漁協の直売所でつかっている「アワビおこし」。
生簀の水槽に張り付いているアワビをはがす時に使う道具です。
道具自体は市販のものもあるのですが、これは漁師さんの手作りによるもの。
3年前に漁協の直売所を担当するようになってアワビを集荷に回っていると、
一際上手にアワビをはがす漁師さんがいることに気が付いた。
その人が使っている道具は他の人とちょっと違っていて、聞いてみると・・・
「これは自分で作ったんや」
その丁寧なつくりをみて惚れ込み、頼んで作ってもらえることになった。
その独特の曲がっている角度や、手になじむ持ち手の作り。
そしていとも簡単にアワビを起こす先端の形状。
これはもう、特許もんだと思っている。
使い始めて3年、これがないと仕事ができないくらいに思っていた。
夏休み明け、出勤すると異常に気が付いた。
いつも通りにアワビを起こそうとすると身に傷がつくのである。
よく見ると、本体がすんごい曲がってた。
誰がどうやって曲げたんだ?
いつもの道具が使えないことで仕事していても不安で、
いてもたってもいられなくなり修理を頼み込んだ。
電話で事情を話すと、「あんなもんどうやって曲げたんだ?」と
漁師さんも半信半疑。
「とにかく持って来い」と。
実物を見せると、「こんなのすぐ直るわい」。
ご自身の使っている「アワビおこし」と比べながら元の角度になるまで
ハンマーでたたき、微調整。
ついでに傷がついていた先端部もサンダーで磨いてくれた。
「またいつでも持ってきなさい。すぐに直してやるわ」
感謝しつつ、いつも素敵だなと思ってたご自宅の倉庫兼作業場の写真を撮らせて
いただいた。
ロープからハンマー、針金から物差しなど様々な道具がサイズ別に壁にきちんと
収納されていて、見ていてとても気持ちがいい素敵な空間だ。
話を伺うと、漁師さんは元船乗りさんで、その前は大工さんだったとのこと。
その当時家も何軒か立てているそうで、道具はそのころからのものも多いらしい。
海士にはいろんな知恵を持った人がいて、いろんな暮らしの形を作っている。
素敵なところを自分も真似できるようになりたい。
こんどは酒もってお邪魔したい。
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