今回のラボ通信は通常媒精・顕微授精後の『異常受精』についてお話させて頂きます。
前回のラボ通信では正常受精についてお話させて頂きました。2つの前核と2つの極体があれば正常受精となりますが、異常受精とはどういった状態なのでしょうか
下の写真は、前核が3つ、極体が2つ確認できます。通常媒精によってこのような受精をした場合は、多精子受精と呼ばれます。通常、卵子の中に精子が侵入すると、卵子の殻(透明帯)や細胞膜が固くなり、他の精子が侵入できないようにブロックされます。しかし、2つ以上の精子が同時に侵入したり、卵子が上手くブロックできない場合にこのような異常受精を引き起こします。
受精卵の中央に3つの前核、6時と7時方向に極体があります
卵子の中に精子が2つ入ったら、双子になるんじゃないの
受精卵の発育が止まったり、妊娠したとしても流産してしまいます
ヒトの染色体は『44本の常染色体と2本の性染色体』の合計46本です。卵子や精子は減数分裂という段階を経て、通常の半分である『22本の常染色体と1本の性染色体』の合計23本を持っています。半分ずつの染色体をもった卵子と精子が出会って、『44本の常染色体と2本の性染色体』をもった受精卵になるわけです。
上の写真のように、1つの卵子に2つの精子が侵入し受精した場合、
23本+23本+23本=69本の染色体をもつことになります。染色体の数が多すぎるため、受精卵が発育しなかったり流産する可能性が高くなります。
実は、顕微授精の場合でも3つの前核をもつ異常受精が起こります
顕微授精は卵子の中に精子を1つだけ入れているはずじゃないの
もちろん、精子は1つしか入れていません
卵子の中に精子が入った後、卵子から放出されるはずの第2極体が、卵子から出てこれずに3つ目の前核を形成してしまう場合があります。これを第2極体放出不全といいます。そのため極体は1つしか確認できません。
今回お話させて頂いた以外にも、前核の数によって異常受精と判断される受精卵があります。異常受精と判断された受精卵は、移植の対象とはなりません。そのため、当院ではご夫婦が納得されるまで『なぜ異常受精になったのか』『なぜ移植に使えないのか』等について、しっかりお話させて頂いております
以上が『異常受精』についてのお話でした
ご質問がございましたら、いつでも胚培養士にお声かけください
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