<稽古>という言葉と<練習>という言葉があります。<修行>という言葉もあります。
私は一般道場や講習会(「武専」と呼ばれているもの等)での少林寺拳法(以下SKと略す)の修行を、「稽古」と呼んでいます。学校での部活動は「練習」と呼ぶようにしています。
やっている事に違いはないとは思うのですが、一般道場(SKでは「道院」と呼びます)での修行では、社会人がより自発的に目的を持って参加しているという意識、精神修養という意味も強くなると思うので(出来てないですが…)、「稽古」という言い方が妥当だと思います。他武道(剣道・柔道…)でも稽古と呼んでいると思うので「道場でやるなら<稽古>」という感じかも知れません。
一方、学校での部活動は学校教育下でのスポーツ活動の一環として部員たちも集まっていると思うので、「練習」と読んだ方が馴染むような気がします。指導する側としては「稽古」の意識を持ってもらいたいとは思いますが。。 これも、他の運動部は部活動を練習と呼んでいると思うので、揃えているという事もあります。
<修行>といういう言葉ですが、<修業>との違いが話題に出る事もあります。SKでは「しゅぎょう」は「修行」と書くのが正解で、レポートなどに「修業」と書くと減点されます。一つの技術(領域)を根気強く習得しようと頑張る事を強調すると<修業>でしょうか。料理人や職人を目指す事はよく<修業>と表現されます。一つの技術(領域)でなく全人格的・生活一般に向上させようという意識が強くなると<修行>でしょうか。。
<修錬>という言葉もありますね。<修練>は<修行>から精神的要素を除いて肉体の鍛錬を強調した感じでしょうか。すると上記の<稽古>や<練習>も活動自体は<修練>で括った方が、感覚的に収まるのかも知れないですね。
結論、、 言葉って難しくてちょっと面倒臭いですね(笑)。
◆ ◆ ◆
さて本題。
SKの稽古の補助教材として、私は写真イラスト付の書籍をお勧めします。これはSKに限らず、何か新しいジャンルに挑戦する時には、初心者にも解りやすく全体像を解説した書籍を一冊、<教科書>として持っているととても良いと思うのです。
なので指導している拳法部員にもそう伝えているのですが、彼らは中々やってくれません。勿論、必要無いならいいのですが、SKは独自の用語も多いし、特に最初は持ってた方がいいと思うのですがねぇ。
じゃあどんな本がいいのかというと、実は余り全力で推薦したくなる良い本はありません(無いのかよ)。現在注文可能な書籍でも、帯に短しタスキに長し、良い点もあれば何だかなぁというところもあります。各個で自分にあった本を選んで欲しいと思います。
既に絶版になった昔の本の方が、良いものが多い気もします(個人的見解)。強いて挙げれば、私は「図解コーチ 少林寺拳法」(成美堂出版)をお勧めします。理由は、技法に関する解説が丁寧で「痒い所に手が届く感」が強いからです。
Amazonでも買えますし、古本屋を当たっても結構手に入ります。
初心者向けではないですが、最近(と言っても5年程前になりますが)新井元会長がメイン解説者となって出版された「少林寺拳法 剛法の秘密」「同 柔法の秘密」のシリーズ(ベースボールマガジン社)も良い本です。本の内容に沿ったDVDも付いていたと思います。
(画像引用元: Amazon:https://www.amazon.co.jp/ ベースボールマガジン社:https://www.bbm-japan.com/article/detail/2773)
◆ ◆ ◆
稽古の参考にするというと、現代っ子は専らスマホで動画検索するようです。
身体を動かす事をしている訳ですから、動画は非常に良いようにも思います。しかしネットで出回っている動画にはどうにも技の原則を理解してない奇妙なものも多いですし、動画を見れば自分も出来る訳ではないと思うので、それで良しとするのは寧ろ非常に良くない事だと思っています。
私が入門した頃はまだインターネットも普及しておらず(存在はしてたと思うけど…)、書籍を含め技法を画像で一般に出す事は、「技法の流出」と呼んで本部本山が禁止していました。SKには「教え」と「技法」がある訳ですが、両者は一体なので、片方がダダ漏れになってはたまらないでしょう。私たちも情報の少なさに困っていましたが、「技は師匠から段階的に教わるもの」としてそれを受け入れていたように思います。
存命中は開祖が、その後は本部が許可制作した公式本だけが許されていた訳です。
その潮目が変わったのはまさしくインターネットの普及と、私が思うに海外拳士の勝手なアップロードでした。全世界でSKを楽しんでいる「同志」たちが、良かれと思ってどんどん動画を上げてしまった訳です。その中にもかなりおかしいものがありました。それで本部本山もやむ無しとして徐々に条件が緩和される事になりました。
現在もインターネットに関する指針というものはあります。公式見解と誤解されるような動画は規制されていると思います。しかし普及という事を考えれば、拳士たちからの自発的な発信を非難する事は出来ないでしょう。
何かと言えば本部本山を批判する「ご気楽拳士」も沢山居ますが、上げる側の、本部・技法へのリスペクトと自己批判は忘れてはならないと思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます