著者渾身の一冊。
デリダ、ドゥルーズ、フーコーから始まり、ニーチェ、フロイト、マルクスを経て、ラカン、ルジャンドル、レヴィナス、メイヤスーなどの二十一世紀におけるフランスの現代思想の紹介も行いつつ、私達の人生との向き合い方に即しても記述されている。誠実にかつリーダブルに書かれている。
「人は決断せざるをえません。先のツイートのケースでは、「大人は責任をもって決断するのだ」ということがある種の強さのように言われていました。それを言うなら、未練込みでの決断という倫理性を帯びた決断をできる者こそが本当の「大人」だということになるでしょう。」(p.54)
「すなわち、同じ土俵、同じ基準でみんなと競争して成功しなければという強迫観念から逃れるには、自分自身の成り立ちを遡ってそれを偶然性へと開き、たまたまこのように存在しているものとしての自分になしうることを再発見することだと思うのです。(p.140-141)」
「身体の根底的な偶然性を肯定すること、それは、無限の反省から抜け出し、箇別の問題に有限に取り組むことである。
世界は謎の塊ではない。散在する問題の場である。(p.214)」
p.214の引用は、それだけでは詩句のようだが、これは生き方に繋がっている結論部分である。思想と生き方が交差する地点の描写とも言え、辿って読めば分かるように書いてあります。個人的には大分参考になりました。