今回はECサイトの立ち上げに続いて取り組んだ鮮魚流通の販路拡大についてのお話。
前回の記事でWEB通販が価格決定権を持った販路という書き方をしたのですが、これは全体の1%しかなく(当時)
逆を言えばそれ以外の99%は価格決定権がない販路ということ。
(一般的には)魚を市場に出荷するとセリにかけられて価格が決定されることをご存知の方も多いと思います。
つまり、出してみるまで値段がわからないわけです。
昨日の倍の魚が獲れて水揚げ金額が上がると期待したのに、他の漁師もいっぱい獲れたから単価が半分になったら
何も変わらないというわけです。
変わらないどころか、作業量や物流コストも倍になっているので売上は同じでも利益は減っていますね、この場合。
この状況では漁師の頑張りは結果が約束されず、やる気があまり出ません。
海士町での漁業を儲かる仕事にして新規参入が増えるというゴールに対して、
漁師をサポートする漁協の立場としては鮮魚流通全体の収益改善を目指す必要がありました。
具体的には、一番近い産地市場である境港以外に、京都・大阪・岡山・築地(現豊洲)・福岡・名古屋といった
大消費地へ直接送る体制を作りました。
海の時化などによって魚の需給に過不足が発生するため、市場によって魚の値段は変わってきます。
また、もともと地方によって好まれる魚が異なるため、特定の市場では相場が高い魚なんかも出てきます。
こういった状況を見極め、魚種によって送る市場を変えることでできるだけ高く買ってもらうことが重要です。
それが可能になった背景としては、「産地直送」や「大手小売スーパーとの直接取引」など全体的に鮮魚流通の在り方が変わってきたことと、海士町漁協は県下で唯一の単独漁協であったため、身動きがとりやすかったことが挙げられます。
年に一か所、やる気のある漁師さんを集めて未開拓の市場に行き、
周辺の先進的な取り組みをされている漁師や加工業者へ視察に行って情報収集。
その過程で漁師さん達とは一緒に過ごす時間が長く、
いろんなことを教えてもらえる関係性を築くことができたという副産物もありました。
まあ、要はよく一緒にお酒を飲んでいましたw
(島のレジェンド漁師さんたちと市場に行った時の様子)
新しい市場では月別の、魚種別の漁獲量データをもとに情報交換をして
いくつかめぼしい魚を選んで取引を開始するようにしていました。
送ってみては評価と改善点を聞き、また送る。フィードバックを繰り返しながら
高く売れる魚を漁師さんと作っていきました。
この過程で鮮魚の鮮度保持技術やその理論などいろいろ勉強させてもらいました。
鴨川市漁協にて神経〆&タグ付け出荷の視察
ウエカツさんが来た!
クエ縄試験操業 海士町×対馬
そうした結果、一例をあげれば400円~800円/㎏くらいが相場だった真鯛が
2,500円/㎏で売れるものが出てくるまでになりました。
しかし、一方で高く売れることがわかっていても今までのやり方を変えることに抵抗を感じる人もおり、
一部の人しか出荷を続けることができなくなってしまいました。
この頃までは儲かる漁業にできれば後継者が現れると単純に考えていたのですが、
どうもそれだけじゃないのかもしれないと考え出したきっかけとなる出来事でした。
そして考えたのが「魚のある島の幸せ」ってどういうことだろうということ。
そのあたりはまた、次回へ。
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