荻伏共同育成場日誌

北海道浦河町にある競走馬育成牧場・荻伏共同育成場の場長が日々の風景をお届けする徒然日誌。

思い出の『東京優駿』~2010年~

2016-05-27 17:58:10 | 競馬
 -空前絶後のハイレベルなダービー-
 そんな言葉が踊る今年の『東京優駿』。群雄割拠な年は数あれど本当にハイレベルなメンバーが揃う年は少ないかもしれません。そんな中でも6年前のダービーは今年に勝るとも劣らないハイレベルなメンバーが揃った年でした。後にG1を勝つ馬は『ドバイWC』『有馬記念』を制したヴィクトワールピサ、『香港C』を制したルーラーシップ、『天皇賞(春)』を制したヒルノダムール、繰り上がりとは言え『ジャパンC』を制したローズキングダム、そして『天皇賞(秋)』を制したエイシンフラッシュ
 後々の活躍というだけではなく出走各馬のプレップレースでのパフォーマンスが高かったのも特徴で一冠目『皐月賞』ではヴィクトワールピサが内から抜け出し快勝。しかし外から追い込んできたヒルノダムールやエイシンフラッシュ、ローズキングダムも距離が延びればと思わせる内容でした。続く『青葉賞』では無敗のペルーサが、『プリンシパルS』ではルーラーシップが圧勝。盛り上がりを見せる中本番を迎えます。

-ハイレベルなメンバーによる凡戦-
 レースでは『スプリングS』の覇者で後に『毎日王冠』を勝つアリゼオが逃げる展開。そして1コーナーを回ると隊列は落ち着き、淡々と淡々とレースは流れていきます。1000m通過が1.01.6という遅いペースでも3コーナーを回っても一向に動く馬は現れません。どの馬も力があるため動いて目標とされることを嫌い一か八かの勝負に出る馬は現れません。4コーナーを回り最後の直線へ。どの馬も手ごたえがあり決め手だけの勝負。エイシンフラッシュが上がり3ハロン32.7という強烈な末脚を駆使し勝ちましたが興奮するところがなく呆気にとられるようなレースでした。勝ちタイム2.26.9はペルーサの勝った『青葉賞』よりも2.6秒も遅いものでした。競馬にタラレバは禁物ですが誰かが早めに動いて地力勝負に出てくれていたらと思うようなメンバー構成だっただけに今でももったいない印象です。

 今年の有力どころも差し馬が多いのですが牽制しあって2010年のようなレースにならないことを期待したいです。

日本におけるトレーニングセールの歴史

2016-05-26 18:18:08 | 仕事
 トレーニングセールという言葉が日本に持ち込まれたのは1991年バレッツトレーニングセール出身のヒシマサルが活躍した頃だったと思います。その後円高の影響もありトレーニングセール出身の外国産馬が猛威を振るい、日本でもできないかという機運が高まってきました。しかし当時の育成場の主流は冬場はじっくり乗り込み春になってからピッチを上げていくというものだったので、3月や4月の段階でハロン11秒といったレース並みの速度で調教を行うということに対して否定的な見方が一般的でした。

 1994年3月8日に三栄育成牧場が日本で初めてのトレーニングセールを開催。あくまでプライベートセールなので市場取引馬とはならないものの、このとき日本のセリも新たな扉を叩くことになりました。1997年には3つのトレーニングセールが新たに開催されることになります。ひとつは今唯一継続されている日高軽種馬農協が主催する「HBAトレーニングセール」(当初は北海道3月3歳トレーニングセール)、もう一つは有力牧場が出資し設立された株式会社プレミアセールという民間会社主催の「プレミアトレーニングセール」、そしてひだか東農協といういち農協が主催する「ひだかトレーニングセール」という3つです。

 これらの興亡については長くなりそうなので次回。

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HBAトレーニングセール2016の考察

2016-05-25 17:40:31 | 仕事
 昨日札幌競馬場にて「HBAトレーニングセール」が行われました。当育成場からの上場馬はなく通常業務もあるため見に行くこともできず、今YOUTUBEでようやく第2クルーまで公開調教を見終わったところです。全部見てから考察を書こうかとも思いましたがタイムリーではなくなってしまうので今日書くことにしました。

「馬市ドットコム」さんの結果レポートを引用させていただくと、売却率、売却総額、平均価格ともに昨年を上回っています。但し中間価格は昨年と同じ。ということは一部の馬が平均価格を押し上げたことになり、取引結果を見ても高額馬とそうでない馬の差がはっきり出ており、平均価格に近い馬が少なかったような印象を受けます。
 第2クルーまでしか見ていない公開調教ですが、以前と比較しますと2ハロン揃えてくる育成場が増えているという印象。一昔前はラスト1ハロンだけ時計を狙うような育成場も多かった気がしますが、今ではほとんど見受けられません。

 最高価格は追分ファーム生産、追分リリーバレー育成の「サルヴァドール14」(牝 父ルーラーシップ)の4600万円。2ハロン21.83という2ハロンの最高時計をマーク。写真だけでコメントするのも何なのですが、ルーラーシップ産駒らしい筋肉質な馬体でパワフルな印象ですが、公開調教をみる限り重心が低く芝の方が良いのではないかと思わせる脚捌きでした。

 明日は過去のトレーニングセールについて紐解いてみたいと思います。

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今週の注目馬「タニノアーバンシー」

2016-05-24 05:14:41 | 競馬
 『東京優駿』を牝馬として64年ぶりに制したウォッカ。あれから9年。もう大々的にニュースで流されているので今更感はありますが、21日土曜日今日と5レースの未勝利戦(芝2000m)で勝ったタニノアーバンシーを取り上げたいと思います。
 昨年の暮れ以来5カ月ぶりの出走となった今回。休み明けの割には体ができている印象。
 レースではハナを切るのではと思わせる好発から2番手に控え追走。4コーナーではもう先頭に並びかけあっさり抜け出すと後続を寄せ付けず快勝。勝ちタイムは2.00.6。跳びの大きな走りで母のような切れはありませんが長く良い脚を使えそうな印象です。
 父はシーザスターズ Sea the Srars、母ウォッカ、母の父タニノギムレットという血統。イギリス生まれで全兄は体重のことばかり話題になり、全姉は惜しい競馬が続いた後故障で無念の引退と母として結果を残せていなかったウォッカですが、産駒が強い勝ち方で勝ち上がり繁殖牝馬としての今後も楽しみになってきました。
 レース未見の方はJRAのHPで見れるのでチェックしておいてくださいね。

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