昨日い続いて、問合せにお答えします。
質問は、
中村敦夫さんは、社会問題のテーマが数多くある中で
どうして、原発をテーマとして選択したのでしょうか?
というものでした。
中村敦夫さん本人でないので、正確なことは言えませんが
77歳というお年、脚本に3年はついやした、言っていることからも
いちばん大切なテーマと認識して取り組んでいることは明らかです。
幸い、昨日紹介した毎日子ども新聞だけでなく毎日新聞本紙も中村さんにインタビューしています。
その中から、「なぜ原発か?」という問いへの答えに当たる部分を探すと
以下の言葉がありました。
政治をやっていたころから環境問題、とりわけ原発については勉強し、折々に危険性を訴えてきました。福島原発事故は私にとっても想像以上の出来事でしたが、もはやエネルギー源として原発に頼る時代は終わったことが証明されたわけです。しかし、政府をはじめ、電力業界はいまだに反省もせず、再稼働を続けている。世論調査では多くの日本人が「原発には反対」と思っているのに、理由は「何となく危険そう」程度の知識しかないため、大きな声になっていません。
「何となく危険そう」程度の知識では、ダメだから「啓蒙演劇」「情報演劇」の手法を駆使して、クリアーな真実、本当に危険でダメなものなんだ、ということを知ってもらいたいと真剣に考えていることがわかります。
それは、返す刀で原発推進の論理の嘘八百を暴き出すことです。
こんでも、原発推進派はやめられねえって言う。その根拠つうのは、長い間国民が信じ込まされできたうそ八百だ。日本の原発業界は、技術と知識は最低だけど、うそだけは一流だがんな。まず、原発がねえと電気が足りねえつう大うそだ。
まさに、こんな嘘を許さず、言ううことは言う姿勢が、
原発をテーマに選ばせたのではないでしょうか。
今度、どこの地域の原発であれ、福島級の原発事故が起これば、日本列島は住めなくなります。
それは福島の事故から容易に想像できることなのに、そのことを突き詰めて考えずに「まあなんとなるのでは」というわたしたちの甘さをも浮かび上がらせているようにも思います。
答えは、もっとあるかもしれません。中村敦夫さんの気持ちを含めて、直接、会場に足を運んで感じ取っていただければ幸いです。
参考に毎日新聞インタビューをコピーしておきます。
インタビュー 朗読劇で原発廃止訴え 俳優・中村敦夫さん
https://mainichi.jp/articles/20170429/ddm/005/070/023000c
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連載記事
俳優 中村敦夫さん
テレビ時代劇「木枯し紋次郎」で「あっしには、かかわりのねえこって」が決めぜりふだった俳優、中村敦夫さん(77)だが、この十数年、環境問題に深くかかわっている。特に福島第1原発事故以降はさまざまな形で原発廃止を呼びかけている。5月からは朗読劇「線量計が鳴る」で全国を回る。まるで修行僧のような命がけの訴えだ。【森忠彦】
口をつぐんではいけない
「原発は安全だ、安全だぁ」って、自分も他人もだまぐらかして飯食ってきたんだからな。
揚げ句の果て、取り返しのつかねえ原発事故が起ごっちまった。自爆テロみでえなもんだ、これは。この話すんのは、ほんとにつれえわ。んでもな、どうやっだって現実からは逃げられねえべ。
--主人公は原発の町で生まれ育った元原発配管技師。自らの人生とともに原発の危なさ、愚かさを語る。なぜ、今、一人芝居なのですか?
