
 女神隊員は吼えました。上溝隊員はびっくりです。女神隊員は両ひじを腋につけました。その手に光のエネルギーが集まってきます。これはあの光線技のポーズです。上溝隊員はあせりました。
「ちょ、ちょっと、ここではやめてよーっ!」
 が、隊長は止めようとしません。女神隊員は光に包まれた両手を頭上高く挙げ、そして振り下ろしました。両手が水平になったところで両掌を合すとビームが発生。女神隊員の目の前の壁が粉々に吹き飛びました。
 廊下を歩いてた橋本隊員と倉見隊員の目の前の壁が突然粉々に吹き飛び、2人とも目を点にしました。
「へ・・・」
 女神隊員の激しい呼吸が響いてます。隊長はそんな女神隊員に声をかけました。
「気が済んだか?」
 女神隊員は再び吼えました。今回は半分涙声です。
「うわーっ!」

女神「前方の敵、後方の敵」5

2017-08-08 17:13:36 | 小説
 テレストリアルガード基地の外観です。すでにストーク号とヘロン号が垂直離陸してます。なお、ストーク号の機体番号ですが、JPTG-STORK02です。つまり2号機。1号機は破壊されてしまったので、今日は昨日橋本隊員が操縦してた機体に隊長・寒川隊員・女神隊員が乗ってます。
 ストーク号のコックピット。隊長の命令です。
「よし! ジャンプ!」
 寒川隊員が応えました。
「了解!」
 ヘロン号のマスクとシールドをした橋本隊員も応えました。
「了解!」
 ストーク号とヘロン号が同時に消滅しました。

