さて、いよいよお話も佳境です。
では、Aさんへのサポート手始めが、何故ハガキなのか。
その辺りの続きから。
私 「これまでのお話から、Aさんには少なからず対人不信の様子がみられます。
そこで、まずは私の人となりをAさんにご存知いただく必要があります」
父 「そんなハガキじゃなくて、トニーさんに家まで来てもらって、Aと直接
会っていただくわけにはいかないのでしょうか」
私 「もちろん、ゆくゆくは家庭訪問も想定しています。しかし、今はお互い
見ず知らずです。私はAさんの状況を伺いましたが、Aさんは私のこと
を全く知りません。そこへ訪問しても『誰だお前は。どうせ親の回し者
だろ!』と思われて終了です」(ニッコリ)
母 「でも、ハガキが来たら、どちらにしても私たちがトニーさんに相談した
ことがAに分かってしまいます」
私 「おっしゃる通りです。そこで、ハガキには『先日、たまたまご両親と会う
機会があり、そこでAさんのお話を伺いました』と記します」
父 「そこまで手を尽くさんでも。私の知り合いとか何とか言いつくろって訪問
してくれたらいい」
私 「フフフ」
父 「?」
私 「人を信用しないAさんに嘘をつくと」
父 「そ、それは…。嘘も方便って言うじゃないですか」
母 「お父さん、Aをバカにしすぎてるわ」
父 「なんだと!?」
私 「まあまあ。いずれにしても私の取り組みはできるだけ正攻法で、魔法じかけ
や強引な方法ではなく、誰でも自然に取り組むことができそうな工夫を積み
あげていくのが私の方法ということをご了承ください」
母 「それで、ハガキはどの程度送っていただけるのでしょうか」
私 「月に一回程度です。ハガキの裏面には私が普段デジカメで撮影した風景写真
をプリントして、その感想を聞くこともかねて送ります」
父 「感想を聞く?誰が」
私 「ご両親にです」
父 「だから、私らはAと普段顔を合わせないんですよ」
私 「聞く方法もいくつかあります」
母 「あの・・。どんな方法が」
私 「ひとつは、『トニーのハガキを読みましたか。感想があれば私たちを通じて
トニーに伝えます。口頭でもメモ書きでも良いので教えて欲しいです』と
食卓にメモを置いておくのです」
母 「なるほど…。そう言えば、私が出かける時、Aにメモを残したことがありま
した。読んでくれるかなって思ったんですけど、その形跡はあったわ」
私 「では話が早い」(ニッコリ)
というわけで、私はAさんにハガキを月一回出すようになりました。
お父さんには、始め「ハガキなんか効果あるのか」という不信がありあり。
しかし、回を重ねるにつれて、幸いにもAさんがメモを残してくださるように。
その経過を、月一回の継続面接で伺っていきました。
同時に、その面接はご両親のこれまでの振り返りと、今後の展望を見いだす貴重
な時間となっていきます。
そうして1年が過ぎようとする頃、少し大きな進展がありました。
父 「トニーさん!Aがこの間、く、く、口を利いたんです」
私 「それは良かったですね!どのようなお話をされたんですか」
父 「はい(満面の笑み)。日中、Aが久しぶりにリビングに降りてきたので、
私も照れくさいというか、でも思い切って『トニーさんからの毎月ハガキ
があるのありがたいよな』って声かけたんです。そしたら『確かに物好き
な人だ。この間の浜辺の写真は綺麗だったな…』って小さい声でしたけど
そう言いよったんですわ。私はもうこう(胸に手をあてて)じわ~っとき
てしまいました」(ちょっと涙ぐむ)
母 「はい。私もAの声を聞いたのは、ほんともう久しぶりで。覚えがないくらい」
私 「おお、それは進展です。それもこれまでご両親があきらめずにコツコツと日々
取り組まれてきた証ですね!」
父 「いえいえ。それにしてもここまで長かったです。トニーさんも気が長い」
母 「ほんとに…」
私 「まあ、元は短気なのですが、釣りや皆さんから鍛えていただいていますから」
そうしてまた3ヶ月程度過ぎる頃、Aさんからコンスタントにハガキの感想をいた
だけるようになりました。
そして、ご両親と初めて会ってから一年半が過ぎる頃、ちょうど桜があと少しで咲く
という頃でした。
私 「それでは、来月あたりAさんに会いに行こうと思います」
父 「おお、いよいよですね!」
母 「是非お願いします」(満面の笑み)
父 「Aには何て言って伝えたら良いでしょう」
私 「ところで、Aさんのお宅近くに××公園がありましたね」
父 「ええ、あそこは今から桜が満開になります。そりゃあもう綺麗で」
私 「はい。Aさんとはその公園でお会いしたいと思います」
父 「えっ、家に来ていただくんじゃ…」
母 「そこは慎重に、ですね」(ニッコリ)
(支援者冥利に尽きる瞬間!!!)