政治をやっていたころから環境問題、とりわけ原発については勉強し、折々に危険性を訴えてきました。福島原発事故は私にとっても想像以上の出来事でしたが、もはやエネルギー源として原発に頼る時代は終わったことが証明されたわけです。しかし、政府をはじめ、電力業界はいまだに反省もせず、再稼働を続けている。世論調査では多くの日本人が「原発には反対」と思っているのに、理由は「何となく危険そう」程度の知識しかないため、大きな声になっていません。
では、メディアを持たない今の自分に何ができるか。やはり芝居しかない。私は「啓蒙(けいもう)演劇」の実践に挑んできた俳優座で育った役者です。社会の不条理に対してプロテストする芝居はできないか。原発の実態を知るには膨大な時間と費用が必要です。だったら私が原発被害者になりきって、普通の人たちに情報を伝えて理解してもらえるような朗読劇をやってみようと。それでも3年以上はかかりましたね。台本を書いては直し、また新しい要素も次々と加わって。
人に何かを伝えることがこんなに大変なことだったとはね。あえて名付ければ「情報演劇」、あるいは「役に立つ演劇」と言っていいかもしれません。
--2時間弱の劇は四つの場面からなる。技師の生い立ちや日本での原発の歴史、先例となったチェルノブイリ事故の事実、そして今も原発が動き続ける理由。すべて福島弁で語り続けられます。
小中学校をいわき市で過ごしましたからね。福島は第二の故郷で、思い入れはありますが、事故の後に調査を続けるほどに改めて「こんなに豊かで美しい所だったのか」と再認識しました。同時に「そんな所に原発を押し付けたのか」という怒りも湧いてきました。もちろん地元も合意して誘致したのですが、基本は地域振興のための大型公共事業の一つでしかありませんでした。地元では原発が危険なものだとは誰も考えていませんでした。
しかし、事故によってそれが明らかになったのです。今回の東芝を巡る問題の背景を見ればわかるように、もはや原発は世界的に時代のニーズに沿っていません。欧州や中国では原発よりも風力、太陽光といった自然エネルギーへの投資が盛んです。世界の潮流が完全に変わっているのに、日本だけが大手電力を守る法律と関係業界の既得権、利権のために時代の流れに逆走しています。まるで高速道路を逆向きに走る暴走国家。国のリーダーたちも危機感が欠けています。
こんでも、原発推進派はやめられねえって言う。その根拠つうのは、長い間国民が信じ込まされできたうそ八百だ。日本の原発業界は、技術と知識は最低だけど、うそだけは一流だがんな。まず、原発がねえと電気が足りねえつう大うそだ。
こんだけ理屈に合わねえ危険いっぱいのポンゴツ原発を、事故起ごした責任も取らねえで、なんで再稼働させんのけ。
--いよいよ、全国巡業が始まりますね。
昨年秋に福島県のある町でプレ公演をしました。あえて福島県内で試みたのですが、何ともやりにくかった。みなさん、関心は高いし、私が訴えていることを理解してもらっているようなのに、反応がない。口をつぐんだまま。中には「風評被害を広げるのか」と感じた人もいたかもしれません。でも、それではダメなんです。あれだけの被害を受けて生活も元に戻らないまま、一方的に忘れ去られようとしているのに、口をつぐんでしまっては。
おとなしいのは福島県人の特徴ですが、ちゃんと事実と向き合って、発言すべきはしないと。私は芝居の中でそのことをズケズケと言います。笑うところは笑って、怒るところは怒ってほしい。「そんたく」なんかしなくていい。6月にはいわき市で開きますが、今から楽しみです。
これから各地を回ってゆきますが、実は2時間しゃべり続けるのは77歳の老体にはかなり大変でして。まあ、修行のようなものですね。全国には原発を抱えた町があります。そこの人たちが上演してもいい。脚本は福島弁としていますが、各地の言葉にしたり、あるいは内容を変えても構いません。お祭り騒ぎのような気分で、原発の危なさを広く訴えていきたいですね。
★主な公演予定
5月7日甲府市▽25日熊本市▽6月3日徳島市▽16日いわき市▽18日、29日、7月16日、28日東京・笹塚。詳しくはホームページ(http://www.monjiro.org/)へ。
■人物略歴
なかむら・あつお
1940年、東京生まれ。疎開先の福島県いわき市で小中学校時代を過ごす。72年、主演したテレビドラマ「木枯し紋次郎」が大ヒット。情報番組キャスターなどを経て98年、参院議員(1期)。主に環境問題に取り組んできた。作家活動も盛んで、日本ペンクラブ環境委員。
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