阿武町から風力発電を考える
浅野 容子 (あさの ようこ)
阿武町の尾根筋に計画されている大規模風力発電事業が私たちの暮らしや阿武町の豊かな自然を脅かすのではないかと憂い、昨年夏以来「阿武風力発電所建設を考える会」の活動をしています。
各地の住民運動とつながるなかで見えてきたのは、陸上では山の尾根筋や「洋上」といいながら離岸距離1~4kmの沿岸に、100基単位で巨大風車が並ぶという度を越えた大規模な計画の数々でした。森林破壊や土砂災害、超低周波音による健康被害など住民の暮らしを脅かす問題は山積みのまま計画が進行しています。
政府が昨年10月に脱炭素社会実現のためには原発も必要という「2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指すカーボンニュートラル」方針を打ち出して以来、電気事業連合会や中国電力は「脱炭素社会へギアチェンジー再生可能エネルギーや原子力、水素発電などCO2を出さない発電方法に取り組む」と原発容認をテレビCMであからさまに流すようになりました。
風力発電は風が吹かなければまったく発電しない不安定な電源にもかかわらず、大企業が続々と参入し大規模開発がすすめられている背景には「再生可能エネルギー推進」という国策があります。高い固定買取り価格と再エネ賦課金が「風力発電ムラ」を支え、事業者が事業を進めやすいように建築基準法や森林法などが次々と改定されています。環境アセスにも要件緩和の動きが出ており、地方自治体に再エネ導入の目標設定を義務付ける動きさえ出ています。
電力会社が再エネ事業者から電気を買い取る財源は私たちが毎月支払う電気料金のうちの「再エネ発電賦課金」であり、しかも大企業はこの「再エネ賦課金」は免除されているという事実がほとんど知られていないため、地元からは「町の電気代を安くするなど住民への還元があるとありがたい」いうのんきな声が聞こえてきます。わが身に降りかかるかもしれない風力発電の危険性には耳を傾けません。
あれ?どこかで聞いたような話です。国が旗を振る「再エネGO」を疑うことなく「再エネはよかろう」と思考停止した人たちは、「この夏の電力需給が数年で最も厳しい」という一斉報道にも疑うことはなく、福島の原発事故のことはすでに記憶の片隅にもなく、そのうち「やはり原発もいるだろう」と言い出すでしょう。
本当に困ったことです。どうしたらよいのでしょうか、皆さまのお知恵をお貸しください。
参考:阿武風力発電所建設を考える会
https://www.facebook.com/groups/1754684604694700