S・K・ランガー『シンボルの哲学』 2021-08-25 21:13:07 | 本 S・K・ランガー『シンボルの哲学』塚本明子訳 岩波文庫(2020)。原著は1942年刊行。アメリカの20世紀の幸せな時代の哲学。ポストモダンの小説を読むような論述だった。プラグマティズム的なのだろう。しかし、本著が記号論や芸術の哲学の源流となったように、その論述の豊かさと対象の広範さは指摘されるべきである。シンボル機能の結実としての言語、音楽、美術、神話、祭祀などについて具体的に詳説されている。
ベルクソン『時間と自由』 2021-08-14 06:46:19 | 本 アンリ・ベルクソン(1859-1941)『時間と自由』。正式名称は『意識に直接与えられたものについての試論』(1889)。カント理解に与するものがあるかな位の意識で読み始めたが、全くそれでは収まらない程の射程の長い著書である。そしてベルクソン本人は、カントの影響を全く受けていないという事なので、その通りスタイルも論述の仕方も全く異なる。原文は美文調なのであろう事が推察される。私は支持するのだが、「持続」という概念に対する信念を感じさせる論述である。そしてそれがベルクソンの哲学を形作る契機になっていることは間違いない。また時間を空間化されたものとして考える発想は非常に説得性がある。「カントの誤謬は時間を等質的環境とみなしたことであった。」(p.276)、「カントが与えた解決は、この哲学者以後、真剣に反論されたことがなかったようだ。」(p.113)とあるように、この著書はカントへの反論でもある。ハイデガーは「時間経験と時間意識に関する成果」が「アリストテレスとカントの水準を抜く本質的な成果」としている(『存在と時間』第82節の注)。ベルクソンは結局、持続や継起を説明しながら、運動の媒介によって時間が空間のなかに投影される様を描き出し、決定論と非決定論を批判しながら、最後は自由を顕彰するのである。細かい事かもしれないが、カントを批判しながらも、等質的な絶対空間の想定は同調しているのだが、その後の相対性理論の登場による時空の歪みの現象に対しては、どう考えたのであろうか。気になる所である。