ちょっとプチ残業
お客さんの所へ行って、用足し。
30分ほどの待ち時間…。
公民館の駐車場で立っていると
隣の家に白いワンコとお婆ちゃんがいた
しっぽをクルンとさせて
柱に繋がれて、ちょこちょこ歩いている
…
柴犬みたいな感じに見えるんだけど、雑種なのかな?
ちょっと犬には詳しくないから申し訳ない。
実を言うとこのワンコは以前にも接触しているのだ
この近所でお仕事があった時に
今日と同じように柱に繋がれていて
俺がそばを歩くたびに尻尾をフリフリしながらついて来て
『おい、おまえ。なにしてるの?おれとあそばないか。おい。おいったら。』
って言うオーラを出しながらちょこちょこ歩く。
全然、吠えないし…犬は苦手なんだけど
近くにしゃがんだら、俺の股の所に入って来て匂いを嗅いで
クルクル回ったり顔を覗き込んで来たり
『あいさつがわりに、あたまをなでろ。はやくしろ。まってるんだぞ。』
…ナデナデ。
って事があった。
今日はその家のお婆ちゃんがワンコと一緒にいたのだった。
ワンコが俺に気付いて、俺の方に向いて尻尾を振っている。
『お!いつかのおまえだな。おい。いつかのおまえだろ。こいよ。あそぼうぜ。』
…いやいやいや。俺の事はほっとけ。
『おい!おまえもおぼえてんだろ。おれだおれ。こいってば。あそぼうぜ。なでろなでろ。』
キレイに尻尾を丸くクルンとさせて俺を見ている。
…ですよね。挨拶ですよね。はい。
『こんばんは~お利口なワンちゃんですね。全然吠えないで。』
って言いながらお婆ちゃんに声をかけた
『えぇっ???』(耳遠い…声かけなきゃよかった
『全然吠えないワンちゃんで可愛いね!』
『んだ!でも、悪い人には吠えるんだコレ。分かるんだなぁ。』
…どうかそのまま騙され続けて吠えないでおくれよ。
ワンコの近くにしゃがんでみた
また、ササッと寄って来て俺の股の匂いを嗅いで
クルクル回って顔を見上げる
『やっぱりおまえだな。あのときのだな。おぼえてるぞ、このきんたまのにおい。なでろ。ほら。』
…
頭を撫でて、鼻の筋を撫でてあげて
耳の辺りをワシャワシャしてやって
背中を撫でて
『毛ぇ抜けるから、ごめんね。さっきもすんごく抜けたんだぁ』と婆さん。
もう遅いわババア。早く言ってくれよそういうのは。
そうじゃなくても苦手な犬を自分の急所の辺りでクルクルさせてるんだから。
『コレなぁ、悪い人には吠えるんだぁ』
『ふぅん…そうなんだぁ』
さっきも聞いた。うん。その情報、もういいや。
俺の匂いがいいのか、キンタマの辺りが落ち着くのか
何か分からない。
こんなにおっかなびっくり触ってるのに。
『お婆ちゃんも寒くなって来たから、あったかくしてね。』
…
なんて適当な事を言いながら、ワンコにもバイバイした
『またこいよ、おまえ。あそんでやるからな。』
尻尾を振りながら見送ってくれた…。
こんなにしっかり犬に触ったのは久しぶりな気がする。
毛が抜けるとか言ってたけど、暗くてよく見えない
両手をこすり合わせてパンパンとすると
街灯の明かりに照らされた毛の塊がフワフワと飛んで行った…
そっと手の匂いを嗅いでみた
犬の匂いがした。
猫は撫でても匂いがしないのに
どうして犬は匂いがあるんだろう。
とっても不思議だ。
…
その用足しを終えて
コンビニの駐車場へ移動した
そう言えばワンコを触っている時にLINEが届いてた
お返事をしなくちゃな
…
画面を見ながらお返事を書いていると
口の両側から何か液体が、つぅぅぅっと垂れた
よだれだった。
アレ?犬っぽくなっちゃった??
何か犬から、犬らしさを受け取ったのかもしれない。
…
犬が苦手な俺なのに
最近、何だか犬にまつわる出来事が多い
第二の職場でも犬を飼う事をすすめられて
しかも、ラブラドールレトリバーがいいとか犬種まで決められて
小さいワンコでも怖いのに、大きなワンコなんか無理だろ
ホント、俺に犬をすすめないでください
『いや、散歩を毎日するとか俺には無理だから絶対』
『でもあの「散歩に行こうよ~」って目で見られると、行っちゃうんだよなぁ』
…そういうものなのかぁ
自信ないなぁ俺。
…
…
あんなに石けんをつけて手をしっかり洗ったのに
まだ遠くにワンコの匂いがするような気がする
…アイツめ。