私 「はい。無論それもあるのですが、私はAさんに××公園をご案内いただきたい
のです。桜の写真が撮りたいので」
父 「なるほど…。一石二鳥ってやつですな」
母 「お父さん、そういうの大好きだよね」
(ご夫婦のやり取りも朗らかになりました)
私 「では、そのようにお伝えください。私もハガキで改めて認めます」
そして、桜が満開になった4月、晴れてAさんと私は××公園で会うことができたのでした。
ひきこもりはどこで「抜け出した」と言えるのか。
外出できるようになったら? 家族以外の人と話せるようになったら?
フリースペースと呼ばれる場所へ行くことができるようになったら?
仕事に就いたら?
以前、私はひきこもり状態だった人が、アルバイトを含め、何らかの報酬を得るようになった
時が、「抜け出した」と言えるのではと考えていました。
でも、ある時「私はこうして仕事に就くことができましたが、気持ちはひきこもっていた
頃と何にも変わっていません」、「やっと外出できるようになりました。これってひきこもり
脱出ですよね」という経験された方のお話を伺う機会があり・・・。
以来、ひきこもりを抜け出したと言えるのは、「その人の気持ち次第」と私は考えるようになりました。
最後まで読んでくださった貴方に感謝。
ご質問、ご感想があれば何なりとm(_ _)m
大学までは何の問題もなかったのですが、就職に失敗して1年も経たぬうちに会社を辞めました。その時、息子が会社を辞めたことを突然聞かされたので怒ったところ、それから私とは口を利いてくれなくなりました。今は家内とは少し話すみたいですが、昼間は部屋から出ず、夜になると食事をしたり、テレビを見るために居間へ下りてきます。
何年か前に、一度保健所へ相談に行きましたが、話を聴くばかりで具体的なアドバイスはもらえませんでした。
息子はこのまま歳をとっていくばかりです。昨年、私も病期で入院してからというもの、すっかり気力が衰えてしまいました。私や家内が死ぬとまでいかなくても、体が動かなくなったら息子はどうするつもりなのか。先々のことを考えると不安になるばかりです。
私はどうしたら良いのでしょうか。何かアドバイスがありましたらお願いします。
私が今一番悩んでいるのは、息子と全く会話できないことです。息子が私を避けていることがはっきりと分かります。暴力をふるったりモノを壊すことはありません。逆に本当に部屋に居るのかどうか分からないくらいひっそりと暮らしています。以前は、あまりに静かなので、ひょっとしたら倒れているんじゃないかと心配になって、家内に頼んで様子を見に行ってもらったことがあります。
5年くらい前に、年配のボランティアさんに頼んで家に来てもらったことがあります。その時、ボランティアさんは息子の部屋の前まで行って声をかけてくれましたが、全く返事がありませんでした。それから2回ほど来てもらいましたが、全く反応がなかったので、それからは来てもらっていません。
昼間は居間に下りてきませんが、私が出かけると下りてくることがあるそうです。あと、息子が何か精神の病気なのかどうか心配しています。私は今すぐに息子が働けるとは考えていません。ですが、息子がその辺りをどう考えているのか知りたいのです。文にまとまりがなくすみません。よろしくお願いします。
充分なアドバイスには至らないかもしれませんが、気付いた点をいくつかお伝えします。
息子さんがY.Oさんに口を利かなくなったのは、息子さんが会社をお辞めになられた時「怒った」ことが理由のようです。父親としては、晴れて社会人になった息子さんの退職が唐突に映ったことによる自然な反応とも考えることができます。
対して、息子さんですが、退職には相応の理由があったと考えます。仕事内容か、同僚や上司との人間関係に悩んでいたのか。いずれにしても、退職は息子さんにとって不本意だったことは間違いありません。
