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受精卵の凍結保存について

みなさま、こんにちは

今回のラボ通信は『受精卵の凍結保存』についてお話させて頂きます

受精卵を凍結保存する目的は、新鮮胚移植で使わなかった余りをストックとして置いておく、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を防止するために全ての受精卵を一旦凍結する、子宮内膜が薄く新鮮胚移植ができない、繰り返し新鮮胚を移植しても妊娠しない場合に凍結胚移植で妊娠率向上を図る、など様々です。


どんな受精卵を凍結保存するの
基本的には前核期胚(Day1)、初期胚(Day2-3)、桑実胚(Day4)、胚盤胞(Day5-7)、どの時期の受精卵でも凍結保存することができます。施設によって異なりますが、当院では初期胚と胚盤胞の時期で凍結しています。また、受精卵の質(グレード)が良い方が、融かした後の生存率は高くなります。

受精卵の凍結保存ってどうするの
胚培養士が特殊な培養液(凍結保護剤、耐凍剤)を使って凍結保存します。受精卵は生き物ですから、お肉やお魚みたいにそのまま冷凍庫へポンッと入れる訳にはいきません。

受精卵の凍結方法は、緩慢凍結法、ガラス化法、超急速ガラス化法など様々です。当院では超急速ガラス化法(Vitrification)を採用しています。おそらく日本で一番使われている凍結方法です。

水は凍らせると体積が大きくなりますよね?受精卵の中(細胞内)にも水分が含まれており、そのまま凍らせると、中の水分が氷晶となり細胞膜が壊れてしまいます。冷凍したお肉があまり美味しくないのはそのためです。
受精卵の凍結保存では、この氷晶形成を防ぐために凍結保護剤を使って脱水させ、マイナス196℃の液体窒素で一気に冷却させます。そうすると受精卵は氷晶形成がまったくない、細胞質が固化した状態(ガラス化)で保存されます。だいたい15-20分程度で作業は終了します

 脱水中の受精卵です。
これを下の写真のようにプラスチックの板の上にのせて、液体窒素の中に浸けます ぼんやりと丸くみえるのが受精卵です

どれくらいの期間、凍結保存することができるの
理論的には、半永久的に凍結保存が可能です。
ただし、半永久的に保存されると凍結タンク内がいっぱいになってしまいます 当院では、1年毎に更新の手続きをして頂ければ、最長5年間凍結保存が可能です(それ以上の更新を希望される場合は要相談となります)。

最近では、第1子を体外受精で出産されて、2人目希望で残った凍結受精卵を移植される方が増えてきました。同じ日に採った卵なのに、生まれる年が違うのはなんだか不思議ですね

以上が、受精卵の凍結保存についてのお話でした
ご質問がございましたら、お気軽に胚培養士にお声かけください
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