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タイムラプスインキュベーター ~メリット② 動画観察~

みなさまこんにちは
今回はタイムラプスインキュベーターの最大の特徴についてお話しします。
タイムラプスを使う一番のメリットは受精卵にストレスを与えずに、発育過程を動画によって観察できるところです。
タイムラプスインキュベーターの導入により、今までの観察では分からなかった分割の仕方分割の速さがわかるようになりました。

タイムラプスインキュベーター導入前の観察では、受精卵へストレスを最小にするため、1日1回、短時間で受精卵を培養器から出し、顕微鏡下で評価する観察方法しかありませんでした。
なぜ、一日1回の顕微鏡下の観察で受精卵にストレスが生じるかわかりますか?
本来、受精卵が存在する子宮の中や卵管内は、私達が生活している空間とまったく環境が違います。
子宮の中も、卵管の中も、私達が普段吸っている空気に満たされた環境ではなく、ガスの濃度も温度も全く違うのです。
ですから、受精卵にとって居心地の良い環境に整えられている培養器の中から外に出されることは、とてもストレスなことなんですよね!
そして、1日1回の従来の観察方法では、観察時点での受精卵のグレードはわかりますが、観察していない時間帯の分割の様子や順調に育っているか?は、はっきりとはわからず、発育過程に何らかの異常が起こっていても見落とされてしまう可能性が大いにありました。

タイムラプスインキュベーターを使うと、発育の様子が内蔵のカメラによって、24時間常に記録され、受精卵を培養器から出す必要がなく、パソコン上で分割の様子を常に確認できます。
この記録を解析することでグレード以外にもたくさんの受精卵に関する情報が得られます
たとえば
受精から何時間後に分割しているのか
分割の速さは正常か
異常な分割はしていないか
などがわかってきます。

採卵後、3日目でグレードの高い胚が2つあったとしましょう。
そのうちのひとつは3日間で異常な分割をしているがグレードはそんなに悪くない。
もう一つは正常なスピードで正常な分割をしている。 
3日目の時点で前者、後者とも胚のグレードは同じです。
どちらの受精卵を選び、移植しますか?
前者は移植しても子宮の中で発育が停止し、着床までいたらない場合があります。


妊娠の可能性が高い受精卵を選択し移植することが、体外受精においてはとても大切です。
タイムラプスインキュベーターの導入により、受精卵のグレードだけでなく分割の仕方や分割の速さなどから妊娠する可能性が高いと思われる受精卵を選択することが可能になってくると考えられます
当院では全症例の体外受精に対してタイムラプスインキュベーターを使用しています。


また、移植前の受精卵の説明も動画を使って患者様に説明させて頂いておりますのでなんなりとご質問くださいね。

以上タイムラプスインキュベーターの動画観察についてのお話でした。
ご質問や気になる点があればいつでも胚培養士、臨床検査技師にお声かけください。
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