カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

旅の終わりのカフェで

2011年05月19日 | Travels

ホテルをチェックアウトして、午後の便で帰ります。

しばらく時間が有ったので、ホテルのすぐ近くのローカルなカフェへ。

普段 soy milk 等飲まない私が、カフェでは必ずソイ・ラテ。

 

東京で暮らしていた頃は、仕事の打ち合わせ、友達との待ち合わせ等々、

日に何度もカフェ(コーヒーショップというべきか?)を利用したものでした。

今の私は全てが車社会。わざわざパーキングを探してコーヒーを買うのなら、

早く帰って、家で王様と。。。カフェは滅多に行かない場所です。


思うに、カフェ文化というのは『歩く人』がいる場所に栄える気がいたします。

世界中の街をくまなく尋ねた訳ではありませんが、

個人的にカフェの似合う街ナンバー1はベトナムはサイゴンです。

ベトナムコーヒーの濃い味わいが大好きというのもありますが、

容赦ない蒸し暑さ、バイクの騒音、排気ガスの匂い、屋台から漂う食べ物の匂い・・・・

それらが渾然一体となってお前は今ベトナムにいるんだからなっ!

・・・・・と、声なき声で迫ります。

長い間フランスの統治下にあり、フランス文化の影響を色濃く残していますから、

オープンカフェが当たり前。というよりオープンしか無いカフェもいっぱい。

澄んだきれいな空気というのもさわやかで結構ですが、私は人間を感じたい。

そんなわけで、サイゴンのカフェLOVEです。


いつもながら、話しがそれました。

今回尋ねた港町は、それはそれは寒いところでございました。

本当に一年中、毎日雨が降るのですよ。

一日一雨 >と目標を掲げているお天気の神様が居るのでしょう。

そんな街に、その名を知らぬ人無しの一大コーヒー帝国を築いたカフェの一号店があります。

私は入りませんでしたが、何時も長い行列ができているのだそうです。

コーヒーのお味は同じですが、店舗限定のマグカップが売っているとか。


この街に来る前は「なぜ、ここからだったのだろう?」

この小さなコーヒーショップが世界を手中に治めた訳が判りませんでした。

でも数日滞在してみて、少なくともカフェがこの街で暮らす人にとって、

病院や郵便局と同じ位、必要不可欠なものだと知りました。

港町はどこも急で細い坂道が多く、車の運転には不向きです。

それに伴い公の交通機関が機能的に整備されているので、人々は歩きます。

歩いておりますと海からの冷たい風がビルの谷間を吹き上げて来て、

震え上がる寒さに、雨まで降って来ようものなら、どこかに非難したくなります。

カフェです。

近くにあるカフェに飛び込んで、熱いコーヒーで体を温めていれば止んでしまう雨。

だからこの街には数百メートル毎にカフェが必要なのです。

そこで暮らす人々に必要とされている文化は絶対に廃れる事はありません。

カフェはこの街で暮らす人々のための傘なのです。



 

 

『文化を守る』

よく聞く言葉です。と同時に守るという事の意味を考えさせられる言葉でもあります。

どんなに素晴らしいものも、必要とされなくなれば消えて行くのです。

イベント等で一時的にその存在をアピールする事は可能でも、

本来文化とは人々と共に呼吸をし、人々と共に変化しながらその生命を維持して行くのです。

フランスからもたらされたエスプレッソ文化は、

暑い気候の中で濃厚なコンデンスミルクと出会い、

社会主義国ベトナムの気質に育まれ、今も人々と共に暮らしています。

シアトルの無数のコーヒーショップは有名無名問わず、

人々の傘として存在し続けています。


その土地で時間を過ごしてみると見えて来るものがあります。

守る事は、それを愛する事、必要とする事。

旅の終わりのカフェで、そんな事を考えました。


では

 



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