 先ほどの原野です。警官隊やマニアたちが逃げ惑ってます。
「うわーっ!」
 が、相手が見えません。と、今1つの小屋が見えない脚に蹴飛ばされ、その破片が空中に舞いました。それがマニアたちに降り注いでます。
「なんなんだよ、これーっ!」
 こんな緊急時なのに、警官がいなくなったことをいいことに、ストーク号の真下に来て、写真を撮ったり備品を盗もうとしているマニアが複数います。頼もしい人たちです。ま、某国のスパイかもしれませんが。
 この上空にストーク号とヘロン号がこつ然と現れました。ヘロン号のコックピットから見た原野です。原野にずーっと足跡がついていて、その先頭に今新たな足跡が発生しました。それを見て橋本隊員は微笑みました。
「ふっ、四次元レーダーがなくとも、丸見えじゃないか!」
 ヘロン号の砲塔からレーザーが発射されました。それが見えない何かに当たり、大きな火花と悲鳴が発生しました。
 今度はストーク号のコックピット。隊長の命令です。
「よし、パウダーを撒くぞ!」
 それに寒川隊員が応えました。
「了解!」
 ストーク号の腹のハッチが開き、棒に吊るされた球体が出てきました。その球体から粉が出てきました。大量の粉です。マニアの1人の頭にその粉が降ってきて、マニアは粉まみれになってしまいました。マニアは怒り心頭です。
「うわっ! 何するんだよ~!」
 あたりが急速に粉まみれになっていきます。すると粉の中から3つの巨大な人影が現れました。宇宙人A・B・Cです。それを見て隊長が驚きました。
「おお、3人もいたのか!」
 隊長は後部補助席の女神隊員を横目で見て、
「おい、行けるか?」
「もちろん」
「よし、じゃ、真ん中のやつを頼む」
「はい!」
 女神隊員は5点式シートベルトを外し、次の瞬間消滅しました。と、宇宙人Bの前に巨大化した女神隊員が現れました。それを見てマニアたちが喜んでいます。
「うわーっ、ヘルメットレディだ!」
「は、初めて見た~」
「オレ、ここに来てよかったよ~」
 甲冑の宇宙人Bはニヤっとしました。女神隊員の光線と剣の攻撃は、甲冑が防いでくれるはず。宇宙人Bは心の中でこう言いました。
「ふ、甲冑があれば絶対勝てる! よし、来い!」
 が、女神隊員はレーザーガンを構えました。なんとレーザーガンも巨大化してたのです。宇宙人Bはフリーズしてしまいました。
「へっ?」
 女神隊員はレーザーガンを撃ちました。その光線が宇宙人Bの胸を甲冑ごと貫通。
「そ、そんな・・・」
 宇宙人Bはあっけなく倒れてしまいました。それを見てマニアたちは喜びました。
「やったー!」
「さすがヘルメットレディ!」
 狂喜乱舞しているマニアの中には、先ほど粉を全身に浴びてしまった者もいました。
「ああ~ こんなにすごいものを見られるなんて、オレはなんて幸せなんだ~」
 宇宙人Cがヘロン号のビームに倒され、宇宙人Aもストーク号のビームにあっけなく破れてしまいました。マニアたちの歓喜はさらに大きくなりました。
「すっごーい!」
「やっぱりテレストリアルガードは世界一だ!」
 その歓喜ぶりをストーク号のコックピットから隊長が見てました。
「あは、こんな早朝からご苦労なこった」
 と、寒川隊員が四次元レーダーの異変に気づきました。
「隊長、大変です! 透明な未確認飛行物体があります!」
「なんだとっ!」
 隊長はヘルメットと一体になった無線機に叫びました。
「女神、伏せろ!」
 女神隊員はその声を聞いて、はっとしました。と、一条の光線が女神隊員の真後ろから地面と平行に飛んできました。が、光線が女神隊員の背中に命中する寸前に女神隊員は身体を伏せ、光線は通り過ぎていきました。マニアたちはびっくりしました。
「な、なんだ、今の光線は?」
 隊長が寒川隊員に命令です。
「ミサイル発射!」
「はい!」
 ストーク号がミサイルを2発同時発射。そのミサイルが何もない上空で炸裂。すると大量の粉が発生。その粉の中から1つの機体が現れました。マニアたちはそれを見て驚きました。
「あ、あれはスペースストーク号じゃないか?・・・」
 隊長の発言です。
「やっぱり来たか」
 それに寒川隊員が応えました。
「そ、それが・・・ 状況からして、昨夜からずーっとここに着陸して待機してたようです」
「お、おい、ほんとか? なんでそんなめんどくさいことを?・・・」
 女神隊員は立ち上がり、そしてスペースストーク号を見ました。それを見た途端、女神隊員にある記憶が沸き上がりました。女神隊員が乗ってきた宇宙船を攻撃した3隻の宇宙船。その中心にいた宇宙船が今目の前にいるのです。女神隊員の怒りのボルテージが一気に上がりました。
「あ、あの時の!」
 それに対しスペースストーク号のコックピットの入谷隊長も、目を不気味に光らせました。
「ふっ、こいつ、延髄を損傷したんじゃないのか?
 撃て!」
 入谷隊長の右に座ってた宮山隊員は、その命令に懐疑的です。
「いいんですか? もう正体がバレてますよ」
「構わん。正体がバレた時点で我々の懲戒処分は確定的だ。もう何やっても同じだろ。それにあいつはエイリアンだ。殺しても法的問題はゼロだ!」
「了解!」
 スペースストーク号がビーム砲を発射。女神隊員はそれをハニカム構造のバリアで防ぎました。宮山隊員は悔しがりました。
「ちっ!」
 今度は女神隊員がレーザーガンを発射。スペースストーク号はそれを魔法円のバリアで防ぎました。今度は宮山隊員よりさらに右に座ってた番田隊員がニヤっと笑いました。
「ふっ、そこらへんのへなちょこエイリアンと一緒にするなよ!」
 これを見てマニアたちはざわつきました。
「お、おい、なんでヘルメットレディとスペースストーク号が闘ってるんだ? 仲間だろ?」
 女神隊員は今度は右手を真上に挙げました。するとその手に剣が現れました。女神隊員は剣を振り上げたままスペースストーク号に雄叫びをあげて突進しました。
「うおーっ!」
 入谷隊員。
「おい、来たぞ。撃て・・・ いや、逃げろ!」
 それに宮山隊員が応えました
「了解!」
 スペースストーク号が消滅。女神隊員は急ブレーキ。振り返りざま片手で剣を振り下ろしました。
「もうその手は読めてんよーっ!」
 そこにスペースストーク号がジャンプアウト。迫って来る巨大な剣を見て、入谷隊長たちが悲鳴を上げました。
「うわーっ!」
 剣の切っ先がスペースストーク号の鼻先にヒット。そのコックピットでは、コンソールから火花が散ってます。入谷隊長たち3人はその火花を浴びてます。
「く、くそーっ!」
 それを見てマニアたちが歓喜の声を上げました。
「す、すごい!」
「どこにジャンプアウトするのか、わかってたみたいだ!」