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子宮内フローラ検査 : 子宮内細菌叢

みなさま、こんにちは 胚培養士の中原です。

子宮に関する検査を新たに開始しましたのでご説明いたします

最近、腸内フローラ(腸内細菌叢:さいきんそう)という言葉をよく聞きますね 腸内には多くの細菌が存在しており、その様子がお花畑のようであることから、『フローラ(細菌の集合体)』と呼ばれています。腸内細菌は以下の3種類に分類されています。
 善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌などの発酵菌)
 悪玉菌(ウェルシュ菌やフラジリス菌、その他病原性大腸菌)
 日和見菌(善玉・悪玉の優勢な方に味方する菌)
この3種類の菌のバランスが、善玉菌 : 悪玉菌 : 日和見菌 = 2 : 1 : 7 であるのが理想的とされています。このバランスが崩れると、便秘や肥満になったり体調を崩したりするようです。

実は、無菌状態と思われていた子宮内にも細菌が存在することが近年の研究で分かってきました。子宮の中にも善玉菌・悪玉菌・日和見菌が存在し、『子宮内フローラ』と呼ばれています。

2016年には子宮内フローラが乱れていると、体外受精の結果が悪くなるという論文が発表されました。子宮内フローラが乱れて雑菌が増えると、子宮内膜で免疫が活性化し、受精卵を異物として攻撃してしまう可能性が指摘されています。具体的には、子宮内の細菌のうちラクトバチルス属(乳酸菌)が90%以下の患者では、妊娠率が低下し、流産率が上昇したという結果が出ました。

そこで、当院でも子宮内フローラを調べることができる検査を今年から導入しました
(ただし、子宮内フローラに関する論文は少なく、この検査を受けることに対する臨床的な意義は十分に確立されていないことをご了解ください。当該検査は、臨床研究という位置付けになります。)

検査方法は、
 子宮内膜を生検(月経中や妊娠の可能性がある時期以外ならいつでも可能)(麻酔なし)
 検体を国内の検査会社に発送します
 2-3週間後に検査結果が返ってきます

検査結果は、
● 正常結果は子宮内フローラの90%以上をラクトバチルス属が占めること(文献より)
● 望ましくない結果が出た場合、食生活の改善やサプリメント(ラクトフェリン等)の内服を推奨

検査を行う上での注意点は、
 子宮内の細菌バランスを調べるもので、遺伝子異常を調べる検査ではない
 検査を行う周期は、子宮内膜を生検するため妊娠の可能性がないことが望ましい(避妊が必要)
 子宮内の極僅かな細菌を調べるため、検体の状態によっては検査ができない可能性あり
 細菌バランスが乱れている(悪玉菌が増殖している)場合は、生活習慣を見直した上で再検査を行う可能性あり
子宮内フローラについての知見は研究段階で、その明らかな意義は十分に確立されたものではない
 当該検査は臨床研究段階のため、臨床研究終了後に検査費用が変更になる可能性あり

以前当院に通われていた患者様から、あるご質問を頂いたことがあります。

「私の年齢的に今回の胚移植が最後だと思っています。受精卵は凍結してあるので、これ以上のことはできませんよね。だったら、少しでも良い状態の子宮に移植したいんです。内膜の厚みを測ること以外に、できることはないんですか?」

子宮の中の検査は、超音波検査、子宮卵管造影や子宮鏡手術で、子宮筋腫や子宮内膜ポリープを観察したり切除したりする、という方法が一般的です。受精卵を移植する周期でも、超音波で子宮内膜の厚みを測ることだけでした。もちろん、それらはとても重要な検査です。ですが、この患者様が求めている答えではないなと、私はこの質問にお答えすることができませんでした。

ご質問を頂いてから6-7年くらい経ってしまいましたが、その時の答えが子宮内フローラ検査とERA検査だと思います

原因不明不妊の方、反復する原因不明の着床不全・流産・化学的妊娠の方、早産の既往がある方など、ひょっとしたらその原因は子宮の中にあるかもしれません。

検査についてご質問などがございましたら、いつでも医師・胚培養士にお声かけください

子宮内フローラ検査について詳しくはこちらをご覧ください。


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