太古、オオカミと人間は、敵どうしだった。
同じ獲物を狙うライバルだったのだ。
しかし、いつの頃からか、オオカミの一部はイヌとなり、
人間に尽くすことになった。
なぜだろう。
オオカミは、群れを成す。
ところが、弱くて群れから離れてしまう個体もいる。
その一部が、人間にエサをもらうようになる。
それだけなら、なんということはない。
しかし、人間の知恵は凄かった。
弱いオオカミ同士を掛け合わせ、
子どものうちから、一番穏やかな奴を選ぶ。
他のオオカミの夫婦からも穏やかな子どもを選び、
掛け合わせる。
こうして30世代を経たころには、
かつてのオオカミは、従順なイヌになっている。
それじゃあ、イヌはあんまりかわいそうだ、と思われるかもしれない。
しかし、そうではないのだ。
野生の頃から、オオカミは、群れを組んで、獲物を狙う。
そのとき、共同して狩りをする。
こうして、仲間内で協力して、
目的を達成する喜びを味わう、という本能をもつようになる。
オオカミの末裔、イヌも、
その本能をもっていて、
共同して獲物をとることに喜びを感ずる。
目的を達成することは、うれしい。
人間も、ご主人であるとはいえ、
同じ目的で作業する仲間だ。
だから、
目的を達成することに、喜びを感ずるのだ。
こうして、人間とイヌは、蜜月関係を結ぶようになったのである。