みなさま、こんにちは
当院では、胚培養士や臨床検査技師が人工授精の精子調整結果をご説明しています。
今回の記事は、その時に患者様よりいただいたご質問とそれに対するお答えをご紹介いたします
Q1. 前回の精子検査の結果は良かったのに、今回は基準値を満たしていないのはなぜですか?
A1. 精子は精巣でつくられてから出されるまでに3か月程かかります。その3か月の間に、ご主人の体調が優れなかったり、ストレスがかかったりすると精子所見は悪くなる可能性があります。また、採取する時の気分や場所によっても変動する方もいらっしゃるようです。
特に、インフルエンザに罹った後は、精子所見が少なくとも3か月間は悪くなるという報告もあり、なるべくインフルエンザが治ってから3か月間は治療をお休みされた方がいいかもしれません。
Q2. 人工授精時、集まった精子の数が少ないと妊娠しないのではないですか?
A2.確かに、運動精子数が少ないと妊娠率は低下します。当院のデータでは、調整後の運動精子数が1000万個以上で妊娠率10.0%、1000万個以下500万個以上で妊娠率5.0%、500万個以下で妊娠率5.0%以下となっています。ただ、精子の数が少なくても妊娠する方はいらっしゃるため、人工授精が無意味であるということはないと思います。数回人工授精にチャレンジしてみてからステップアップを検討されてはどうでしょうか。また、人工授精の妊娠率は精子の形も関係しているようです。
Q3. 精子検査の結果があまりよくないのですが、どうしたらいいですか?
A3. 複数回検査を受けてもあまり良い結果が得られない場合は、男性不妊症外来の受診をお勧めしています。当院では隔週の土曜日午前中に男性泌尿器科医師による診察を行っています。同時に治療のステップアップについても検討されることをお勧めします。タイミングから人工授精、人工授精から体外受精・顕微授精へのステップアップには、奥様の年齢だけでなくご主人の精子所見も関わってきます。ステップアップについては、医師や看護師、胚培養士にご相談ください。
Q4. 次回の人工授精の周期に夫が出張で不在になるけど、どうしたらいいですか?
A4. 事前に精子を凍結保存しておき、人工授精当日に精子を融解して(溶かして)使用することができます。ただし、凍結精子の生存率はあまり高くなく、新鮮精子に比べると運動精子の数が半分以下になる場合もあります。人工授精目的で精子を凍結する場合は、運動精子の数によっては凍結保存できない可能性があります。顕微授精目的の場合は、運動精子数が少なくても凍結保存することができます。
Q5. 禁欲期間がいつもより短いのですが、大丈夫ですか?
A5. 禁欲期間が短くても問題ありません。むしろ禁欲期間が長くなると、精子の濃度は増えるかもしれませんが、古い精子が出てきているために、運動率が低下したり精子の質が悪くなったりしてしまいます。禁欲期間の長さよりも定期的に排出している方がつくりたての新鮮な精子が出やすくなり、運動率や精子の質が向上します。3日に1回や1週間に1回は出しておくなど、習慣化することが大事だと考えています。
Q6. 今回で3回目の人工授精ですが、体外受精へのステップアップの目安は何回目くらいですか?
A6. 5回目くらいまでは回数ごとの妊娠率に差はないようです。ただし、患者様の年齢や精子数によっては、医師より早めのステップアップを勧められる場合があります。その場合、だいたい3-4回目の人工授精を目途にステップアップされる方が多い印象です。
また、体外受精や顕微授精にステップアップしたからといって、『人工授精にはもう戻れない・・・』ということはありません。体外受精や顕微授精をお休みする周期に、人工授精やタイミング療法に戻るステップダウンという考え方もあります。実際に、ステップダウンして妊娠された患者様もいらっしゃいます ご自身の治療なので、医師のアドバイスを受けつつも、 『 進みたいときに進んで、戻りたいときに戻る 』 ということをしても良いのではないでしょうか
以上が、患者様よりいただいたご質問でした。
まだまだ書ききれていないので、少しずつアップしていきますね
ご質問がございましたら、いつでも胚培養士にお声かけください