その際、Y.Oさんに怒られたことで、「家族には、お父さんには理解して欲しかった。でも怒られた。だからもう口を利くのはやめよう」となったのではないでしょうか。
息子さんが、再びY.Oさんと向き合うようになるためには、いくつかの過程を踏まえる必要がありそうです。ひとつは、Y.Oさんがこれまでの息子さんのご苦労、今の息子さんのご苦労に対して、素直に労いの言葉がかけられるお気持ちであるかどうか。これからの息子さんの将来に対して、もちろん不安ではあるものの、どんな時も応援すると素直に伝えることができるかどうかです。
寄せてくださった文章の中に、「暴力をふるったりモノを壊すことはありません。逆に本当に部屋に居るのかどうか分からないくらいひっそりと暮らしています」とありました。息子さんがご家族との関わりを極力避けていらっしゃる様子があります。
そこで、まずは朝晩の挨拶をドア越しにて行う(ただし挨拶だけです。それ以上は言いません)ことをお勧めします。 又、Y.Oさんの外出が事前に分かる時は、分かった時点でメモ用紙に書いて息子さんの部屋の前に置いておいたり、居間のカレンダーに予定を書き込んでおくと良いでしょう。ご家族を好き嫌いに関わらず、ご両親が不在の時間は、息子さんにとって息抜きの時間となります。
ひきこもり状態に悩んでいる方は、毎日の生活が単調のように見えます。しかし、常に過去に対する後悔、自らのふがいなさ、将来への不安等、様々な苦悶を常に抱えて過ごしています。従って、ご家族や第三者が想像する以上に精神的な疲労を常に抱えています。
こころの病については、ひきこもり状態になることによって、二次的に抑うつ、対人恐怖、気分障害などが起こることもあります。しかしながら、健康な人でもひきこもり状態になれば抑うつになりますので、息子さんがこころの病と断定する(精神科診断がつく)のは早急かもしれません。今後は特に息子さんの食欲が落ちる、入浴を極度に避ける、同じ下着を3日続けて着ている、部屋が足の踏み場のないほど散らかっている等の様子がでてきたら、クリニック受診の手立ても検討すると良いでしょう。
息子さんが今何をどのように考えていらっしゃるかは、今のところ息子さんご自身しか分かりません。息子さんのお気持ちを知るには、何よりもご両親が息子さんを支えたい、応援しているという気持ちを伝えることから始めると良いでしょう。
もし、ご両親がこれらの気持ちに至っていないようでしたら、官民問わず、ひきこもり支援をてがける機関にて、そこの相談員に率直な気持ちを話してみてください。何かヒントが得られるはずです。
Y.Oさんと息子さんのご関係が、少しでも良くなりますこと、息子さんが晴れてひきこもりを抜け出す日が到来しますことを、心より祈念しております。
今思いますと、息子が会社を辞めた時、もう少し私が冷静に振る舞ったら良かったと後悔しています。
挨拶は以外でした。何をどうしたら良いかホントに分からなかったので、ひと筋の光明が得られた感じです。
ひきこもりを手がける機関ですが、私はこれまで保健所の他にもいくつか相談した場所があります。どの場所でも的を得た答えは得られませんでした。
もしよろしければ、これからも相談にのっていただけるでしょうか。ダム様に直接お会いして相談したり、息子に会ってもらうことはできますでしょうか。
不躾なことばかり申し上げて恐縮ですが、お考えをお聞かせくださいますと幸いです。よろしくお願いします。
ひきこもりに関連する支援は、有料となりますが承っております。ご家族との面談やご本人への訪問も可能です。
訪問につきましては、面談にて息子さんやご家族の状況をアセスメントさせていただいた後、支援計画を立てる過程にて検討できるかと存じます。
よろしければ、以降のお問い合わせは、onbazara@excite.co.jpまでお願いいたします。