8月は「夏涸れ」といって魚が獲れなくなる。
直売所で販売する魚が満足に集まらないので、この日は崎地区の大型定置網に仕入れに来た。
残念ながら、「大漁」ではないけれど少しだけでも魚を仕入れることができた。
石鯛、マルアジ、ウマヅラハギ、豆アジ。
直売所に帰ってくると、並べるそばから売れてあっという間に完売。
まだまだ魚が欲しい人を満足させることができない状態で悔しい。
一方、別の悔しさを感じる時もある。
何とか仕入れてきた魚を決して多くはないけれど販売しているとき、
売場を見て「何にもないね」と言われること。
いや、ちょっとよく見て、魚が並んでますよ。
でも、そのお客様から見たら欲しい魚が無ければ「何にもないね」。
魚があるのに、魚が無い。
たとえなじみが無くても、市場で評価されなくても、そこには漁師が海からとってきた魚がある。
前にも紹介したマルアジとマンパチ。
海士では小さい線がくっきりしている石鯛をマンパチと呼ぶ。
この魚もあまり人気が無い。
石鯛(マンパチ)、210gで189円。
マルアジ2尾580gで232円。
マンパチはお刺身に。
大きくなれば最高に美味しく、高級魚として喜ばれる石鯛との違いはいかに。
手間はかかるし、季節的なものか磯の香りが少しあるけどやはり美味しい。
脂のないマルアジはオーブン焼きで。
オリーブオイルでコクを足しつつ、今年作った大葉ペーストと醤油で味付け。
食べようによっては、美味しい魚がある島。
ないものはない。
島で和食の料理人を育てるプロジェクト「寺子屋」の佐藤さんが
インタビューでとても素敵なことを言っていた。
「島には都会みたいにいろんな食材がいつもそろっているというわけじゃないけど、その日あるもので最高の料理をつくって、
人に『おいしい』と言ってもらうって幸せなことなんだ。これは生徒になる子たちにも経験させてあげたいこと」
こういう風に思える人が増えるといいな。
島で暮らし始めて20年以上経つというのに
今夜のメニューを考える際、未だ先に立つのは「私の造れるモノ」
「その日あるもので最高の料理を…」
これ、最高ですね。憧れます・・・